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8関係者聞き込み・クラブ藤のママ
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署に戻った佐川は、大石から借りた料理手帳のコピーに目を通していた。近藤は、クラブ藤を経営している杉本レミの取引先である銀行をみつけ出し、そこに照会をかけ預金残高などの確認を行っていた。そして、星野の言う通り、かなりのローンを抱えていて、その支払いの期限が迫っていることを知ることができた。
夕食を署近くにあるそば屋で取った後、佐川たちは夢銀座街にあるクラブ藤に行った。
受付に黒いタキシード風の服を着た男が立っていた。佐川が警察手帳を出すと、すぐにママの杉本レミがやってきた。
「警察の方ですか。こんなところでお話をするのは、他のお客さまにご迷惑をかけることになりますわ。こちらへどうぞ」
そう言って、ママは、一番暗い奥のボックス席に二人を連れて行った。
「今度、来てくださるときは、お客さんとしてきてくださいね。それで、今日はなにか?」
「マンガ家の川村雄介さんは、こちらのお店にもよく来ていたのでしょう?」
「ええ、ごひいきにしてもらっていました」
「すでにニュースになっておりますが、パーティで飲んだシャンパンで川村さんが亡くなったことは、もうご存知ですね」
ママは仕方なさそうにうなずく。
「あなたも、そのパーティに参加されていた」
「お調べになっているんでしょう」と言って、ママはうなずく。
「川村さんが亡くなる前に毒の入ったシャンパンを飲んでいます。それはウエイターがプレートにのせて運んできたグラス四つの中の一つだったのですが、他のグラスの一つをあなたは取りませんでしたか?」
「取ったかもしれないわね。でも、よく覚えていないわ。それがどうだというんですか? 間違って毒の入っていたグラスを取ったら私が飲んで死んでいたかもしれないのよ」
「実はですね。あなたは川村さんから多額のお金を借りていると、お話を聞いたんですが、それも五千万円ぐらいだとか」
「確かに、クラブの経営は苦しくなっているわよ。だから、川村さんからお金を借りていたの。でも借りたお金は返せばいいだけよ。そんなことで、川村さんを殺したりはしないわ」
怒りでママは色白の額に血管を浮き出させていた。
「そんなこと言った人は誰よ。わかったわ。星野さんでしょ。星野さんこそ、雑誌の読者投票で一位になれなかったものだから、川村さんを殺したいとまで言っていた人よ。それなのに、私の方を疑うの?」
ママがそう言っても、佐川も近藤もそうですねと言う顔をすることができないでいた。それがママには面白くなかったのだろう。
「そもそも、毒薬をどうやって手に入れるのよ。そんな方法を考えることも得意じゃないわ」
「じゃ、誰が手にいれたんですかね?」
「知らないわよ。こんなことは一人でできることじゃないわ」
「一人でやったことではない? それをあんたは知っている」
「えっ」と言う顔を、ママはした。余計なことをしゃべり過ぎたと思っているのだ。
確かに、単独犯ではできないかもしれないと、佐川も思い始めていた。
「ともかく、私は傍観者みたいなものよ」
「じゃ、あなたは、何を見守ってきたのかな?」
「ともかく、川村さんの奥さんとウエイターの石田さんができていることから、考えるべきだわ」
「えっ、本当ですか?」
それまで、黙って手帳に記録をし続けていた近藤が顔をあげた。
「奥さんとウエイターの石田とはできているのよ。でも、無理はないわ。川村はいつも家にいないで、仕事場ばかり。夜はこういう所で遊んでいたし。女としてさみしくなるというのも分からないわけじゃないわ。でも、これで一緒になれるわね」と、ママは勝ち誇ったように言っていた。
思わず、佐川と近藤は顔を見合わせた。
夕食を署近くにあるそば屋で取った後、佐川たちは夢銀座街にあるクラブ藤に行った。
受付に黒いタキシード風の服を着た男が立っていた。佐川が警察手帳を出すと、すぐにママの杉本レミがやってきた。
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そう言って、ママは、一番暗い奥のボックス席に二人を連れて行った。
「今度、来てくださるときは、お客さんとしてきてくださいね。それで、今日はなにか?」
「マンガ家の川村雄介さんは、こちらのお店にもよく来ていたのでしょう?」
「ええ、ごひいきにしてもらっていました」
「すでにニュースになっておりますが、パーティで飲んだシャンパンで川村さんが亡くなったことは、もうご存知ですね」
ママは仕方なさそうにうなずく。
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「お調べになっているんでしょう」と言って、ママはうなずく。
「川村さんが亡くなる前に毒の入ったシャンパンを飲んでいます。それはウエイターがプレートにのせて運んできたグラス四つの中の一つだったのですが、他のグラスの一つをあなたは取りませんでしたか?」
「取ったかもしれないわね。でも、よく覚えていないわ。それがどうだというんですか? 間違って毒の入っていたグラスを取ったら私が飲んで死んでいたかもしれないのよ」
「実はですね。あなたは川村さんから多額のお金を借りていると、お話を聞いたんですが、それも五千万円ぐらいだとか」
「確かに、クラブの経営は苦しくなっているわよ。だから、川村さんからお金を借りていたの。でも借りたお金は返せばいいだけよ。そんなことで、川村さんを殺したりはしないわ」
怒りでママは色白の額に血管を浮き出させていた。
「そんなこと言った人は誰よ。わかったわ。星野さんでしょ。星野さんこそ、雑誌の読者投票で一位になれなかったものだから、川村さんを殺したいとまで言っていた人よ。それなのに、私の方を疑うの?」
ママがそう言っても、佐川も近藤もそうですねと言う顔をすることができないでいた。それがママには面白くなかったのだろう。
「そもそも、毒薬をどうやって手に入れるのよ。そんな方法を考えることも得意じゃないわ」
「じゃ、誰が手にいれたんですかね?」
「知らないわよ。こんなことは一人でできることじゃないわ」
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確かに、単独犯ではできないかもしれないと、佐川も思い始めていた。
「ともかく、私は傍観者みたいなものよ」
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「ともかく、川村さんの奥さんとウエイターの石田さんができていることから、考えるべきだわ」
「えっ、本当ですか?」
それまで、黙って手帳に記録をし続けていた近藤が顔をあげた。
「奥さんとウエイターの石田とはできているのよ。でも、無理はないわ。川村はいつも家にいないで、仕事場ばかり。夜はこういう所で遊んでいたし。女としてさみしくなるというのも分からないわけじゃないわ。でも、これで一緒になれるわね」と、ママは勝ち誇ったように言っていた。
思わず、佐川と近藤は顔を見合わせた。
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