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9 関係者聞き込み・川村夫人
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次の日。
佐川は近藤に覆面パトカーを走らせ、川村雄介の家に向かわせた。
川村の家は南にある新興住宅街の中にあった。
建設費総額二億円の豪邸で高さニメートルの塀で囲まれていた。玄関チャイムを鳴らすと、インターホンから声が聞こえて来た。しわがれた年寄りの声だった。佐川が警察である旨を伝え、インターホンについているカメラに向かって警察手帳を掲げて見せた。
やがて、自動ドアが開き、中に入ると、玄関ホールに五十代だと思える女性が迎えに出てきた。おそらく、お手伝いさん、今はハウスキーパーと言った方がいいのだろう。その女性に案内をされて大きな部屋に案内をされた。
そこは、三十二畳はある居間だった。川村夫人は腰が埋まりそうなソファにすでに腰をおろしていた。二人が入って行くと、川村夫人から前のソファに腰をおろすように言われた。
「いろいろ捜査をしておりますが奥様からもお話を聞かせてもらいたいと思いやってまいりました」
「そろそろ、うちの人の葬式を考えなければなりません、でも、まだ遺体を返してもらっておりませんわ」と、川村夫人はモノローグのように言っていた。
「申し訳ありません。ご主人の遺体の返還は鑑識係に急ぐように話をしておきます。捜査の関係上、いくつかの質問をさせていただきます。パーティの日ですが、ご主人がお亡くなりになった時に石田さんが運んでいたプレートの上のグラスを奥様はおとりなりましたか?」
「あの時は、私も驚いてしまい、どうだったか覚えていないんです。もしかしたらグラスを取っていたかもしれませんわ」
「はっきりと覚えていないということですね」
川村夫人は軽くうなずいていた。
「パーティの前日、奥様は、午後三時頃ですが、レストラン大石に行かれていますね」
「はい」
「その時に、パーティに使うシャンパングラスを百個用意させておられる。なぜ、そんなことをされたのですか?」
「パーティに、最高のシャンパンのドンベリニョンを三本お持ちしたので、それに相応しいグラスを用意していただいただけですわ。もちろん、それに私は触れることはしておりませんし、次の日のパーティまでしっかり保管をしてもらうように石田さんにお頼みをしておきました」
たしかに、その説明は、佐川が、前に石田から聞いた話と矛盾をしないものだった。
「そうですか。奥さまがウエイターの石田さんと大変親しいという話を聞いたものですから、それについても刑事としては確かめなければならない」
「そうですね。私も家に閉じこもってばかりは、いられませんわ。飲みに行く先が、行きなれたレストラン大石になってしまいました。そこに行けば、ウエイターの石田さんが私の話をよく聞いてくれます。私の心の不安をいやしてくれる方ですわ」
「確かに、こんな大きな家では、お一人は寂しいのではないかと思いますが?」
「それは、もうなれました。それに昼間は家政婦の小島さんが来てくれますので、助かっていますわ」
「そうですか。ほっておかれた奥様は川村さんを憎くなることがあったのではないですか?」
「刑事さん方も、そろそろお気づきになったのではありませんか。あの人は、いろんな人に嫌われていました。私も同じような気持ちになって行くことは罪だったのでしょうか? いえ、誰かがこれを終わらせなければならなかった」
川村夫人は、寂しげな微笑を見せていた。
佐川は近藤に覆面パトカーを走らせ、川村雄介の家に向かわせた。
川村の家は南にある新興住宅街の中にあった。
建設費総額二億円の豪邸で高さニメートルの塀で囲まれていた。玄関チャイムを鳴らすと、インターホンから声が聞こえて来た。しわがれた年寄りの声だった。佐川が警察である旨を伝え、インターホンについているカメラに向かって警察手帳を掲げて見せた。
やがて、自動ドアが開き、中に入ると、玄関ホールに五十代だと思える女性が迎えに出てきた。おそらく、お手伝いさん、今はハウスキーパーと言った方がいいのだろう。その女性に案内をされて大きな部屋に案内をされた。
そこは、三十二畳はある居間だった。川村夫人は腰が埋まりそうなソファにすでに腰をおろしていた。二人が入って行くと、川村夫人から前のソファに腰をおろすように言われた。
「いろいろ捜査をしておりますが奥様からもお話を聞かせてもらいたいと思いやってまいりました」
「そろそろ、うちの人の葬式を考えなければなりません、でも、まだ遺体を返してもらっておりませんわ」と、川村夫人はモノローグのように言っていた。
「申し訳ありません。ご主人の遺体の返還は鑑識係に急ぐように話をしておきます。捜査の関係上、いくつかの質問をさせていただきます。パーティの日ですが、ご主人がお亡くなりになった時に石田さんが運んでいたプレートの上のグラスを奥様はおとりなりましたか?」
「あの時は、私も驚いてしまい、どうだったか覚えていないんです。もしかしたらグラスを取っていたかもしれませんわ」
「はっきりと覚えていないということですね」
川村夫人は軽くうなずいていた。
「パーティの前日、奥様は、午後三時頃ですが、レストラン大石に行かれていますね」
「はい」
「その時に、パーティに使うシャンパングラスを百個用意させておられる。なぜ、そんなことをされたのですか?」
「パーティに、最高のシャンパンのドンベリニョンを三本お持ちしたので、それに相応しいグラスを用意していただいただけですわ。もちろん、それに私は触れることはしておりませんし、次の日のパーティまでしっかり保管をしてもらうように石田さんにお頼みをしておきました」
たしかに、その説明は、佐川が、前に石田から聞いた話と矛盾をしないものだった。
「そうですか。奥さまがウエイターの石田さんと大変親しいという話を聞いたものですから、それについても刑事としては確かめなければならない」
「そうですね。私も家に閉じこもってばかりは、いられませんわ。飲みに行く先が、行きなれたレストラン大石になってしまいました。そこに行けば、ウエイターの石田さんが私の話をよく聞いてくれます。私の心の不安をいやしてくれる方ですわ」
「確かに、こんな大きな家では、お一人は寂しいのではないかと思いますが?」
「それは、もうなれました。それに昼間は家政婦の小島さんが来てくれますので、助かっていますわ」
「そうですか。ほっておかれた奥様は川村さんを憎くなることがあったのではないですか?」
「刑事さん方も、そろそろお気づきになったのではありませんか。あの人は、いろんな人に嫌われていました。私も同じような気持ちになって行くことは罪だったのでしょうか? いえ、誰かがこれを終わらせなければならなかった」
川村夫人は、寂しげな微笑を見せていた。
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