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第十七話 暴徒
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モリスが荷馬車を走らせていると、まるで砂糖に集まるアリのように人が集まり出してきた。
彼らは、子供らと共に荷物がのっているのを見つけると荷馬車の前に立ちはだかった。人をはねてまで馬を走らせるわけにはいかない。馬車が止まると物盗りと化した人たちは荷馬車の周りをとり囲んできた。モリスは脇に置いていた剣を掴むと御者席で立ちあがっていた。だが一人では子供たち皆を守ることができないかもしれない。そんな不安に感じ出したときに、後ろから馬の足音が聞こえてきた。
「あんたら、何をするきだ!」
声がした方にモリスは顔をむけた。そこに馬にのったライタルがいたのだ。
「ラルだ。来てくれたんだ」
「本当にラルだ。生きていたんだ」
年長の子供たちはライタルが孤児院にいた時に呼ばれていた名前を口にしていた。
物盗りの一人が声をあげた。
「じゃまをするつもりか。俺たちは生きていくために必要な物が欲しいだけなんだ。余っている物を少し分けてもらって何が悪い」
すると、ライタルは金髪の髪を風でゆらしながら笑った。
「ここにある物は子供らのための物だ。余っている物などない!」
ライタルは鞘のついたままの剣を振って、馬車に近よろうとした者たちを次から次へとはねとばしていた。剣士のライタルには、勝てないと思ったのか、物盗りと化していた人たちは「ちくしょう」、「おぼえていやがれ」と言って、その場から離れて行った。
「ライタル様、ありがとうございます。しかし、どうして?」
「出かける前に、あなたが孤児院に行くと聞いていた。巨大熊を退治する仕事が終ったので、すぐに飛んできたんですよ。パーティ仲間たちは、フターク国からガンダ国へむかう街道で待っていますよ。そこまでがんばってください」
「本当ですか。これで安心をしてガンダ国まで子供連れて連れていけます」と、モリスは御者席にすわりなおしムチを振っていた。
剣を腰にさしなおしたライタルは馬を走らせ先導を始めた。
寄ってこようとした人たちも、馬にのったライタルがやってくると左右に散って道を開けていた。そのおかげで、モリスは楽に荷馬車を走らせることができた。
しばらくして大きな建物が見えてきた。ヒックス公爵の邸宅だ。
その建物には多くの人たちが集まっていた。彼らの目は吊り上がり、血走っていた。新たに生まれた暴徒たちだ。そんな人たちを弾き飛ばす勢いで一台の馬車が門の間から飛び出してきたのだ。その馬車に乗っていたのは、ヒックス公爵と娘のガーナルだった。
側を通りかかったモリスは馬車にいるガーナルと目をあわせることになった。思わず、モリスは、顔をこわばらせていたが、ガーナルは気づきもしない。だが、無理もない。ガーナルは顔を変えたモリスとこれまで一度も会ったことがなかったからだ。ガーナルは顔を青ざめ、モリスの背後で群がっている暴徒たちをみつめていた。
ヒックス公爵の邸宅が襲われたのは、小麦粉を倉庫に買い占めているのを人々に知られてしまったからだ。
馬車を必死に走らせたガーナルたちは暴徒から逃げ出すことはできた。だが、狭い山道を走らせていたとき、馬車は崖から谷底に落ちてしまったのだ。横倒しになった馬車の中で、そこから抜け出せなくなったヒックス公爵とガーナルは、やがて息絶えて死んでいた。
フタ―ク国から連れて来た子供たちは、宿屋『やすらぎ』のオーナーに頼んで診療所の側に作った病院に置いてもらった。だが、いつまでもそこに置いておくことはできなかった。オーナーが、孤児である子供たちを置くことは何の儲けにもならないと言い出したからだ。
そこで、すぐにアンナはエルザに会いに行き、孤児院を作らせて下さいと申しでた。戦争の悲惨さを知っているエルザは笑いながら、宮殿の周りにある空き地の一部を使うようにと言ってくれたのだ。そこで、アンナは。街の大工に手伝ってもらい、そくざに孤児院を建てていた。
その間、フタ―ク国においては、暴動はどんどんと大きくなって、ふたたび暴徒たちは城の中にまで入り込んでいった。そして、彼らはフタ―ク国の王夫婦とリカードを捕まえ庭園の木に吊るしてしまったのだ。
そのことを知った近隣諸国の王たちは、さすがにこのままでまずいと思ったのだろう。すぐに兵士たちを派遣し、フタ―ク国の暴徒を追い払い、沈静化をはかるとともに宮殿の大広間に集まり、第二王子のカントを新たな王にしたのだった。
彼らは、子供らと共に荷物がのっているのを見つけると荷馬車の前に立ちはだかった。人をはねてまで馬を走らせるわけにはいかない。馬車が止まると物盗りと化した人たちは荷馬車の周りをとり囲んできた。モリスは脇に置いていた剣を掴むと御者席で立ちあがっていた。だが一人では子供たち皆を守ることができないかもしれない。そんな不安に感じ出したときに、後ろから馬の足音が聞こえてきた。
「あんたら、何をするきだ!」
声がした方にモリスは顔をむけた。そこに馬にのったライタルがいたのだ。
「ラルだ。来てくれたんだ」
「本当にラルだ。生きていたんだ」
年長の子供たちはライタルが孤児院にいた時に呼ばれていた名前を口にしていた。
物盗りの一人が声をあげた。
「じゃまをするつもりか。俺たちは生きていくために必要な物が欲しいだけなんだ。余っている物を少し分けてもらって何が悪い」
すると、ライタルは金髪の髪を風でゆらしながら笑った。
「ここにある物は子供らのための物だ。余っている物などない!」
ライタルは鞘のついたままの剣を振って、馬車に近よろうとした者たちを次から次へとはねとばしていた。剣士のライタルには、勝てないと思ったのか、物盗りと化していた人たちは「ちくしょう」、「おぼえていやがれ」と言って、その場から離れて行った。
「ライタル様、ありがとうございます。しかし、どうして?」
「出かける前に、あなたが孤児院に行くと聞いていた。巨大熊を退治する仕事が終ったので、すぐに飛んできたんですよ。パーティ仲間たちは、フターク国からガンダ国へむかう街道で待っていますよ。そこまでがんばってください」
「本当ですか。これで安心をしてガンダ国まで子供連れて連れていけます」と、モリスは御者席にすわりなおしムチを振っていた。
剣を腰にさしなおしたライタルは馬を走らせ先導を始めた。
寄ってこようとした人たちも、馬にのったライタルがやってくると左右に散って道を開けていた。そのおかげで、モリスは楽に荷馬車を走らせることができた。
しばらくして大きな建物が見えてきた。ヒックス公爵の邸宅だ。
その建物には多くの人たちが集まっていた。彼らの目は吊り上がり、血走っていた。新たに生まれた暴徒たちだ。そんな人たちを弾き飛ばす勢いで一台の馬車が門の間から飛び出してきたのだ。その馬車に乗っていたのは、ヒックス公爵と娘のガーナルだった。
側を通りかかったモリスは馬車にいるガーナルと目をあわせることになった。思わず、モリスは、顔をこわばらせていたが、ガーナルは気づきもしない。だが、無理もない。ガーナルは顔を変えたモリスとこれまで一度も会ったことがなかったからだ。ガーナルは顔を青ざめ、モリスの背後で群がっている暴徒たちをみつめていた。
ヒックス公爵の邸宅が襲われたのは、小麦粉を倉庫に買い占めているのを人々に知られてしまったからだ。
馬車を必死に走らせたガーナルたちは暴徒から逃げ出すことはできた。だが、狭い山道を走らせていたとき、馬車は崖から谷底に落ちてしまったのだ。横倒しになった馬車の中で、そこから抜け出せなくなったヒックス公爵とガーナルは、やがて息絶えて死んでいた。
フタ―ク国から連れて来た子供たちは、宿屋『やすらぎ』のオーナーに頼んで診療所の側に作った病院に置いてもらった。だが、いつまでもそこに置いておくことはできなかった。オーナーが、孤児である子供たちを置くことは何の儲けにもならないと言い出したからだ。
そこで、すぐにアンナはエルザに会いに行き、孤児院を作らせて下さいと申しでた。戦争の悲惨さを知っているエルザは笑いながら、宮殿の周りにある空き地の一部を使うようにと言ってくれたのだ。そこで、アンナは。街の大工に手伝ってもらい、そくざに孤児院を建てていた。
その間、フタ―ク国においては、暴動はどんどんと大きくなって、ふたたび暴徒たちは城の中にまで入り込んでいった。そして、彼らはフタ―ク国の王夫婦とリカードを捕まえ庭園の木に吊るしてしまったのだ。
そのことを知った近隣諸国の王たちは、さすがにこのままでまずいと思ったのだろう。すぐに兵士たちを派遣し、フタ―ク国の暴徒を追い払い、沈静化をはかるとともに宮殿の大広間に集まり、第二王子のカントを新たな王にしたのだった。
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