2 / 27
2日常
しおりを挟む
翌日、父は国王に私が嫁ぐことに同意をしたことの報告に行った。
私は、どんなことがあっても普段の生活を変えることはできなかった。いつものように、祖母の治療所に行っていた。
治療所は下町にあって、生活に困っている人たちでも来られるように、祖母は低価な治療費で運営を行っていたのだ。そのために治療所の隣にある庭で薬草を育て、それから作った薬を使っていた。
祖母の意図をくんで、私は治療所が始まる前に庭に行って薬草の周りに生えた雑草をとり雑草に水をあたえた。その間、祖母は治療所の出入口の戸を開けに行く。すでに、列をなして病気を診てもらい人たちが並んでいるからだ。戸を開けると、その人たちは、待合室になだれ込んできた。
薬草の世話を終えた私は、治療所に入るとすぐに受付に立つ。祖母が診る患者の順番を決めて診療室に案内をするのだった。
大怪我をした人がいた場合は、診療室に入って、祖母の手伝いをして患者を押さえたり包帯をまいたりもしていた。
どんなに忙しくても、寺院から昼を知らせる鐘の音を聞くと、祖母も私も食事はしっかりと取ることにしている。それは午後も働くためのエネルギーが必要だからだ。
食後、今日も私はつかの間の休みをとって庭を前にした長椅子にすわっていた。
すると、ジーナがやってきて私の隣に座ったのだ。
ジーナは、私と同じ子爵の父を持つ娘だ。似た境遇のためか、友達と思ってつきあってきていた。
昼休みを狙ってきたのだろう。
「聞いたわよ。カルゾ国の王の所に嫁ぐんですってね」
「ええ、国王からの申し出であれば、いたしかたないわ」
「でも、あなたがそこに行けば、あなたのお父様は侯爵に取り立てられるそうじゃない。うまいことやったものね」
「ぜんぜんうまいことじゃないわ。やもうえずの話よ」
「そうよね。でも、嫁ぐ先の王はオオカミ男なんでしょう? 遠くにあるイングラという国でたくさんの女の人がオオカミ男に食い殺されたそうよ。本当に怖いわね。あなたは心配じゃなかったの?」
「ジーナ、何が言いたいのよ」
私はいらだちを覚え始めた。
「ただ、ナターシャ、あなたが可哀そうに思っているのよ。お父様が公爵になられるならば、これからの生活が楽になるわ。ナターシャは本当に親孝行な娘ね」
さすがに、そんないい方をされて私は怒り出していた。すると、ジーナは私の顔色を見て、別のことを言い出したのだ。
「でも、不思議だと思わなかったの。カルゾ国の王の嫁にする話があなたの所に行ったことを?」
「えっ、言われてみれば?」
「本当はね。公爵のガンジの娘の所にこの話は行ったのよ。でも、ガンジ公爵は口がうまいでしょう。国王を言い含めてしまったらしいわ。それも、あなたは普段化粧をしていないから、きれいに見えないけど、化粧をすれば、かなり美人だとも言っていたそうよ」
私はもう彼女と話をし続けるきはなくなっていた。
「そろそろ、治療所に戻るわ」と言って私は立ち上がった。ジーナはまだ言い足りなさそうに、歩き出した私の背を見ていた。
私は、どんなことがあっても普段の生活を変えることはできなかった。いつものように、祖母の治療所に行っていた。
治療所は下町にあって、生活に困っている人たちでも来られるように、祖母は低価な治療費で運営を行っていたのだ。そのために治療所の隣にある庭で薬草を育て、それから作った薬を使っていた。
祖母の意図をくんで、私は治療所が始まる前に庭に行って薬草の周りに生えた雑草をとり雑草に水をあたえた。その間、祖母は治療所の出入口の戸を開けに行く。すでに、列をなして病気を診てもらい人たちが並んでいるからだ。戸を開けると、その人たちは、待合室になだれ込んできた。
薬草の世話を終えた私は、治療所に入るとすぐに受付に立つ。祖母が診る患者の順番を決めて診療室に案内をするのだった。
大怪我をした人がいた場合は、診療室に入って、祖母の手伝いをして患者を押さえたり包帯をまいたりもしていた。
どんなに忙しくても、寺院から昼を知らせる鐘の音を聞くと、祖母も私も食事はしっかりと取ることにしている。それは午後も働くためのエネルギーが必要だからだ。
食後、今日も私はつかの間の休みをとって庭を前にした長椅子にすわっていた。
すると、ジーナがやってきて私の隣に座ったのだ。
ジーナは、私と同じ子爵の父を持つ娘だ。似た境遇のためか、友達と思ってつきあってきていた。
昼休みを狙ってきたのだろう。
「聞いたわよ。カルゾ国の王の所に嫁ぐんですってね」
「ええ、国王からの申し出であれば、いたしかたないわ」
「でも、あなたがそこに行けば、あなたのお父様は侯爵に取り立てられるそうじゃない。うまいことやったものね」
「ぜんぜんうまいことじゃないわ。やもうえずの話よ」
「そうよね。でも、嫁ぐ先の王はオオカミ男なんでしょう? 遠くにあるイングラという国でたくさんの女の人がオオカミ男に食い殺されたそうよ。本当に怖いわね。あなたは心配じゃなかったの?」
「ジーナ、何が言いたいのよ」
私はいらだちを覚え始めた。
「ただ、ナターシャ、あなたが可哀そうに思っているのよ。お父様が公爵になられるならば、これからの生活が楽になるわ。ナターシャは本当に親孝行な娘ね」
さすがに、そんないい方をされて私は怒り出していた。すると、ジーナは私の顔色を見て、別のことを言い出したのだ。
「でも、不思議だと思わなかったの。カルゾ国の王の嫁にする話があなたの所に行ったことを?」
「えっ、言われてみれば?」
「本当はね。公爵のガンジの娘の所にこの話は行ったのよ。でも、ガンジ公爵は口がうまいでしょう。国王を言い含めてしまったらしいわ。それも、あなたは普段化粧をしていないから、きれいに見えないけど、化粧をすれば、かなり美人だとも言っていたそうよ」
私はもう彼女と話をし続けるきはなくなっていた。
「そろそろ、治療所に戻るわ」と言って私は立ち上がった。ジーナはまだ言い足りなさそうに、歩き出した私の背を見ていた。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さくら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる