呪いで人狼(オオカミ男)になった王の所に嫁いで行くことになった件

矢野 零時

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2日常

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 翌日、父は国王に私が嫁ぐことに同意をしたことの報告に行った。
 私は、どんなことがあっても普段の生活を変えることはできなかった。いつものように、祖母の治療所に行っていた。
 治療所は下町にあって、生活に困っている人たちでも来られるように、祖母は低価な治療費で運営を行っていたのだ。そのために治療所の隣にある庭で薬草を育て、それから作った薬を使っていた。
 祖母の意図をくんで、私は治療所が始まる前に庭に行って薬草の周りに生えた雑草をとり雑草に水をあたえた。その間、祖母は治療所の出入口の戸を開けに行く。すでに、列をなして病気を診てもらい人たちが並んでいるからだ。戸を開けると、その人たちは、待合室になだれ込んできた。
 薬草の世話を終えた私は、治療所に入るとすぐに受付に立つ。祖母が診る患者の順番を決めて診療室に案内をするのだった。
 大怪我をした人がいた場合は、診療室に入って、祖母の手伝いをして患者を押さえたり包帯をまいたりもしていた。
 どんなに忙しくても、寺院から昼を知らせる鐘の音を聞くと、祖母も私も食事はしっかりと取ることにしている。それは午後も働くためのエネルギーが必要だからだ。

 食後、今日も私はつかの間の休みをとって庭を前にした長椅子にすわっていた。
 すると、ジーナがやってきて私の隣に座ったのだ。
 ジーナは、私と同じ子爵の父を持つ娘だ。似た境遇のためか、友達と思ってつきあってきていた。
 昼休みを狙ってきたのだろう。
「聞いたわよ。カルゾ国の王の所に嫁ぐんですってね」
「ええ、国王からの申し出であれば、いたしかたないわ」
「でも、あなたがそこに行けば、あなたのお父様は侯爵に取り立てられるそうじゃない。うまいことやったものね」
「ぜんぜんうまいことじゃないわ。やもうえずの話よ」
「そうよね。でも、嫁ぐ先の王はオオカミ男なんでしょう? 遠くにあるイングラという国でたくさんの女の人がオオカミ男に食い殺されたそうよ。本当に怖いわね。あなたは心配じゃなかったの?」
「ジーナ、何が言いたいのよ」
 私はいらだちを覚え始めた。
「ただ、ナターシャ、あなたが可哀そうに思っているのよ。お父様が公爵になられるならば、これからの生活が楽になるわ。ナターシャは本当に親孝行な娘ね」
 さすがに、そんないい方をされて私は怒り出していた。すると、ジーナは私の顔色を見て、別のことを言い出したのだ。
「でも、不思議だと思わなかったの。カルゾ国の王の嫁にする話があなたの所に行ったことを?」
「えっ、言われてみれば?」
「本当はね。公爵のガンジの娘の所にこの話は行ったのよ。でも、ガンジ公爵は口がうまいでしょう。国王を言い含めてしまったらしいわ。それも、あなたは普段化粧をしていないから、きれいに見えないけど、化粧をすれば、かなり美人だとも言っていたそうよ」
 私はもう彼女と話をし続けるきはなくなっていた。
「そろそろ、治療所に戻るわ」と言って私は立ち上がった。ジーナはまだ言い足りなさそうに、歩き出した私の背を見ていた。

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