愛のライオン・ポポ

矢野 零時

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3とつぜん

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 その日の朝がたは青空だったのです。ですから、いつものような一日がはじまるものと、ポポもお母さんライオンも、そう思っていまいした。
 でも、空の真ん中にある小さな雲がどんどんと大きくなりだし、やがて入道雲になってしまいました。
 その雲はどんどんと動物園の方に流れてきます。そして、動物園の上は灰色の雲に覆われ出したのです。
 やがて、雷が鳴りだしました。
「ポポ、ライオン館に入っていましょう」
 お母さんライオンの言葉に、ポポもライオン館の方に戻りかけた時でした。眼がくらむような光は走りました。
 バーシン、バーシン
 激しい音が大地をゆさぶりました。お母さんライオンはすぐにポポの傍にかけつけようとしました。
 ライオン広場のそばにある髙いポプラの木の上に雷が落ちたのです。ポプラは悲鳴のような音をたてて倒れてゆきました。お母さんの方に木は向かっていったのです。
「お母さん、あぶない」とポポはさけび、お母さんライオンの体を押していました。そのおかげで、お母さんライオンもポポも、けがをすることはありませんでした。
 ポプラの大きな木は、柵をこわし、ライオン広場の上に橋のようにかかってしまいました。
 この橋を渡れば、ライオン広場からでていける。それに気がついたポポはお母さんライオンの方を見ました。
「行ってみたいのでしょう?」
 そう言ったお母さんライオンは微笑んでいました。ポポは大きくうなずきます。そう、お父さんライオンにもう一度あいたい。お父さんライオンが行った所に行ってみたい。いえ、まだ知らない世界を知ってみたくなったのです。
「男の子には、旅立ちが必要かもしれないね」
 お母さんは自分自身をなぐさめるために言っているようでした。
 ポポは、大きくうなずいてからポプラの大木でできた橋の上を落ちないようにわたりました。
 ポポがライオン広場の外にでると、とたんに雨が降り出してきました。
「ポポ、はやく雨の当たらない所にいきなさい」と、お母さんライオンが大声をかけてくれました。ポポがうなずきは走りだすと、「ポポ、げんきでね」とキリンも声をかけてくれたのです。
 ポポは動物園の北にある森に向かって全速力で走り出しました。















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