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天空魔人グール
6 行方不明
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お父さんが帰ってくるのは、いつも遅い時間ですので、カオルの家の夕ご飯は午後七時を少し過ぎた頃です。ですから、今日も遅い時間の夕食を食べ始めていました。
玄関のチャイムが鳴りました。
「誰かしら?」と言ってお母さんがテーブル席から立って玄関に行きました。
「すいません。うちの珠代、うかがっていませんか?」
その声は、珠代のお母さんです。すぐにカオルは、ご飯を食べるのをやめて玄関に行きました。
「いえ珠代ちゃんは来ていませんよ」とお母さんが言うと、珠代のお母さんは暗い顔をしていました。
玄関にカオルが来たことにお母さんは気がつきました。
「カオル、珠代ちゃんの家から帰るとき、珠代ちゃんはどうしていたの?」
「私と知世が帰るとき、珠代ちゃんは、わざわざ送ってくれたんです。別れた場所は二本松のある三つ股。珠代ちゃんは、そこで手をふってくれた。だから、その後は珠代ちゃんも自分の家に帰ったと思っていたんですけど」
「そうですか。私も二本松には行ってみたんですが、そこに珠代はいなかった。この後、知世ちゃんの家に行ってみるつもりです。知世ちゃんなら、何か知っているかもしれない」と言った珠代のお母さんは、目を落としました。
少し遅れて玄関にやってきたカオルのお父さんは「奥さん、知世ちゃんの家まで車がありますのでお送りしますよ。それに私たちにも捜させてください。捜す場所はいろいろありますし、もしかしたら、おわん森に迷い込んだのかもしれない」と言いました。
おわん森は畑のまん中に、おわんを伏せたように木々が固まっている所で、そこへも小道がついていました。
「そうですね。お願いします」と言って、珠代のお母さんは頭を下げました。
「それでは、みんなで手分けして捜しましょう!」
お母さんとカオルがお父さんに向かってうなずくと、お父さんはすぐに車庫に行って車を出して玄関口の前でとめてくれました。
「どうぞ。のってください」
お母さんは車の助手席にすわり、後部席にはカオルと珠代のお母さんがのりました。
車は走り出し、畑の中におわん型の森が見え出すと車をとめてもらい、お母さんとカオルが車からおりました。
その後、お父さんは珠代のお母さんを車にのせて知世の家に向かって行きました。
車からおりたカオルは空を見上げました。空が明るかったからです。半月が出ていたおかげで、歩いたり周りに何があるかぐらいは見ることができました。
「お母さん、森の中に入って見ないとだめだよね」とカオルが言うと、お母さんはうなずき、二人は森の中に入って行きました。
「珠代ちゃん、珠代ちゃん」
お母さんは口に両手をかざして大声をあげました。カオルも真似をして珠代の名前を呼びました。森の中を一周したのですが、残念ながら、珠代をみつけることはできませんでした。
木と木の間から漏れる月の光に誘われ、カオルが森の真ん中に行ってみたときでした。そこに草もなく丸く少しへこんだ所があったのです。その大きさはマンホールくらいはありました。
カオルがへこみの中に立って周りを見廻すと草地に白く光る物が見えたのです。
カオルが近づいて見ると、それは珠代の靴でした。
「お母さん、ちょっと来て!」
「カオル、どうかしたの?大声をあげて」
「お母さん、あれ、珠代ちゃんの靴だわ」
「ほんとうなの?」
お母さんは、しばらくの間、白い靴を見つめ続けていました。白い靴は月の光をうけて、シンデレラのガラスの靴のように光っています。
カオルが屈んで靴にを取ろうとすると、お母さんはすばやくカオルの手をつかんでとめました。
「指紋をつけてはだめよ。珠代ちゃんが誘拐をされたのならば、靴に犯人の指紋がついているはずでしょう」
お母さんは推理小説が好きで、よく読んでいましたので、こういう場合にはどうすべきか詳しく知っていたのです。
すぐに、お母さんが携帯で珠代のお母さんに連絡をしていました。
その後、珠代のお母さんが警察に連絡をしたからでしょう。パトカーのサイレンの音が聞こえ出しました。
やがてお母さんの携帯がなり「いま、どこにいるんですか?」という警察官の声がしたので、お母さんがここへの道の説明をしてあげました。
しばらくして、制服をきた警官と灰色のコートを着た男の人がやってきました。
灰色のコートを着た人は刑事でしたので、カオルはいろいろ聞かれ、落ちていた靴を珠代が履いていたことも話しました。
三つ股からおわん森まで1キロはあります。
珠代がどうして歩いてこんな所に来たのか、カオルから話を聞いた刑事は首を傾げていました。
やがて、珠代のお母さんは珠代のお父さんが運転する車にのってやってきました。珠代のお父さんは、商店街で行われていた集まりに出ていたのでした。
また、知世と知世のお母さんはカオルのお父さんが運転する車でやってきました。知世のお母さんは居酒屋の仕事を休ませてもらい、知世といっしょに珠代を捜してくれていたのです。
珠代のお母さんも白い靴を見て、珠代が履いていた物だと言ってくれました。
その後、警察の人は手袋をはめた手で白い靴を拾い上げ、ビニール袋に入れて持って行きました。カオルのお母さんの言う通り靴についている指紋を取って調べるそうでした。
玄関のチャイムが鳴りました。
「誰かしら?」と言ってお母さんがテーブル席から立って玄関に行きました。
「すいません。うちの珠代、うかがっていませんか?」
その声は、珠代のお母さんです。すぐにカオルは、ご飯を食べるのをやめて玄関に行きました。
「いえ珠代ちゃんは来ていませんよ」とお母さんが言うと、珠代のお母さんは暗い顔をしていました。
玄関にカオルが来たことにお母さんは気がつきました。
「カオル、珠代ちゃんの家から帰るとき、珠代ちゃんはどうしていたの?」
「私と知世が帰るとき、珠代ちゃんは、わざわざ送ってくれたんです。別れた場所は二本松のある三つ股。珠代ちゃんは、そこで手をふってくれた。だから、その後は珠代ちゃんも自分の家に帰ったと思っていたんですけど」
「そうですか。私も二本松には行ってみたんですが、そこに珠代はいなかった。この後、知世ちゃんの家に行ってみるつもりです。知世ちゃんなら、何か知っているかもしれない」と言った珠代のお母さんは、目を落としました。
少し遅れて玄関にやってきたカオルのお父さんは「奥さん、知世ちゃんの家まで車がありますのでお送りしますよ。それに私たちにも捜させてください。捜す場所はいろいろありますし、もしかしたら、おわん森に迷い込んだのかもしれない」と言いました。
おわん森は畑のまん中に、おわんを伏せたように木々が固まっている所で、そこへも小道がついていました。
「そうですね。お願いします」と言って、珠代のお母さんは頭を下げました。
「それでは、みんなで手分けして捜しましょう!」
お母さんとカオルがお父さんに向かってうなずくと、お父さんはすぐに車庫に行って車を出して玄関口の前でとめてくれました。
「どうぞ。のってください」
お母さんは車の助手席にすわり、後部席にはカオルと珠代のお母さんがのりました。
車は走り出し、畑の中におわん型の森が見え出すと車をとめてもらい、お母さんとカオルが車からおりました。
その後、お父さんは珠代のお母さんを車にのせて知世の家に向かって行きました。
車からおりたカオルは空を見上げました。空が明るかったからです。半月が出ていたおかげで、歩いたり周りに何があるかぐらいは見ることができました。
「お母さん、森の中に入って見ないとだめだよね」とカオルが言うと、お母さんはうなずき、二人は森の中に入って行きました。
「珠代ちゃん、珠代ちゃん」
お母さんは口に両手をかざして大声をあげました。カオルも真似をして珠代の名前を呼びました。森の中を一周したのですが、残念ながら、珠代をみつけることはできませんでした。
木と木の間から漏れる月の光に誘われ、カオルが森の真ん中に行ってみたときでした。そこに草もなく丸く少しへこんだ所があったのです。その大きさはマンホールくらいはありました。
カオルがへこみの中に立って周りを見廻すと草地に白く光る物が見えたのです。
カオルが近づいて見ると、それは珠代の靴でした。
「お母さん、ちょっと来て!」
「カオル、どうかしたの?大声をあげて」
「お母さん、あれ、珠代ちゃんの靴だわ」
「ほんとうなの?」
お母さんは、しばらくの間、白い靴を見つめ続けていました。白い靴は月の光をうけて、シンデレラのガラスの靴のように光っています。
カオルが屈んで靴にを取ろうとすると、お母さんはすばやくカオルの手をつかんでとめました。
「指紋をつけてはだめよ。珠代ちゃんが誘拐をされたのならば、靴に犯人の指紋がついているはずでしょう」
お母さんは推理小説が好きで、よく読んでいましたので、こういう場合にはどうすべきか詳しく知っていたのです。
すぐに、お母さんが携帯で珠代のお母さんに連絡をしていました。
その後、珠代のお母さんが警察に連絡をしたからでしょう。パトカーのサイレンの音が聞こえ出しました。
やがてお母さんの携帯がなり「いま、どこにいるんですか?」という警察官の声がしたので、お母さんがここへの道の説明をしてあげました。
しばらくして、制服をきた警官と灰色のコートを着た男の人がやってきました。
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やがて、珠代のお母さんは珠代のお父さんが運転する車にのってやってきました。珠代のお父さんは、商店街で行われていた集まりに出ていたのでした。
また、知世と知世のお母さんはカオルのお父さんが運転する車でやってきました。知世のお母さんは居酒屋の仕事を休ませてもらい、知世といっしょに珠代を捜してくれていたのです。
珠代のお母さんも白い靴を見て、珠代が履いていた物だと言ってくれました。
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