55 / 57
竜人をさがして!
11表彰式
しおりを挟む
とうとう反乱軍のリーダーは逮捕されて、乙姫様は竜宮城からいつでも自由に出て行けるようになりました。
乙姫様は自分を救ってくれたカオルたちに感謝状を贈りたいと言いだしたのです。そこで乙姫様から指示をうけたピノは、すぐに乙姫様に会って欲しいとカオルと玲子に言ってきたのです。ピノには色々助けてもらっているので、二人はその願いを聞いてあげることにしました。
竜宮城は大きな建物です。岩を積んで作った門をくぐり、宮殿に行くためには迷路のような通路をあちらこちらと通る必要がありました。また、宮殿についても、たくさんの部屋があり、ピノが案内をしてくれなければ、大広間にも行くことができなかったのです。
他の竜人たちと一緒に待っていると、やがて乙姫様がやってきて、王妃の椅子にすわりました。
乙姫様はさすがに優雅で、気品に満ちたドレスを着ていました。
「そちが、加藤カオルか? そして、隣にいるのが、高島玲子か。この度の働き、まことに感謝にたえない」
カオルと玲子は中腰になって頭をさげました。
「欲しい物があれば、与えたいと思うが、何かありますかな?」
カオルは玲子の方に顔を向けると、玲子は軽く首を左右にふっていました。そこで、カオルは「特に何もございませんので、けっこうでございます」と、答えました。
「さようか、ならば、玉手箱をお渡しすることにいたそう」
それを聞いたカオルは顔色を変えていました。
「乙姫様、昔のことですが、龍宮城に浦島太郎と言う者が来て、その者が玉手箱をもらって地元に帰り開けたら、おじいさんになって、すぐにお亡くなりになったと聞いています。ですから、玉手箱はもらわないで、地元、日本のハルカ村に戻りとう存じます。その代わり、隣におります玲子の兄が病気にかかっておりますので、それに効く薬を持たせていただきたいと思っております」
「薬を持って行くことは当然のことじゃ。だが、そちの誤解を解いておきたいと思う」
「誤解と申しますと?」
「私は浦島太郎様を愛しておりました。その太郎様に年老いてしまうだけの物を渡すはずがありません」
「じゃ。玉手箱はなんだったのですか?」
「あれは、あなたに分かるように言うと、時間変更調節装置ですよ。地元に戻って、太郎様の望んでいる人たちがいない場合には、玉手箱を操作して、竜宮城に来る前の時に戻して欲しかったのです。来る前の時に戻れたら、再びカメを迎えにやるつもりでおりました。そして、太郎様には、その後ずっと龍宮城で暮して欲しかったのです」
「そうだったのですか。でも、私たちには、玉手箱は入らないと思いますが」
「あなたは、竜国と外の時間のたち方が違っていることをまったく知らないのでしょうね。ここでの時間はのんびりとしていますが、あなたがいる日本の春香町では早く時間がすぎていますよ。それに少しでも早く正人様にお薬を飲ませてあげなければならないはずです」
「では、どうすればいいのですか?」
「あなたたちが、ハルカ村に戻る時に、ピノを一緒に行かせますよ。その時にピノに玉手箱を持たせます。玉手箱の扱い方はピノが熟知していますからね」
そう言い終わった乙姫様は、優しい笑顔を浮かべていました。
乙姫様は自分を救ってくれたカオルたちに感謝状を贈りたいと言いだしたのです。そこで乙姫様から指示をうけたピノは、すぐに乙姫様に会って欲しいとカオルと玲子に言ってきたのです。ピノには色々助けてもらっているので、二人はその願いを聞いてあげることにしました。
竜宮城は大きな建物です。岩を積んで作った門をくぐり、宮殿に行くためには迷路のような通路をあちらこちらと通る必要がありました。また、宮殿についても、たくさんの部屋があり、ピノが案内をしてくれなければ、大広間にも行くことができなかったのです。
他の竜人たちと一緒に待っていると、やがて乙姫様がやってきて、王妃の椅子にすわりました。
乙姫様はさすがに優雅で、気品に満ちたドレスを着ていました。
「そちが、加藤カオルか? そして、隣にいるのが、高島玲子か。この度の働き、まことに感謝にたえない」
カオルと玲子は中腰になって頭をさげました。
「欲しい物があれば、与えたいと思うが、何かありますかな?」
カオルは玲子の方に顔を向けると、玲子は軽く首を左右にふっていました。そこで、カオルは「特に何もございませんので、けっこうでございます」と、答えました。
「さようか、ならば、玉手箱をお渡しすることにいたそう」
それを聞いたカオルは顔色を変えていました。
「乙姫様、昔のことですが、龍宮城に浦島太郎と言う者が来て、その者が玉手箱をもらって地元に帰り開けたら、おじいさんになって、すぐにお亡くなりになったと聞いています。ですから、玉手箱はもらわないで、地元、日本のハルカ村に戻りとう存じます。その代わり、隣におります玲子の兄が病気にかかっておりますので、それに効く薬を持たせていただきたいと思っております」
「薬を持って行くことは当然のことじゃ。だが、そちの誤解を解いておきたいと思う」
「誤解と申しますと?」
「私は浦島太郎様を愛しておりました。その太郎様に年老いてしまうだけの物を渡すはずがありません」
「じゃ。玉手箱はなんだったのですか?」
「あれは、あなたに分かるように言うと、時間変更調節装置ですよ。地元に戻って、太郎様の望んでいる人たちがいない場合には、玉手箱を操作して、竜宮城に来る前の時に戻して欲しかったのです。来る前の時に戻れたら、再びカメを迎えにやるつもりでおりました。そして、太郎様には、その後ずっと龍宮城で暮して欲しかったのです」
「そうだったのですか。でも、私たちには、玉手箱は入らないと思いますが」
「あなたは、竜国と外の時間のたち方が違っていることをまったく知らないのでしょうね。ここでの時間はのんびりとしていますが、あなたがいる日本の春香町では早く時間がすぎていますよ。それに少しでも早く正人様にお薬を飲ませてあげなければならないはずです」
「では、どうすればいいのですか?」
「あなたたちが、ハルカ村に戻る時に、ピノを一緒に行かせますよ。その時にピノに玉手箱を持たせます。玉手箱の扱い方はピノが熟知していますからね」
そう言い終わった乙姫様は、優しい笑顔を浮かべていました。
0
あなたにおすすめの小説
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる