密室で殺人?(刑事 佐川 敏 殺人事件捜査リポート)

矢野 零時

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4密室破壊

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「やっぱり、薫は自殺をしたのでしょうか?」と、行き詰った話に近藤は不安気な声をあげた。
「そう思ったら、この捜査は終わりだね。まずは、殺されていると思って見ることだ。映像を見るだけでは見えない何かがあるかもしれない」
「刑事さん、じゃ、五階に行ってみますか?」と、管理人は言ってくれた。
「そうだな。現場百回だね」と、佐川はにやりと笑った。

 管理人に連れられて、二人はエレベーターにのり込み五階でおりた。エレベーターの前にあるホールから真っすぐに通路が続いていて、左側は窓、右側は各戸に分けられた部屋が並んでいた。
 佐川はエレベーターのある方を振り返っていた。エレベーターの中にある監視カメラがこの通路まで映していたならば、今度の場合も簡単に犯人がどのように犯行を行ったのか、すぐに明らかになっていたに違いない。
「刑事さん、503号室。もう一度入ってみますか?」
 だが、管理人の声は佐川に聞こえていなかった。佐川の顔はエレベーターのある所と反対方向を見つめていたからだ。 
「見えているのは非常階段につながっているドアですね」
「ええ、そうですよ。見に行きますか?」
 管理人の後について、二人は非常階段に出ることができるドアの前に行った。
「ちゃんとノブがついているんですね」と、近藤はノブに触り、ゆっくりと引くとドアが開いた。
「外に出たら、ドアを閉めないでくださいよ。外からは、ドアが開かない。ここに戻れなくなります!」と、管理人が声を大きくした。
「ちょっと、ドアを押さえてくれよな」と佐川は近藤に言ってから、佐川は非常階段に出てみた。そちらの方からドアの外側を見ると、ノブはあるのだが鍵穴は塞がっていたのだ。
「外から入り込むことはできませんよ」と、管理人が自慢げに言った。
「ほんとうに、外から出入りは絶対にできないのか?」
 佐川は、額に三本のしわを作りながら、しばらくの間、ドアのノブや塞がっている鍵穴見つめていた。
 やがて、佐川は最後ににやりと笑った。

「管理人、セルロイドのサシありませんか? 15センチ程度の短い方がいいのですが。それとセロテープを持ってきてくれませんか?」
「管理人室にはある物ですな。サシは帳簿に赤線をひかなければならない時に使っていますからね」
「じゃ、お願いできますか?」
「ああ、いいですよ」と言って、管理人は走り出していき、エレベーターにのると一階におりていった。

「佐川さん、何を思いついたのですか?」
「ドアを閉めると、金属の板棒、デッドボルトが出てきて、ドアの枠に作られた穴に入り込んで、ドアを動けなくしてしまう。つまり鍵がかかった状態になる。だが、デッドボルトが穴に入り込まないようにできれば、ドアに鍵がかかっていない状態にして置くことができるよ」
「でも、それをどうやって?」

 やがて、管理人が短いサシとセロテープを手に持って帰ってきた。
「お待たせをしました」
 そう言って佐川にサシを渡した管理人は、荒い息を何度もついていた。本人はかなり急いで戻ってきてくれたのだ。
 サシを受け取った佐川はデッドボルトの所にサシをあて、動かないようにセロテープで貼ってとめた。そして、佐川は非常階段の踊り場に出た。背後でドアが閉まる。
 だが、すぐに佐川はドアを押して、マンションの中に入ってみせた。
「この仕掛けをすれば、非常階段から、入ることができる。これが分かれば、どうやって、望月薫を殺害できたのか、推理してみせることができる」
「どんな方法ですか?」と近藤が聞いていた。

「8月20日に、五階に来た者はピザ配達人しかいない。だから、彼が殺しをしたと仮定して考えるしかない。彼はピザの出前で来たのは、本当に仕事であったと思う。ピザの出前を届けた後に、非常階段に私が考えたようなサシを差し込む仕掛けをして、エレベーターを使って一階にいき、マンションを出ていく。つまり、彼は普通のピザ配達人で、届けた後普通に帰って行ったと思わすことができるためだ。これで管理人は彼を疑うことはない」
 佐川は同意をとるように管理人の方に顔を向けた。
「この後、彼は人に見られないように木々の間を通って非常階段の所に行く。そして、非常階段をのぼり、五階に行ってドアを開ける。その後、彼は503号室に行き、ドアをピッキングで、もちろん前もって用意してきた物だが、それを使って入り込み、用意してきた腰ひもを使って望月薫の首を絞めて殺した。薫の死体を天井の梁に吊り下げ、その後、パソコンを打って、遺書を作成し、プリントアウトさせた。その時刻が午後3時だった。その後、犯人は503号室を出た。ドアが閉まると自動でロックされるタイプだから、ドアが閉まって密室が完成する。さらに非常階段の方についているドアからサシとセロテープをはがして、マンションから出ると、ここのドアも自動で閉まり外から開けることができなくなる。後は犯人は誰にも見られないように非常階段をおりて逃げ出すことができる」

 佐川はまるで犯人の姿が見えるかのように、非常階段へ出られるドアを開けて階段を見つめていた。

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