密室で殺人?(刑事 佐川 敏 殺人事件捜査リポート)

矢野 零時

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5犯人捜査

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 佐川の推理を聞いた根本係長は、すぐに遺体を司法解剖に廻していた。
 基本方針が自殺から殺人に変わったので、佐川は寿マンションの五階の各部屋を見て廻った。先を越されるわけにはいかないと思った鑑識も証拠になりそうな物を探しに同マンションに再び入っていた。

 すぐに佐川たちは、505号室のピザを頼んだ母子をみつけ、どこのピザ販売店から頼んだのか聞きだすことができた。その販売店に行って8月20日の午前中に寿マンションに配達を行った男を見つけることができた。

 販売店のオーナーから佐川は採用時の履歴書を見せてもらう。
 男の名前は角田正夫。年は二十五歳。住所はこの都市の南にあるアパートに住んでいた。店に来たところで話を聞こうとしたのだが、事件を起こしたつぎの日、角田は店を電話だけで退職していたのだ。退職をした後、新たな勤め先を決めてはいないようだった。

 佐川は推理をしていたが、物証となる物を掴んだわけではない。
 すぐに佐川は、刑事課長に角田の住んでいる所に、ガサ入れ(家宅捜索)をすることを提案したのだった。すぐに裁判所に申請を行い、ガサ入れが認められた。

 その日、ガサ入れにのために、朝の八時に佐川は角田の部屋ドアをたたいた。
「なんですか?」と、まだ目覚めていない声が聞こえた。
「ちょっと、お話があってまいりました」
 とぼけた佐川の言い方に、角田はドアを少し開けて声の主を見ようとした。その隙を逃しはしない。
「警察の者だ。すぐにここを開けるんだ」と佐川は言い放ち、近藤はドアの開いた隙間に手を入れて強引に開けた。驚いた顔をしている角田を前に佐川は裁判所からもらった捜索差押許可状を読み上げた。
「家にある物を捜索物件として、押さえさせてもらうよ」
 佐川の後ろにいた警察官たちが段ボール箱を抱えて、部屋の中にどっとなだれ込んでいった。角田は呆然としていた。
 警官たちは次から次へと部屋の中にある物を段ボール箱に入れて、持ち出して行く。
 突然、警察官の一人が佐川の耳元でささやいていた。
「彼のスマホが見つかりませんが」

 佐川が角田を見るとパジャマの右ポケットを押さえている。
「そこに、持っている物も出してもらえませんかね」
「これは、個人的な物だよ。出す必要がない物は出さなくてもいいはずだ」
「この部屋においてある物は全て押さえさせてもらえるんですよ」
 佐川がそう言うと、近藤は角田の側に行き、ポケットの上からスマホをつついてみせた。
「ご提出いたします。証拠品となる物でなければ、捜査後にはお返しいたしますので」
 始めは、角田はいやがっていたが、やがてポケットに手を入れてスマホを出して近藤に渡していた。
 だが、角田は口元をほころばせていたのだ。

 思わず、佐川は顔を青くしていた。
 スマホの中で望月薫とのやり取りをした跡を完全に消してあるという顔をしていたからだ。それをしていると言うことは他の物も捨ててしまっているかもしれないのだ。

               




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