超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ

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黒巫女召喚士誕生

決定事項

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 砂漠の奥に入っていくと、唐突にアミさんが喋りかけくる。

「ねぇねぇ!その子猫ずっと出して置くの?」
「はい、MPももったいないですし⋯⋯ダメでしょうか?」
「うんうんそんな事ないよ」
「そうですか、ありがとうございます」

 それから数分進んだ所でリクさんが止まり、合わせてアミさん、ラミさん、ミクさんが止まる。
 そして、1つの通知が出てくる。

《パーティから追放されました》

「え」
「くく、あははは、あはははははははは」
「いや~ここまで上手く行くのは初めてだね!」
「そうだな。こんな初心者《バカ》初めてだ」
「え、ええ?」

 意味が分からないよ。

「シャー」
「ね、ネマちゃん!」
「ぶ、あはは、ね、ネマちゃん?あははは、おかしいだろ!ゲームキャラ相手にそんなに感情出すとか!ああ、腹痛てぇ。回復魔法じゃこれ治んねぇや」
「え、と、ええ?」
「初心者が混乱しているぞ~魔法使いの私が教えてしんぜよう。私達は初心者狩りだよ。まんまと引っ掛かる君はめっちゃ笑えたよ!」
「あ、もう良いだろう。さて、アイテム沢山置いて行けよ?あと、俺のキル数になりな!」

 え、何?これは?しょ、初心者狩り?あんないい人達が?え、ええ?

「シャー!」
「ブフ、おいおいリク何してんだよ?子猫如きに」
「にゃはははだっさぁ!」
「うぅ、るっせ!少し油断しただけだ!」
「いや、もっとダサいでしょ」
「だね~」
「だな」
「ぐぬぬ、ま、まあ、良いだろう。仕切り直しだ」
「初心者狩りっていけない事でしょ?どうしてそんな事を!」
「ここはPvPエリアだよ?問題ナッシング!それに、初心者って狩りやすくキル数もくれてアイテムもくれる。初心者って先入観が小さくてレアアイテムを持っている奴が多いんだよ。だが、初心者にはそんなアイテムもったいないだろ?だから俺達が有効活用してやるんだよ?あ、騎士などに通報しても無駄だぜそろそろあの国からトンズラする予定だからな」
「そ、そんな酷いッ!」
「酷い?これも立派なプレイスタイルだよ!じゃあな!」
「ニャ!」
「邪魔くせぇ!」
「にゃん」
「ネマちゃん」

 リクさんの回し蹴りがネマちゃんの顔面に当たり、ネマちゃんが吹き飛ぶ。
 私は急いでネマちゃんを応召する。死なせてたまるか!

 私は回れ右して走る。逃げる!絶対に逃げる!てか、いつから入った!⋯⋯もしかして、アミさんが話しかけて私の意識を逸らした時?

「どこ見てるの?」
「しまっ!⋯⋯ぎゃあああ!」
「ぎゃあああ!って、うるさいよ?」

 左の膝から下が斬られた。アミさんによって。
 そして、上から火の玉が落ちてくる。魔法だ。
 私は体を回転させて地面を転がりながら躱す。

「お、まだ、諦めないの?」
「ハァハァ」

 だ、ダメだ。混乱で術式が上手く構築出来ない。
 れ、霊符を取り出して、取り出して、⋯⋯取り出してどうするの?
 逃げれるの?相手は4人。無理だよ。私には。

『前よりかは少ない』

 それに足も無くなっているし。

『まだ、手がある』

 私は対人戦は苦手だよ。無理だよ怖いよ。
 なんで、なんでこんな目にあっているの?パーティに入ったから?
 なんでこんな理不尽に会わないといけないの?

『弱いから。弱虫だから。だから、あの時、前に出れなかった』

 そう、あの時も!あの時?あの時って?
 分からない!冷静に成れない!考えが纏まらない!
 霊符でも相手は4人出し霊符を投げて当てる事も出来ない!
 足は片足消えてダメージエフェクトが途切れず出ているから徐々のHP減っているし!

「あ、ああ」
「お、諦めたか?」

 そうか、分かったよ。もう、私には勝ち目がないんだ。
 逃げる事も出来ない。ま、ネマちゃんをHP0にさせなかったのは上出来かな?
 召喚獣を出しても逃げ切れないし戦わせてはやられてしまう。
 ハクちゃんは戦闘向きではない。
 私はデスを受け入れようか、ログアウトもPvPエリアでは出来ないし。

『なら、代われよ。前みたいに、じゃないと助かんないだろ?問題ない』

 ああ、こんな時、ヒーローでも居たらなぁ~。

『誰かに縋るな。少なくとも他人に、その場にいない人に希望を求めるな!居るのは、己だ!』

「じゃあな!」

 私の目の前に剣が迫ってくる。

『ああ、焦れったい!お前がそんなんだからわたしが消えねぇんだよ!消えたくもねぇけどな!』

 私は、負けるのかな?⋯⋯私、わたしはわたしは簡単には負けねぇ!

「さっさと代われば良いものを」
「はぁ?」

 お祓い棒で剣を防ぎ、残った右足を地面とスレスレ並行に動かしてリクを転ばせる。

「うぉ!」
「ちょ、何してんの?油断しすぎ~」
「そうだぞ、さっさとやれよ」
「全くです」
「残念だが、殺る側交代な?」
「はぁ?」

 わたしはお祓い棒を使って移動して聖者とか名乗るネカマの肩に歯を立てて、肉をちぎり喰らう。
 屍食鬼《グーラ》の種族特性の隠れ機能、『食回復』をわたしは本能で分かっていた。
 食回復は肉を、なるべく生きている肉を喰らう事で回復速度が速まるモノだ。
 たが、足りない。

「まだ、足りない」
「お、俺の肉を噛みちぎ⋯⋯ぎがぁああ」
「うるせぇよ」

 わたしは構わず肉を噛みちぎり喰らって行く。

「な、何している!速く助けて!」
「あ、待って!【ファイヤーボール】!」
「お、あぶね」

 お祓い棒を地面に激しく打ち付けて、その反動で飛び上がりスキルを躱す。

「へぇ、あれが魔法か?妖術とは違うんだな。妖術の方が手間かな?ま、どうでも良いか」
「なにごちゃごちゃ言ってやがる!」
「てめぇらみたいな屑に関係ねぇよ」
「何あの子?中身代わった?キモ」
「アミだったよな?安心しろ、てめぇよりかはキモない」
「はぁ?」
「リク、一言、言ってやる。──てめぇだけはぜってぇ許さん」

 大切な者を傷付けるような奴はわたしが許さない!
 わたしは地面に片足で着地し、お祓い棒を杖のようにしてバランスを整える。
 ラミは回復魔法で肩の傷を癒していく。

「再生速度が速いスキルでもあるのか?」

 目に見える程の速度で再生しているが、まだ数分は完全再生には時間が掛かるな。
 ま、どうでも良いや。
 既にわたしの中で決定事項があるんだから。
 まずはそれを成すだけだ。

 わたしは目をゆっくり上げ、小首を傾げ、低く、尖っている冷たい声音で、怒りを冷静差で押し潰した声で、決定事項を告げる。
 あいつらには逃れる事の出来ない決定事項を。

「てめぇらはここでわたしのキル数になる。これは決定事項だ。良いな?決定事項だ。抵抗は許してやる。せいぜい頑張れ。⋯⋯」

 目を閉じ、天を仰ぎ、そして、再び顔をあいつらに向け、目を開ける。
 腕を広げ、巫女服が広がる。
 仮面は外さないけどね。きっと、今の顔は惨たらしい笑みを浮かべているだろう。
 怒りを殺したそんな笑顔だ。

「さあ、虐殺を始めよう」
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