超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ

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化け物集団誕生の前触れ

48 オレン目線)中編

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 オレンは数歩下がりアラクネの出方を見る。
 アラクネは連続で数発の糸を飛ばす。
 同時では無く連続である。その微妙なズレをオレンはスイスイと抜けて躱し、アラクネに接近してスキルを使う。

「【アサシンブレイド】」

 2次職になった時に得られるスキル【アサシンブレイド】はオレンの最大最高火力のスキルでありMP10を消費する。
 そして、狙い違わずアラクネの目を狙って突き立てた短剣は、アラクネの瞼に寄って防がれた。
 だが、かすり傷は付けれた。だいたいアラクネの最大HPの2パーセント。単純計算50回攻撃したら倒せる。
 だが、そんな簡単に倒せる相手が隠しボスな訳が無い無いのだ。
 減ったHP、瞼に付いた傷が再生して行く。
 さらにオレンの最大MPでは2回までしか放つ事が出来ず、MP回復時間も長い。MP回復ポーション等は用意していない。
 つまり、圧倒的火力不足なのである。

「面白い」

 オレンは自分でも言う程のゲーマーである。より強敵、より難しいゲームである程燃えると言うもの。
 アラクネの放つ糸を全て躱して冷静に動きを観察して行く。
 天井に移動したり壁に移動する事がなくその場に居る。
 HPの減りも一定に経ってして無いので攻撃パターンが急に変化する事は無いだろうとオレンは予想する。
 糸は地面に落ちると数秒後には消えるが逆に言えば数秒は残る。

「アレを使うしかないか」

 圧倒的火力不足を補うには、地理も積もれば山となる方式で手数を増やせば良いじゃないだ。
 アラクネから一気に距離を離してインベントリからロープと短剣を2本取り出す。
 アラクネは攻撃をしてこない。
 オレンはその間に準備を済ます。

 自分の両足に短剣を括り付けたのだ。

「上手く当たれば2倍の攻撃力」

 実際そんな事は不可能に近いのだが。

 オレンは再びアラクネに接近して行く。飛ばされた糸の玉を自前のプレイヤースキルにて躱して行く。
 時には受け流しも利用して全てを躱してスイスイ進んで行く。
 そしてアラクネが自分の攻撃範囲内に入ったのを確認したオレンはまずは右足で蹴る。正面切って蹴るのでは無く短剣で斬る蹴り方だ。
 それでもアラクネの腕にかすり傷、そして再生される。
 アラクネの下半身の蜘蛛の前足は鎌のようになっておりそれで攻撃して来る。
 後ろにバク転しながら距離を取り体制を建て直す。

「なら、関節!」

 下半身は大きいので下半身の関節を集中砲火して足を折る、或いは使えなくする。あわよくば切り裂きバランスを崩す。
 狙うは関節のつなぎ目で1番薄い部分を正確に狙い斬る。
 アラクネの横に回る為に走り出す。無論、アラクネもその動きに合わせて体を動かしてオレンを正面に捉えようとするが、遅い。

 オレンはタイミングを見極めて一気に距離を詰めて自分の狙いを定めてその場所に正確に短剣を突き立てる。
 そして、斬る。

「【アサシンブレイド】」

 回転を使って遠心力を乗せて、走った時に生まれた力の向きをそのまま攻撃に使い2本の短剣を順番に同じ場所に攻撃し、すかさず左足の短剣でも斬る。
 体が空中に浮かんだのを狙いアラクネは前足の鎌で攻撃して来るが短剣をインベントリにしまったオレンは手を使って鎌を受け流し手に力を入れて鎌を押すようにして力を乗せて、作用反作用の法則を利用してアラクネから距離を取る。
 減ったHPは多く見積もってもアラクネ最大HPの5パーセントだった。
 アラクネの再生速度は遅いようで、完全に回復している訳では無い。
 ならば、とオレンは再び接近して同じ場所に攻撃しに行く。
 アラクネもそうはさせまいと抵抗するが、その抵抗の粘糸も、弾糸も、鎌による斬撃も全てを近距離のまま躱し、カウンターのように攻撃していく。
 アラクネは広範囲に糸をばらまいてオレンを引き剥がす。
 アラクネの粘着力の強い糸のように粘着していたオレンはアラクネから距離を取る。

「やった!」

 オレンは喜ぶ。粘着で連続攻撃をひたすら繰り返し、ようやく1割を削れたのだ。
 それは新たな攻撃パターン或いは行動パターンの変化である。
 アラクネは跳躍して壁を水平に進んで行く。

「壁面走行?」

 それにしては安定して移動しているアラクネ。
 まあ、下半身が蜘蛛なのでなんの疑問も無いしここはあくまでゲームだ。
 そして、アラクネは指をオレンに向けながら壁を移動して行く。その指から紫色の液体を飛ばしながら。

「毒⋯⋯それ以外にはありえない」

 その毒としか見えない液体を躱し着弾地点を確認したオレンは毒の情報を集める。
 攻撃を躱しながら接近して短剣で連撃を入れて、アラクネを足蹴にして距離を取る際にも攻撃をする。

 集まった毒の情報は、地面着弾後に6秒間留まる事、射程は糸よりも無いが速度はある。
 20メートルくらい離れていると攻撃して来ないが、逆にこちらも攻撃出来ない。
 ならばと、オレンは再び近接粘着を開始する。

【壁面走行】で壁に居られるのは最大1分ちょっと、アラクネを足場にしてそれをリセットして壁に足を付ける。アラクネに足を付ける際にも足が掠る──つまりは短剣で攻撃出来る。それを繰り返す。

 想像してみて欲しい。攻撃の当たらない人物が自分の半径1メートル以内にいてひたすら攻撃して来る状況を、盾で塞ごうともすぐ背後に居て、攻撃仕様にも当たらない。
 広範囲攻撃か或いは相手の飽きか、それぐらいでしか引き剥がせない人物が居る状況を。
 相手の姿が可愛いなら問題無い?はん!速すぎて見えないね!である。

 そんな情報をアラクネが体験している。
 さらにアラクネは下半身でしか近接攻撃をしていない。前足の鎌も攻撃が大雑把で躱し易く、指から放たれる糸・毒も前動作の指を向けるで場所等の予測も可能。
 現段階では広範囲に糸を出す事しかオレンを引き剥がせない。
 ならばそうしないアラクネは何故か、1つの予想が立てられる。
 ───広範囲に一気に糸を出すには地面に足を付けて居ないとダメ、或いは壁だから広範囲に広げても重力落下で意味が無い。
 糸の操作が合っても高速構築した蜘蛛の巣は操れないようだ。

「2割!」

 合計ダメージで2割のHPを削る事が出来たオレンは笑みを浮かべる。
 アラクネは壁から跳躍して糸を出して天井に定着する。

「天井は行けるが、きついな」

 天井と地上で感覚が狂うし、天井に行って跳躍してみると地上に向かって落下する。
 だから様子を見る事にする。すぐに焦る事になる。
 アラクネは蜘蛛の巣を構築していたのだ。アラクネの位置は丁度部屋の真ん中⋯⋯オレンはより集中する。
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