超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ

文字の大きさ
50 / 101
化け物集団誕生の前触れ

50 オレン目線)後編

しおりを挟む
 戦いは一方的な物になっていた。
 半分のHPになってから人型になったアラクネは防御力が少し上昇し、攻撃を一定時間攻撃が無かったら回復して行く仕様になった。
 再生力を防御力に回し、足での蹴りも背中の蜘蛛の足で拘束攻撃も手の鎌でもオレンに1度も攻撃を与える事が出来ていない。
 オレンの攻撃は全て命中する。少し与えるダメージが減っているが手数が増えているのでプラスに傾き、きちんと攻撃を命中させて行た。
 防御力が上がってせいで未だにアラクネのHPの6割を削れていない。
 この勝負は現在、アラクネのHPが減り切るかオレンの集中力が限界に来るのか⋯⋯アラクネの方が負けるだろう。
 何せ相手はプロゲーマーの双子の姉妹に両親を持ち、その実力は堂々であり、そしてこの状況をくれた桃の為の思いに応える為にも、オレンの集中力はいつも以上に高い。

「さっさと!削れろ!【アサシンブレイド】」

 MPも回復しては使ってを繰り返してひたすらダメージを与えていた。
 アラクネとオレンが離れた最大の距離は5メートル。
 アラクネの戦闘スタイルを変えてから糸を広範囲に放つ事が無くなった。
 本来ならアラクネのさらに上がった機動力、攻撃力で相手を翻弄し倒すスタイルなのだが⋯⋯オレンにとっては悪手の悪手である。

「私に勝ちたければ!エリア全体範囲攻撃を出すんだな!勿論そんなゲームバランス崩壊している攻撃なんてして来ない、よね?」

 もしも普通にダメージが低い代わりにそんな攻撃が合ったら一撃さようならになるオレンは心配になった。
 だが、相手は蜘蛛型のモンスター、今では蜘蛛要素なんて背中から生えている足と手の鎌くらいである。
 つまり、既にオレンの敵では無い。

 ゲーム内時間5時間後オレンはアラクネのHPを6割削る事が出来た。
 アラクネに紫色のオーラを纏い、鎌が黒く変色して行く。

「パワーアップしても、意味なし!」

 その全てを正面から躱すとオレンは思い、再び粘着を開始する。
 哀れアラクネ。君の攻撃は幾ら普通のプレイヤーでは躱す事の出来ない攻撃でもオレンには意味が無い。
 AGIが4桁になっているオレンには意味が無い。
 ステータス上昇系のスキルに装備、そして純粋はステータスによって4桁に達している敏捷、最速双子の片割れには幾ら常人的なプレイをしている人にとっては普通に強敵のアラクネじゃあ無理なのだ。
 普通に強い隠しボスと、異常に速いプレイヤー、どっちが強いか?簡単だ。普通が異常に勝てる訳が無い。
 ただ、オレンとアラクネは相性が良かった。
 もしもオレンが戦う隠しボスのメイン攻撃が遠距離魔法で雑魚モンスターを生み出す系のモンスターなら苦戦を強いられているし、下手したら負けている。
 さらに空を飛ぶドラゴンのように火を放つ奴にも勝ち目は無い。
 ゴーレムのように無駄に硬いと攻撃すら通らないかもしれない。
 だが、相手は攻撃が通り空を縦横無尽に飛び回るモンスターでは無い。

「もっと、もっと!私に攻撃力をくれぇえ!」

 既に勝ち目が見えたと感じたオレンは余裕の叫びを上げる。

「油断している訳じゃないよ?余裕なだけだよ?」

 オレンの背後に現れた糸を躱して再び攻撃に移る。
 異常の人ではなく普通の人では今ので拘束されていただろう。
 何せ虚空から急に現れた糸なのだから。

 本来アラクネの戦いには火属性の魔法が使える魔法使い、魔術師、さらにアラクネの高攻撃力の連撃を受け流したり耐えたり出来るタンク、アラクネの機動力に追い付けそこそこダメージの与えられるアタッカーが居るのが普通的な戦い方であり、運営もそれを承知で作っている。
 だからこそ、オレンが行っている事は何度も言うが異常なのである。

 だが、既にゲーム内時間6時間を越えている。
 現実では3時間もひたすら同じ敵と戦っている事になる。
 簡単に言えば、精神の疲れが蓄積されているのだ。

 それからも時間が長きに渡り、HP7割減ったアラクネは1度強制的にオレンから距離を取れ、そしてアラクネの足元に白い卵のような小さな粒が出来る⋯⋯オレンは迅速的完璧な対処、燃やした。
 完全に蜘蛛も生み出すような卵等放置してたまるものか。

 疲れが溜まっているのは何もオレンだけでは無い。
 リアルにNPCの感情等も現実に近くしたこのゲーム、タイトル通りに新しい世界と言って差し支えない。
 つまり、アラクネに搭載されたAIであり感情や知能、ゲームの敵モブであるはずのアラクネでも疲れは溜まるのだ。
 もう何時間も戦っているのに、相手にただ一方的にやられるだけ。反撃に意味は無い。

 8割⋯⋯アラクネの目が赤く輝き始めた⋯⋯オレン速攻で視線から外れる。
 オレンの予想、何かの魔眼的なアレ、オレンは今は知らないがアラクネの使っている魔眼は吸魔の魔眼⋯⋯MPを吸い取り回復する魔眼、相手が悪い。哀れアラクネ。

 9割、つまりは最後の変更ラインと言って良い。
 アラクネの最後の悪足掻き、基最終形態。
 アラクネの背中の足が全て鎌に代わり紫色のオーラが黒色のオーラへと代わり、鎌の色は赤くなり、背中から生えている足の数はざっと4倍⋯⋯キモイ。
 だが、ただ手数が増えただけなのでオレンには意味が無い。
 本当は速度や攻撃力も上がっている。

 そして、ゲーム内時間34時間、リアル時間17時間の長期戦の後、オレンは勝利した。

「うおおおおおおしゃあああああああ!」

 オレン⋯⋯柑にしては珍しい喜びの叫びを上げた。

「勝ったぞぉおソロで勝ったぞ!お姉ちゃん!桃!お母さんお父さん!セカイさん!勝ったよぉぉお!」

 今までに会った自分の記憶に残っている人達にお礼を告げて目線を、目の前のアラクネに合わせた。

「勝ったんだよね?勝ったよね?なんで、居るの?死亡エフェクトを散らしてさようならしようよ?ねね」

 アラクネは居る。虚ろな目では無く、下半身は蜘蛛として、背中からは何も生えておらず手も手だ。
 だからこそオレンはクエスチョンマークを大量に生産し続けている。

「⋯⋯⋯⋯」

 ただ待っている。オレンは今すぐにもログアウトして家族に報告を済ませて糖分及びご飯を摂取して再び此処に来ると考えているからだ。寝る?ゲーマーは眠い時に寝るのだよ。

 オレンは痺れを切らしてアラクネに触る。瞬間、オレンは油断しているつもりは無かったが、一瞬でアラクネの顔が自分の顔の横に来た。

「え」

 そして、アラクネは一言。

「よろしくね」

 最初で最後のアラクネの言葉、そしてアラクネは歯を立ててオレンの首筋にパクリと甘噛みする。

「しまっ⋯⋯HPが減ってない?」

 その疑問を晴らすかのようにアラクネはポリゴンとなり、オレンに吸われていく。

「え、ちょ」

《条件、初攻略迷宮を単独でクリアを確認しました》

 これでユニークシリーズ獲得は確定だ。
 だが、オレンの予想外はここからだった。

《───条件を満たしました。称号:【半人半魔】【蜘蛛女帝アラクネ】を獲得しました》

「⋯⋯はい?」

《特殊条件達成を確認しました。種族:半人半魔【ビーストスピードヒューマン】になります》
《NewWorldFrontierにおけるハーフを初めて達成した貴女に賞賛を、称号:【原初の混ざり物】を獲得しました》
《スキルを獲得しました。スキル:【蜘蛛女帝アラクネ】を獲得しました》
《パチパチパチ、賞賛。ユニークボスモンスターの単独討伐、混ざり物への進化を同時に達成した事を確認》
《報酬が与えられます》
《経験値を獲得しました。Lvが9に上がりました》

「あ、レベルリセットされてる⋯⋯」

 そんな事を呟きながら、目の前に現れた宝箱を開ける。
 中には白色の短剣にアラクネの鎌のような短剣だ。
 白色のパーカーにズボンが会った。

 ───────
 蜘蛛女帝の短剣
 装備必要条件:称号:蜘蛛女帝アラクネ
 特性:【糸連動】【斬撃攻撃上昇】【譲渡不可/破壊不可】
 STR+60
 説明:蜘蛛女帝と呼ばれる蜘蛛の頂点的魔物の武器が使われた短剣。与える蜘蛛女帝が認めた相手に渡されてその人にしか使えない。この短剣はただの名刀よりも優れている。

 糸連動:糸を射出・操作出来る。
 斬撃攻撃上昇:攻撃を与えば与えるだけ攻撃力が上昇する。最大STR+300
 ───────

「わぉ」

 まだまだ確認しないとね。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...