物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、魔法少女と出会う

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 「気をつけて行ってきてね」

 「はーい」

 弁当を受け取り、持ってきたリュックに横になるようにきちんと詰め込む。

 ダンジョンに入り、俺はアカツキモードで探索する。

 スマホのカメラで撮影する事を考えながら、片手間でゴブリンを倒す。

 オークのダンジョンも問題はなかったが、やはり安全をとってゴブリンの多いこのダンジョンの方が良いと思った。

 今はすぐにお金が必要って訳じゃないので、安全に活動しようと思う。

 「目先の目標は広告をつけれるようにしないとな。⋯⋯ゴブリンを素手で倒すってのも味気ないよな⋯⋯つーか、ワンパターン」

 拳で倒すしか俺は撮ってない。

 撮影用にステッキをドローンにしているため、素手じゃないと攻撃できないのだ。

 「武器は高いし⋯⋯ん~考えものだ」

 いっそゴブリンの持っている武器を奪って、それで倒すってのはどうだろうか?

 それだとどっちがゴブリンか分からんな。

 「ん~まじめにどうしよう。イレギュラーとかあれば、ネタになりそうだけど⋯⋯でもなぁ」

 それだと普通に危険だ。

 俺には綺麗に食べ終わった弁当箱を返却し、美味しい手作り晩御飯を食べるという、全てを捨ててでも遂行しないといけない義務が存在する。

 紗奈ちゃんに彼氏が居ないのか疑問に思うけど。

 「魔法を掴んでボウリングしてみた⋯⋯地面に当てると魔法って砕けるんだよな」

 そう呟きながら、魔法の使えるゴブリンから飛ばされた風の斬撃を掴んで、ブーメランのように投げ飛ばして斬り裂いた。

 「どうしたもんか」

 俺って撮影の才能が無いのかもしれない。ネタが全く思いつかない。

 前は『うっかり』と『脳筋的』が組み合わさって、良い感じのライブになった。

 だが、そんな『天然ムーブ』は天然じゃないのでできない。

 『脳筋的』ってのもワンパターンでマンネリ化するだろう。

 「まだ二回しかやってないし、擦れるだけ擦るか」

 そうなると、ゴブリンだとインパクトに欠けるよな。

 「オークもインパクトに欠ける気がする。もうやっちゃったし。レベル1で一人で行けるような場所で他に何か、殴りがいのある魔物は居ないもんかね?」

 そう呟いていると、背中から嫌な感じがした。

 無意識に従って、身体が前に全力で進んでいた。

 俺の元居た位置に降り注ぐ火炎。

 「なるほど。良い反応だ」

 「蒼い、炎。誰だいきなり攻撃しやがって!」

 「プライベートでもそんな口調なんだね。もしかしてあれってネタじゃなくて素なのか?」

 上からゆっくりと舞い降りて来ているせいで、スカートの中身が見えてしまっている青髪の女の子。

 見た目は初期の俺⋯⋯魔法少女のような見た目だ。

 「⋯⋯まさか、お前は魔法少女か!」

 「その通り。君と一緒。自分は蒼炎の魔法少女、アオイ」

 「安直すぎるだろ!」

 「赤髪だからアカツキってのも安直だと思いますけどねぇ?」

 うわ。

 冷静クールな感じだったのに、少しだけ怒りをむき出しにして来た。

 地雷踏んだわ。

 「同じ魔法少女なのに、なんで攻撃する!」

 「貴女のポテンシャルを確かめるためよ。魔法少女なんだから、特定の魔法が使えるでしょ? それを見せなさい」

 ⋯⋯は?

 この俺が魔法使えると思ってんのか?

 ライブ見てくれたんですよね? だったら分かるよね?

 魔法使えるなら一回くらいは使って、普通に魔法少女路線でやってたわ!

 使えねーだんよ!

 俺の魔法少女は魔法がなぜか使えないんだよ!

 「なるほど隠したいのね。そう言う人も居るわ」

 魔法少女って複数人も居るの?

 ユニーク⋯⋯。

 紗奈ちゃん、【ユニーク】スキルに【魔法少女】は含まれないようですよ。

 ⋯⋯話の流れ的にもしかして俺にカマかけてしてたのかな? 今は関係ないか。

 「さぁ無駄話は終わり。いや、後回し。貴女がその気なら、引き出すまでよ。蒼炎!」

 伊吹のように魔法を放ってきやがる。

 ああ言う決まった形の無い魔法を俺は掴む事ができない。

 まじで厄介だ。

 レザーとか一直線なら捕まるけど、跳ね返す事のできない魔法の方がよっぽどマシだ。

 なんで攻撃して来るかぶっちゃけ分からんが、逃げるしかない。

 こちとら逃げ足速いんじゃ!

 良い感じの場所でリュックは置いておこう。

 「え、逃げるの? 魔法少女なら戦いなさいよ! 正義の味方なのよ!」

 「そんなん知るか! 勝手に魔法少女にされてるのに、正義だの云々しるかよ! 何より、何も知らない分からない相手にいきなり攻撃してくる奴が、正義語るな!」

 「うっ」

 探索者を相手する必要は無い。攻撃してくるなら、ダンジョン内でゲートを守ったり、探索者同士の争いなどを仲裁する為に居る自衛隊のところに行けば良いんだ。

 攻撃した事が自衛隊にバレたら、相手は探索者のライセンスを剥奪される。

 自衛隊が近くにいなくても、ゲートの外に出れば俺は冴えないおっさんだ。

 気づかれるはずがねぇ。

 「どこまで逃げる気よ! ⋯⋯まさか、蒼炎!」

 「蒼炎!」だけで幅広い魔法が使えるんですね!

 球体の魔法なら、俺にとってありがたいぜ。

 「くらえ、サッカー選手になれる程の強い蹴りを!」

 魔法を足で蹴飛ばして、羽返そうとする⋯⋯だが、魔法の威力が強すぎて蹴れない。

 「うらっ!」

 力を込めて蹴り抜くと、魔法は粉砕してしまった。

 次元レベルが違う。

 レベル2以上か、相手は。

 「魔法少女なのに魔法使いやがって」

 「あたりまえじゃない⋯⋯貴女も使いなさいよ」
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