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アンデッドの国
成長エルフより強い死者
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「ぐぬぬぬ、はあ!」
短剣を振り抜きリーシアを押し返すヒスイ。
ドラゴンの骨と鱗で造られた短剣は軽くも丈夫で強力である。
ゾンビとなった女の子リーシアと対峙していた。
(なんて重い一撃なのよ。本当に子供?)
「デッドファイア!」
緑黒い炎がヒスイを焼きに突き進む。
「激風!」
風の流れをイメージして魔法を発動し、その炎と衝突させる。
しかし、一撃で霧散させる事は出来ず、押し切られそうになる。
ヒスイの影から悪魔が出て来てその炎を弾いた。
「た、助かったわ」
「低い。練度が低い」
「嫌味かい。助かったよ。悪魔さん。でももう良い。私が戦う」
「⋯⋯戦う必要が?」
「戦わないと収まらないから戦うの。そして、貴方の助けを借りたら強くなれない」
「分かりました」
悪魔は再び影へと戻り、ヒスイは気を取り直して短剣を構えた。
リーシアも同じように剣を構えるポーズを取る。
「骨武器、剣」
体の骨から分離した骨が剣となりその手に収まる。
そして地を蹴って高速でヒスイに接近し、純粋骨100パーセントの剣を振り下ろす。
その剣には雷が纏っていた。
「それは無理!」
足から風を放出して横にステップして避ける。
そして足に力を込めて停止して回転斬りを放つ。
だが、剣の動きならリーシアの方が上のようで、簡単に防がれた。
そして反対の手から水の弾丸が放たれた。
「ぐっは」
吹き飛んで家屋の壁を貫いて中で止まる。
家具をぐちゃぐちゃに崩壊させて、煙を払って立ち上がる。
「風流剣山」
無数の風の斬撃がリーシアに襲い掛かり、衝突する。
土煙を大きく広げるが、中からは何事もなかったかのようにリーシアが出て来ていた。
ヒスイは少しだけ顔を歪ませた。
「リーシアちゃん、目覚めて! あんな奴の言いなりになっちゃダメよ」
それに対する答えは顔を少しだけ横に倒し剣先を向ける事だった。
その剣先に電気が迸る。
紫色の電流はヒスイに危険信号を強く流させた。
(まずいまずい)
ヒスイも短剣を向けて風を集中させる。
目を細めて集中し、魔力を流して練り固める。
「シルフ様、お力をお貸しください」
『うん』
「ッ!」
普段は聞こえない声が脳内に響いて驚きはしたが、すぐに思い直す。
ヒスイの瞳には焦りや不安は一切なかった。
リーシアを助けると言う断固たる決意しか宿っていなかった。
「爆風の嵐!」
「高圧電流砲」
竜巻と雷電が衝突し火花が火炎のように広がる。
その衝撃波は周囲の瓦礫を吹き飛ばし、家すらも吹き飛ばした。
木々には火が着くがすぐに風に消えてしまう。
地形は抉り上げられ凹んで行く。
地形を大きく変える魔法の衝突はそれだけの火力を秘めていた。
昔のヒスイなら本来出せないだろう質力を今出せている。
逆に言えば成長したヒスイと同等の力を出せる子供が目の前にいるのだが。
「傷つけてごめんね!」
魔法が終わった瞬間に強い踏み込みをする。
風でスピードを強化したヒスイのスピードは正に疾風。
風の刃を纏わせた短剣を振り上げた。
リーシアは魔法を放ち終わった後の体勢をしていた。
防ぐのは不可能だと思われた⋯⋯だが、リーシアはそれを防いだ。
「嘘でしょ」
自分の腕の肉を広げて肉盾に仕上げて防いだのだ。
その形状変化はどこか既視感のあるモノ。
普段から一緒に生活をしていたゼラに似ていたのだ。
「突き刺す」
「教えるの!」
突き出された骨の剣を短剣で軌道をズラして防いだ。
そして短剣の強みを利用して高速の十連撃を放った。
しかしリーシアはそれを関節を外して全て防いぎ、その目はきちんとヒスイを見ていた。
魔法の力は同等、物理はリーシアに分がある。
「勝ち目ないなぁ。⋯⋯頑張るけどさ!」
足に風を纏わせて機動力を上昇させる。
スピードがどんどんと加速して行き、背後から攻撃を仕掛ける。
だが、ノールックでそれを防ぎ反撃の魔法が飛んで来る。
その時には既にヒスイはリーシアの横におり、短剣を突き刺していた。
それをヒラリと避けられて蹴り上げが飛んで来る。
短剣を盾にそれを防ぐが上空に飛ばされる。
そして同じ高さにリーシアが移動して回し蹴りを使った。
「ぐっ」
鈍い痛みが腕と横腹を襲い遠くに吹き飛ばされた。
壁をどんどん貫通して止まった。
(⋯⋯え、強過ぎない?)
ヒスイは自分では勝てないと悟った。
ヒスイの実力はビャと同等に並んでいるので決して低くは無い。
だが、相手がヒスイよりも上だったのだ。
(私、強くなったと思うんだけどなぁ)
竜巻を単騎で素早く扱える魔法の技術者はそうそう居ない。
有象無象のアンデッドならヒスイの相手でもないだろう。
しかし、今回は本当に相手が悪かったとしか言いようがない。
とある事が原因で急速に成長しているゾンビなのだから。
頭が少しだけ割れて血が流れる。
視界がグワングワンとぶれ始めて意識が曖昧となる。
「ごふ」
逆流した血液が口から出て服を汚す。
短剣は無事だがヒスイの体はボロボロだった。
既に立ち上がれない状態で、目の前にはリーシアがゆっくりと歩いていた。
その手に剣は握られていなかった。代わりに一つの瓶を持っている。
(ごめん、ゼラさん。私、弱かったよ)
「あの、ごめんなさい。やり過ぎちゃいました」
「え?」
瓶の蓋を開けて中にある液体をヒスイにぶっかける。
それは回復薬であり、たちまちヒスイの怪我は塞がって意識が回復していく。
バッと立ち上がる。
「あの。本当にごめんなさい。あの場所だとああするしかなかったんです。アイツにバレちゃうので」
「⋯⋯⋯⋯え?」
ヒスイはまだ『リーシアが演技をしていた』と言う事実に理解が追いついていなかった。
ヒスイの隣に座ったリーシアが理解が追いつくまで待つ。
それによってようやく理解が出来たヒスイが短剣を納刀する。
「とても痛かったです」
「すみません。抵抗が強かったので」
「だってあんなに殺気バチバチだと分からんでしょ!」
「いや。影にいる悪魔さんは分かっていたようだったので」
「え?」
ヒスイの脳内に笑っている悪魔の姿が頭に浮かんだ。
まだあまり知らない悪魔の事だが、なんとなくそんな気がするのだ。
「えと、ゼラさんを助けに?」
「それはダメ。アイツの近くにいると私は操られてしまうので」
「そっか。私も今のままだとゼラさんの足でまといなのでここにいますね」
「⋯⋯何か聞きたい事ありますか?」
「そうだね。色々とあるけど、この国の現状を少しだけ教えて欲しいかな?」
「分かりました」
そしてリーシアは先程まで死闘を繰り広げていたとは到底思えないヒスイにこれまでの経緯を話す。
そこには理解出来ない部分が大いにあるが、そこはいつの間にか影から出て来た悪魔がするとの事。
この中で最強は悪魔であると、リーシアはその目でしっかり確認していた。
短剣を振り抜きリーシアを押し返すヒスイ。
ドラゴンの骨と鱗で造られた短剣は軽くも丈夫で強力である。
ゾンビとなった女の子リーシアと対峙していた。
(なんて重い一撃なのよ。本当に子供?)
「デッドファイア!」
緑黒い炎がヒスイを焼きに突き進む。
「激風!」
風の流れをイメージして魔法を発動し、その炎と衝突させる。
しかし、一撃で霧散させる事は出来ず、押し切られそうになる。
ヒスイの影から悪魔が出て来てその炎を弾いた。
「た、助かったわ」
「低い。練度が低い」
「嫌味かい。助かったよ。悪魔さん。でももう良い。私が戦う」
「⋯⋯戦う必要が?」
「戦わないと収まらないから戦うの。そして、貴方の助けを借りたら強くなれない」
「分かりました」
悪魔は再び影へと戻り、ヒスイは気を取り直して短剣を構えた。
リーシアも同じように剣を構えるポーズを取る。
「骨武器、剣」
体の骨から分離した骨が剣となりその手に収まる。
そして地を蹴って高速でヒスイに接近し、純粋骨100パーセントの剣を振り下ろす。
その剣には雷が纏っていた。
「それは無理!」
足から風を放出して横にステップして避ける。
そして足に力を込めて停止して回転斬りを放つ。
だが、剣の動きならリーシアの方が上のようで、簡単に防がれた。
そして反対の手から水の弾丸が放たれた。
「ぐっは」
吹き飛んで家屋の壁を貫いて中で止まる。
家具をぐちゃぐちゃに崩壊させて、煙を払って立ち上がる。
「風流剣山」
無数の風の斬撃がリーシアに襲い掛かり、衝突する。
土煙を大きく広げるが、中からは何事もなかったかのようにリーシアが出て来ていた。
ヒスイは少しだけ顔を歪ませた。
「リーシアちゃん、目覚めて! あんな奴の言いなりになっちゃダメよ」
それに対する答えは顔を少しだけ横に倒し剣先を向ける事だった。
その剣先に電気が迸る。
紫色の電流はヒスイに危険信号を強く流させた。
(まずいまずい)
ヒスイも短剣を向けて風を集中させる。
目を細めて集中し、魔力を流して練り固める。
「シルフ様、お力をお貸しください」
『うん』
「ッ!」
普段は聞こえない声が脳内に響いて驚きはしたが、すぐに思い直す。
ヒスイの瞳には焦りや不安は一切なかった。
リーシアを助けると言う断固たる決意しか宿っていなかった。
「爆風の嵐!」
「高圧電流砲」
竜巻と雷電が衝突し火花が火炎のように広がる。
その衝撃波は周囲の瓦礫を吹き飛ばし、家すらも吹き飛ばした。
木々には火が着くがすぐに風に消えてしまう。
地形は抉り上げられ凹んで行く。
地形を大きく変える魔法の衝突はそれだけの火力を秘めていた。
昔のヒスイなら本来出せないだろう質力を今出せている。
逆に言えば成長したヒスイと同等の力を出せる子供が目の前にいるのだが。
「傷つけてごめんね!」
魔法が終わった瞬間に強い踏み込みをする。
風でスピードを強化したヒスイのスピードは正に疾風。
風の刃を纏わせた短剣を振り上げた。
リーシアは魔法を放ち終わった後の体勢をしていた。
防ぐのは不可能だと思われた⋯⋯だが、リーシアはそれを防いだ。
「嘘でしょ」
自分の腕の肉を広げて肉盾に仕上げて防いだのだ。
その形状変化はどこか既視感のあるモノ。
普段から一緒に生活をしていたゼラに似ていたのだ。
「突き刺す」
「教えるの!」
突き出された骨の剣を短剣で軌道をズラして防いだ。
そして短剣の強みを利用して高速の十連撃を放った。
しかしリーシアはそれを関節を外して全て防いぎ、その目はきちんとヒスイを見ていた。
魔法の力は同等、物理はリーシアに分がある。
「勝ち目ないなぁ。⋯⋯頑張るけどさ!」
足に風を纏わせて機動力を上昇させる。
スピードがどんどんと加速して行き、背後から攻撃を仕掛ける。
だが、ノールックでそれを防ぎ反撃の魔法が飛んで来る。
その時には既にヒスイはリーシアの横におり、短剣を突き刺していた。
それをヒラリと避けられて蹴り上げが飛んで来る。
短剣を盾にそれを防ぐが上空に飛ばされる。
そして同じ高さにリーシアが移動して回し蹴りを使った。
「ぐっ」
鈍い痛みが腕と横腹を襲い遠くに吹き飛ばされた。
壁をどんどん貫通して止まった。
(⋯⋯え、強過ぎない?)
ヒスイは自分では勝てないと悟った。
ヒスイの実力はビャと同等に並んでいるので決して低くは無い。
だが、相手がヒスイよりも上だったのだ。
(私、強くなったと思うんだけどなぁ)
竜巻を単騎で素早く扱える魔法の技術者はそうそう居ない。
有象無象のアンデッドならヒスイの相手でもないだろう。
しかし、今回は本当に相手が悪かったとしか言いようがない。
とある事が原因で急速に成長しているゾンビなのだから。
頭が少しだけ割れて血が流れる。
視界がグワングワンとぶれ始めて意識が曖昧となる。
「ごふ」
逆流した血液が口から出て服を汚す。
短剣は無事だがヒスイの体はボロボロだった。
既に立ち上がれない状態で、目の前にはリーシアがゆっくりと歩いていた。
その手に剣は握られていなかった。代わりに一つの瓶を持っている。
(ごめん、ゼラさん。私、弱かったよ)
「あの、ごめんなさい。やり過ぎちゃいました」
「え?」
瓶の蓋を開けて中にある液体をヒスイにぶっかける。
それは回復薬であり、たちまちヒスイの怪我は塞がって意識が回復していく。
バッと立ち上がる。
「あの。本当にごめんなさい。あの場所だとああするしかなかったんです。アイツにバレちゃうので」
「⋯⋯⋯⋯え?」
ヒスイはまだ『リーシアが演技をしていた』と言う事実に理解が追いついていなかった。
ヒスイの隣に座ったリーシアが理解が追いつくまで待つ。
それによってようやく理解が出来たヒスイが短剣を納刀する。
「とても痛かったです」
「すみません。抵抗が強かったので」
「だってあんなに殺気バチバチだと分からんでしょ!」
「いや。影にいる悪魔さんは分かっていたようだったので」
「え?」
ヒスイの脳内に笑っている悪魔の姿が頭に浮かんだ。
まだあまり知らない悪魔の事だが、なんとなくそんな気がするのだ。
「えと、ゼラさんを助けに?」
「それはダメ。アイツの近くにいると私は操られてしまうので」
「そっか。私も今のままだとゼラさんの足でまといなのでここにいますね」
「⋯⋯何か聞きたい事ありますか?」
「そうだね。色々とあるけど、この国の現状を少しだけ教えて欲しいかな?」
「分かりました」
そしてリーシアは先程まで死闘を繰り広げていたとは到底思えないヒスイにこれまでの経緯を話す。
そこには理解出来ない部分が大いにあるが、そこはいつの間にか影から出て来た悪魔がするとの事。
この中で最強は悪魔であると、リーシアはその目でしっかり確認していた。
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