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しあわせのつづき
BLだいすき
しおりを挟むこ、これは、どうしたらいいのかな……?
……認める?
知らないふりをする?
内心わたわたの遥斗を前に、達也は拳をかかげる。
「それでだ! せっかくだし、ここは大々的に、BLだいすきの会を作ろうではないか!」
達也が何か言いだした。
「皆、帰宅部だろ? どーせ暇なんだし、せっかくの高校生活を、充実したBL生活にしようではないか!」
拳をにぎって力説する達也の声が、巨大だったらしい。
バァン──!
1日に2度も、ばぁんされた資料室の扉が悲鳴をあげた。
「話は聞かせてもらったぁあ──!」
さらさらの長い髪の女の子が仁王立ちで、ショートカットの眼鏡の女の子が後ろでもじもじしてる。
「ずっとずっとずっとずっと思ってた! おそろいのぬいぐるみつけてるから確信した! 佐倉くん『るーくんの恋小説』書いてるよね? ってことは『りーくんの恋日記』は一条くんってことだよ!」
「あ、あのあのあの、た、立ち聞き、ご、ごめんなさい、あの、お、応援したくて……!」
ふたりの女の子の目が真剣で、期待にだろう、きらきらしてる。
……びっくりした。
段々受けいれられてきているし、小説を応援してくれる人がいても、それはきっとオンラインだからだ。
仮想現実なら応援できても、ほんとうに身近になったら、驚いたり引いてしまったりするのはきっと、仕方のない本能めいたものなのかもしれない。
実際にリアルで涼真のことをだいすきなのは、やっぱり秘密で、こっそりしなくてはいけないもので、応援してくれる人なんていないと思っていた。
ぼうぜんとする遥斗の前で、女の子たちふたりが声をあげる。
「もちろん、言いふらしたりしない!」
「お、オンラインの小説が、ほんとの恋になってるって、感動したの──! そ、それを、伝えたくて……!」
真っ赤な頬の女の子たちに、達也もうんうんうなずいている。
「あれ読んでると、応援しちゃうよ。読んでて、ほら、お互いの感想のところで、『るーくんは、はーくんなの?』とか『スマホのライト点灯して』とかさ、めちゃくちゃどきどきした。両想い、ほんとによかった!」
涙ぐむ達也に、びっくりした。
ほんとうにびっくりして、泣きそうになった遥斗は、涼真を見あげる。
おそろいの瞳で、涼真は遥斗を見た。
手をつないで、うなずいた。
「ありがとう」
ふたりで、笑う。
それは『るーくんの恋小説』を書いているのが遥斗で、『りーくんの恋日記』を書いているのが涼真で、ふたりが両想いなことを、認めることだった。
これから社会に出たら、たくさんの偏見に遭うだろう。
苦しい目に、辛い目に遭うかもしれない。
まだ正式に伴侶と認められない。
きっと、いやな目に、いっぱい遭う。
それでも、遥斗と涼真のことを最初に知ってくれた人たちが応援してくれたことは、ずっと、輝きつづけるだろう。
遥斗と涼真を、ずっと、あたためてくれるだろう。
「うれしい」
涙ぐんでしまった遥斗を、涼真が抱きしめる。
「おぉお!」
「きゃ──!」
「尊い──!」
……拝まれました。
「いやもう、ドラマとか超えてくる勢いなんだけど……!」
「かっこよすぎて、まぶしい──!」
泣いてる。
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