【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ

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どちらが

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『愛希は、俺の、最愛の彼氏だ──!』


 堂々と胸を張って言える未来を、この手で、つくりたい。

 愛希と、いっしょに。

 願うのは、きっと、愛希をあいしてるから。




 オレンジのやわらかな光を投げかけるランプも、緑の葉を揺らすパキラも、くるりくるりと天井でまわるシーリングファンも、たまらなくいい香りのする、ふっくら焼けて、とろーりチーズが溶けたピザでさえ、俺の目を素通りしてゆく。

 ごちゃごちゃ麗乃が何か言ってたけれど、働いてる愛希が、可愛すぎて、かっこよすぎて、うっとり見惚れてたら、何にも耳に入らなかった。

 料理の味どころか、何を食べて、何を飲んだのかさえ覚えていない。


 ──愛希のバイトの終わりは、何時なのかな。
 せっかく逢えたから、待っていてもいいかな?

 ……愛希、出てきてくれなくなったけど、休憩に入った?


『仕事、何時まで? 待っててもいい?』

 メッセージを送ったけれど、返信がない。既読もつかない。

 厨房とかで働いてる?



「あの、片白くんの知りあいなんですが、仕事が終わるまで待っていてもいいでしょうか」

 水を注ぎにきてくれた店員さんに、ド直球で聞いてしまった。

 ストーカーって思われたらどうしよう!

 ぎゃ──!

 ひとりであわあわしてたら、お兄さんが眉をさげる。


「片白くん、体調わるいみたいで、帰りました」

「えぇ!?」

 びっくりした次の瞬間、店を飛びだしていた。


「真紀──!?」

 後ろで麗乃が何か叫んでいたけれど、聞こえない。


 体調がわるいのに、無理して働いてたなんて……!

『愛希、かわいー♡』

『仕事のできる愛希、かっこいー♡♡♡』

『俺におごってくれるためだなんて、惚れちゃう♡♡♡♡♡』

 もだもだしてた15分前の俺を、ぽこりたい──!



 追いかけても、追いつくはずなんてない、理性が告げているのは分かっているのに、走っていた。


 駅に向かったなら、この道のはず──

 スーツで全力疾走の俺に、仕事帰りなのだろう人たちが振りかえるけど、構っていられない。

 さらに加速しようとしたとき

 愛希と、体格のやたらといい幼なじみが近くの公園に入ってゆくのが見えた。


 ──……体調がわるいって言って、幼なじみとデートするために、早退した……?

 ……いや、偶然会っただけ、かも……

 体調がわるいから、公園で休む……?



 ……愛希が、浮気、して、る……?


 ──……俺と、幼なじみ、どちらが、浮気なんだろう……



 泣きたくなった。

 叫びたくなった。


 走っていた。



 今までなら修羅場なんて、絶対、ごめんだった。

 うっとうしいことを言われた瞬間『じゃあ別れよう』で終わってきた。


 気もちが離れた人を追いかけるなんて、最高に、かっこわるい、みっともないことだと思っていたのに。



 ……追いかけてる。

 高校生を、社会人が。

 全力で。




 はずかしいとか、情けないとか、何もかもが、吹き飛んだ。



 ──……捨てないで、愛希。






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