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未成年は、だめなのです
しおりを挟むロデア大公国はちっちゃい国なので、馬を替えながら数日駆ければネメド王国との国境に辿り着く。
でも、いくらちっちゃくても、公都から1日で国境へはゆけません。
ということは、皆で、お泊まりなのです!
BLゲームの魔物討伐イベントは、魔物が出たよストーリーがちょこちょこあった後に魔物の討伐を頑張る感じで、国境に行くまでに一緒に馬に乗るとか、お泊まりとか、何にもありませんでした。
スチルいっぱいできそうなのに、大変とか、時間がないとか、お金がないとか、いろんな理由でなかったみたいです。
しかしルゥイと一緒に馬に乗せてもらったうえに、さらに、もしかして、野宿!?
キャンプなの!?
わくわくしたキーアでしたが
「村の方が宿を貸してくださるって。ありがたいね」
にこにこルゥイに撃沈しました。
……そりゃそうか。
大公殿下の第一子が、野宿で寝袋とか、ありえないよね。
しょぼんとするキーアに、ルゥイが首をかしげる。
「どうしたの、キーア?」
「星を見ながら、一緒に寝袋で寝るの、楽しそうだなって思って──」
討伐遠征なのに、キャンプ気分でごめんなさい!
前世の紀太の記憶だからタイムラグがあるかもだけど、なんか最近、流行ってるよね?
なんで流行ってるのか全然わからないんだけど、流行るってことは、虫で大変とか暑いとか寒いとかを凌駕するほど、きっと楽しいんだよ!
キャンプファイアーで、マシュマロを焼くんだよ!
…………マシュマロ、なかった。今度トマにつくってもらおー!
前世はともだちひとりもいなかったから、おひとりさまキャンプで、それはそれでとても楽しそうだけど。
……皆でキャンプ、楽しそうだなあ。いつかできたらいいなあ。
しょぼんとするキーアの顔を覗きこんで、ルゥイが微笑む。
「いやだな、キーアならいつ僕の寝台に来てくれてもいいんだよ」
抱っこしてくれるルゥイの若葉の瞳が濡れたように輝いて
「キーア! 喰われるぞ!」
レォが引っぱって抱きよせてくれた。
「あの顔を見たら、うっとりするから。だめだから」
ちっちゃい子どもを諭すようにレォが教えてくれる。
「レォの顔も、うっとりする」
ぽわぽわ熱い頬で見あげたら、青磁のまなじりが、ほんのり朱く染まった。
「きーちゃん! う、浮気、だ、だめなんだから──!」
タックルするみたいに腰に抱きついてくるネィトが、かわいーです。
「ごめんね、ネィト。あまりの顔力に、くらくらしちゃうみたい」
ぽふぽふ抱っこしながら謝ったら、ちょっとふくれたネィトが紫の目で見あげてくれる。
「……きもち、わかるのが、くやしー」
それぐらいかっこいーのです! ルゥイも、レォも! さすが攻略対象だよ。
「誰がキーアと一緒の寝台で眠るか、じゃんけんしよう」
ルゥイの宣言に、レォとネィトが目を吊りあげる。
「反対だ!」
「反対、反対! ルゥイ、じゃんけん強すぎるよ!」
はちみつポジなチートですね、わかります。
「……いや、一緒の寝台で寝るのは、そもそも問題があるのでは……? まだ皆、未成年だよな……?」
ゼァル将軍の目が遠くなってる。
「やはりここは大人の僕が、キーアと一緒の寝台にならないとね」
にこにこハゥザ学園長に腰を抱かれました。
こわい未来しか見えない。
「ふん、伴侶の僕がきーちゃんと一緒の寝台に決まってるでしょ」
鼻息荒く胸を張るネィトが、勇まし可愛い。
「ロデア大公国では、成人前の淫行は、固く禁止されている」
レォの目がものすごく真剣だ。
「ネィト、襲う気だろう。キーアのはじめては僕のものだから」
ルゥイが、ふんと鼻を鳴らした。
は、鼻を鳴らしてる!
ルゥイが!
「はぁア!? 部外者が何言ってるの? きーちゃんのはじめても二回目も八万回目も、伴侶の僕に決まってるだろおぉおオオ──!」
……八万回えちえちするつもりらしいネィトが、勇者だ……!
「……別にどっちでもいーけど、俺と一緒の寝台で寝る?」
ガダ先輩、まなじりを朱くして言わないでください! なんか話がややこしくなりそうなので!
「ぼ、僕も一緒に寝る──!」
主人公マェラも参戦して来たよ!
こちらは勿論攻略対象目当てだよ。うんうん。正しい道を進んでる!
「いやここはやはり、オトナな僕が──!」
「学園長が自ら淫行してどうする──!」
ルゥイに糾弾されたハゥザ学園長の目が泳いでる。
……え、淫行する気なの!?
きゃ──!
燃える頬でもだもだするキーアの腰を、ひょいとゼァル将軍が抱きあげた。
ひょいだよ。
ひょい。
飴玉をつまむ感じで抱きあげられてしまいました……!
最愛の推しに──!
きゃ──!
ぱたぱたもだもだするキーアを、おひめさま抱っこではなく、猫の首根っこをつかむみたいに抱きあげたゼァル将軍が吐息する。
「……キーア・キピアは俺と一緒の部屋にする。
文句は受けつけん。以上だ」
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