【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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だめ!

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 ドシンドシン、大地を揺らしながら豪速で迫ってきた魔物の、すさまじい瘴気が、止まった。


 …………襲って、こない……?


 緊張にふるえるキーアの喉が、こくりと鳴った。


『魔物さん、突撃停止!』

 叫んだのを、聞いてくれたのだろうか。

『待て』の状態で止まってくれている……?

 ……魔物が……?


「あ、あの、光さま、ほんとに、ほんとに、振りかえっても大丈夫ですか」

『だいじょうぶだ!
 勇気を出せ、きー!』

 ぽふぽふ頭をたたいてくれる光さまに、キーアはちっちゃな拳をにぎる。

 ものすごく巨大なものが、背後にいる。
 すさまじい瘴気が押し寄せてくる。

 こわい……!

 生理的に、ぷるぷるしてしまう、涙目なキーアに、心配そうなルゥイの声が降ってくる。


「キーア、無理しないで、万一、石化したら……!」

 こ、こわい、けど……!

 たぶん、フィリ先生なら、大魔法使いだから石化を解いてくれるはず……!

 万一、石化しちゃったら、たぶん、光さまが、闇さまが、たすけてくれるはず!


「だ、だいじょうぶ……!」

 ぷるぷる震えながら、キーアはぎゅっと目を閉じて、気合を入れる。

 すんごく恐ろしい見た目だろうと、ぐちゃんぐちゃんの、ぐろんぐろんでも、ドン引かない!

 前世の紀太が見た、こわいゲームのでろんでろんを思い出したキーアは泣きそうになって、あわあわ首を振った。


 ぷるぷるする拳を握りしめる。

 がんばるぞ、おー!


「えい!」

 勇ましい掛け声とは裏腹に、おそるおそる振りかえったキーアは、初めて魔物を正面から見つめた。


「──っ!」

 息をのんだキーアは、跳びあがる。

 真っ暗な闇をまとうように、闇の森を支配するようにそびえる巨体は──


「かわい──!」

 ふわふわの真っ暗な毛と、真っ暗な目の、巨大な狼みたいな、おっきいしっぽが、ぱたぱたしてる!

 よく見ると、額にも縦に割れたような目があって、なるほど、これで石化させるらしい。
 なんとなく、やばそうな瘴気が、もしゃもしゃしてる。

 でも光さまの御力で、キーアの周りは清浄で、こわい感じはしなかった。


 気持ちわるくもない。
 手や足が固まってきたりもしない。
 ぱりぱりもしない。

 だいじょうぶ!

「うわあん……! ありがとう、光さま……!」

 鼻水をすすりながら泣いたら、ちっちゃな手が頭をぽふぽふしてくれた。

『よくがんばった、きー』

『がんばった!』

 闇さまも、一緒にぽふぽふしてくれました。やさしい。


 息を大きく吸いこんだキーアは、声を張る。

「はじめまして、キーア・キピアです。愛称はきーちゃんだよ。
 遊んでほしくて来てくれたの?」

 にこにこ近づこうとしたキーアを、後ろからルゥイに全力で止められました。


「危ないから──! ゼァル将軍でさえ危険な魔物だ──!」

 蒼白なルゥイが心配して、後ろから抱き止めてくれる。


「キーア、俺たちは危険な魔物を討伐するためにやってきたんだ。任務を果たさねば、民たちに危害が──」

 ゼァル将軍の言葉に重なるように、闇の森が揺れた。


『あ──そ──ぶ──!』


 わーんわーん、ハウリングするような、不思議な声だった。

 キーアは、ぴょこんと跳びあがる。


「きみが喋った? 話せるの!?」


『あ──そ──ぶ──!』

 ぱふぱふしっぽを揺らして、飛びかかるように見えたのだろう魔物から、キーアを守るようにルゥイが前に出る。

 ゼァルが剣を振りあげた。


「だめ──!」


 双剣を抜いたキーアが、飛びこんだ。







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