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だめ!
しおりを挟むドシンドシン、大地を揺らしながら豪速で迫ってきた魔物の、すさまじい瘴気が、止まった。
…………襲って、こない……?
緊張にふるえるキーアの喉が、こくりと鳴った。
『魔物さん、突撃停止!』
叫んだのを、聞いてくれたのだろうか。
『待て』の状態で止まってくれている……?
……魔物が……?
「あ、あの、光さま、ほんとに、ほんとに、振りかえっても大丈夫ですか」
『だいじょうぶだ!
勇気を出せ、きー!』
ぽふぽふ頭をたたいてくれる光さまに、キーアはちっちゃな拳をにぎる。
ものすごく巨大なものが、背後にいる。
すさまじい瘴気が押し寄せてくる。
こわい……!
生理的に、ぷるぷるしてしまう、涙目なキーアに、心配そうなルゥイの声が降ってくる。
「キーア、無理しないで、万一、石化したら……!」
こ、こわい、けど……!
たぶん、フィリ先生なら、大魔法使いだから石化を解いてくれるはず……!
万一、石化しちゃったら、たぶん、光さまが、闇さまが、たすけてくれるはず!
「だ、だいじょうぶ……!」
ぷるぷる震えながら、キーアはぎゅっと目を閉じて、気合を入れる。
すんごく恐ろしい見た目だろうと、ぐちゃんぐちゃんの、ぐろんぐろんでも、ドン引かない!
前世の紀太が見た、こわいゲームのでろんでろんを思い出したキーアは泣きそうになって、あわあわ首を振った。
ぷるぷるする拳を握りしめる。
がんばるぞ、おー!
「えい!」
勇ましい掛け声とは裏腹に、おそるおそる振りかえったキーアは、初めて魔物を正面から見つめた。
「──っ!」
息をのんだキーアは、跳びあがる。
真っ暗な闇をまとうように、闇の森を支配するようにそびえる巨体は──
「かわい──!」
ふわふわの真っ暗な毛と、真っ暗な目の、巨大な狼みたいな、おっきいしっぽが、ぱたぱたしてる!
よく見ると、額にも縦に割れたような目があって、なるほど、これで石化させるらしい。
なんとなく、やばそうな瘴気が、もしゃもしゃしてる。
でも光さまの御力で、キーアの周りは清浄で、こわい感じはしなかった。
気持ちわるくもない。
手や足が固まってきたりもしない。
ぱりぱりもしない。
だいじょうぶ!
「うわあん……! ありがとう、光さま……!」
鼻水をすすりながら泣いたら、ちっちゃな手が頭をぽふぽふしてくれた。
『よくがんばった、きー』
『がんばった!』
闇さまも、一緒にぽふぽふしてくれました。やさしい。
息を大きく吸いこんだキーアは、声を張る。
「はじめまして、キーア・キピアです。愛称はきーちゃんだよ。
遊んでほしくて来てくれたの?」
にこにこ近づこうとしたキーアを、後ろからルゥイに全力で止められました。
「危ないから──! ゼァル将軍でさえ危険な魔物だ──!」
蒼白なルゥイが心配して、後ろから抱き止めてくれる。
「キーア、俺たちは危険な魔物を討伐するためにやってきたんだ。任務を果たさねば、民たちに危害が──」
ゼァル将軍の言葉に重なるように、闇の森が揺れた。
『あ──そ──ぶ──!』
わーんわーん、ハウリングするような、不思議な声だった。
キーアは、ぴょこんと跳びあがる。
「きみが喋った? 話せるの!?」
『あ──そ──ぶ──!』
ぱふぱふしっぽを揺らして、飛びかかるように見えたのだろう魔物から、キーアを守るようにルゥイが前に出る。
ゼァルが剣を振りあげた。
「だめ──!」
双剣を抜いたキーアが、飛びこんだ。
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