【完結】オメガの俺に、推しの愛が届かない

  *  ゆるゆ

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俺の

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 馬車まで、たどり着けなかった。
 花の香りにうもれるように、きみを押し倒して、花のくちびるに、唇を重ねた。

「……ん……」

 ……やわらかい……

 唇を割って、歯を開いて、きみの舌をからめとる。


 ──あまい

 苦手なはずの、あまいものが、こんなにも恍惚をもたらすなんて

 身体の芯を、頭の芯を、ぐすぐずにする、きみの香りに満たされる。

 とろけそうに、あまやかな、きみのくちびるを夢中で、むさぼった。


「……ん、ぁ……」

 こぼれる吐息まで熔けてゆきそうに、熱い。


 ……抵抗は、されなかった。

 俺は、力の強いアルファだから……?

 ……オメガのきみは、あらがえない……?


 ──力で、押さえつけるようなアルファになりたくないと思っていたのに
 オメガなんて、大きらいだと思っていたのに


 きみの香りは、なんてあまい。

 身体の奥から、どろどろに熔かされてゆくみたいだ。


 今までの自分が熔けて、あたらしい自分が現れるように

 頭の芯まで、とろけてく。



 きみのことしか、考えられなくて。

 きみのことしか、ほしくない。




 してくれるとか、見られるとか、はずかしいとか、頭が沸騰していて、何を言ったのかも覚えていない。

 からだの奥から突きあげるような熱い情欲にのまれて、気づいたら放っていた。


 ……はずかしすぎて、泣きそうだ。

 俺、めちゃくちゃ情けなくて、さいあくなほど、かっこわるいアルファだ──!


 ほんのり理性が戻ってきたことさえ、うらめしい。

 ごめん、今度はきみを気持ちよくするから──!


 あわててきみを抱きしめようとしたのに

「……すまない、その、きみに、させてしまって。その、きみのも、する、から──」

 めちゃくちゃはずかしいのを、こらえて、誠心誠意、きみのを唇に含もうとしたのに


「あ、だいじょうぶです。飲んだら発情、終わったみたい」


 ものすごく素の顔で言われました……


 …………………………。


 …………泣いていいかな…………?




「じゃ、じゃあ、あの、俺、帰りますね。お疲れさまでした。
 もう変な薬をぶっかけられませんように!」

 俺のオメガが、俺を捨てようとしてる──!

 泣いちゃう……!


「待ってくれ。……きみの家名を、聞いていない。強制発情させられた俺に、名を教えたくない気もちはわかるが……教えてくれないか? できれば、きちんと礼を──」

 礼というか──うん、きみに俺の子を孕んでほしい。

 めちゃくちゃしたい。

 おねがいする。

 今すぐ。

 つがいになって。

 今すぐ。

 きみを、俺のものにしたい。


 いやそんな、ちょこっとつながったくらいで『俺のもの♡』とか痛すぎるのは分かってる!


 そんなのが吹き飛ぶくらい、きみがほしい。



 これがアルファの本能かと噛みしめている間に


「一生の思い出を、ありがとうございました。ジークさまの匂いと味を、一生たいせつに覚えています──!」

「はずかしいから──!」

 叫んでる場合じゃない!
 俺のオメガが、逃げるんですけど……!


 ……え、そんなに俺、だめだった??

 してもらってばっかだったから?

 ……されるがままなアルファ……!


 そ、それはだめだった!
 ごめん!
 きみのを何にもしていない!
 挽回の機会をください、お願いします……!

 泣いて頼みたいのに


「ではジークさま、ぴんくの……薄紅の髪の方には、気をつけてくださいね! 薬剤をぶっかけられませんように!」

 逃げるきみを、追いかける。


「待ってくれ、きみの家名は──!?」

「ありません」


 ……それは『教えたくない』だろう。


 王宮舞踏会に列席できるオメガに、家名がないなんて、ありえない。

 平民は決して入ることができない。
 招待状がないと、王宮に入ろうとするだけで騎士の槍で刺されてしまう。


『お前に教える名などない』

 突きつけられたようだった。



「……っ」


 息が、とまる。


 きみに、拒絶されたら、息が、できない。







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