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ひどい
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「お前のために護衛を雇ったら赤字になるからな。幽霊だと思われとけ」
オメガな俺の親父が、ひどすぎる件について!
知ってた!
馬車に揺られた俺は、貴族街に入る前に捨てられそうになった。
「じゃあな!」
「じゃあな、じゃねえよ。その屋敷が、どこにあるかも知らねえよ。送ってけ!」
かみつく俺に、親父はびっくりしたらしい。
「……いや、ルゼ、おまえほんとに、突然つよつよになったな……たおやかで、かわいいルゼが……!」
「ちょっと大人になったんだよ」
口がね。
口だけね。
「よくやった、ルゼ!
この調子で、金づるをつかむんだぞ!」
ぽんぽん俺の肩をたたいた親父が、俺を馬車から無理やり降ろそうとする件について。
「ひどくない!?」
「何言ってんだ。お前はこれから幽霊になるんだ。
どこの幽霊が、高位貴族の馬車で幽霊屋敷に乗りつけるんだ!」
親父にしては、まともなことを言ってる。
……いや、ぜったい、これ以上、俺を馬車に乗せたくないだけだ!
「ちょっと待て、地図を書いてやるからな。それを見て行け。
まあ、迷わんだろう。見たらすぐわかる。幽霊屋敷だから!」
「ひどくない!?」
涙目な俺は、きちゃない地図き、いつでも屋敷が使えるようにいつも持っているらしい鍵を渡され、馬車から降ろされた。
ひどすぎる!
知ってる!
仕方なく夜明けに近づく街を、ぽれぽれ歩いて、貧民街の隅で借りていた自室に戻る。
セキュリティやばやばの、襲ってくださいな部屋とは、これでお別れだ。
少ない荷物をまとめ、朝になってから部屋を引き払い、荷物をかついで郊外までやってきた。
歩くことはできる俺。えらい。
地図のとおりに歩いていったら、閑静な住宅街になり、それを越えて、郊外の森に近づいたら、ようやく邸らしきものが見えてきた。
もう昼だよ!
いくら健脚な俺でも、きつい……!
近づいてみたら、建っているのが不思議なほど、崩れそうな屋敷だった……!
……え、やばくない……?
命の危険を感じるレベルなんですけど──!
……しかし、不気味な幽霊屋敷ではあるものの、いちおう閑静……いや、周りに畑とか森しかない王都郊外にある。王都の貧民街の片隅で、いつ襲われるかと恐々としながら暮らしているより、ずっといい。
ごくりと喉を鳴らした俺は、近くの森にのみこまれてしまいそうなボロボロの幽霊屋敷に足を踏みいれた。
「……いや、これ、鍵の意味が、なくね……?」
ぼーぼーの草が、地面だけじゃなくて、屋根からも生えてるだけなら、かわいい。見たことある。癒される。
しかし!
家の中から、窓を突き抜けてもしゃもしゃ草が生えてるのは、どうよ!?
家のなかに草が生えてる……!
屋根に穴が開いてるから!
植物の生える家!
おしゃれな、あれじゃないから!
屋根に穴だから!
ふりーだむ!
「……夏はいいけど、冬、どうするの……?」
ひきつった頬が、ひくひくしてる……!
ちょっと泣きそうになった俺は、親父の厳命
『掃除するな!』
を思いだした。
『きれいになってみろ、誰かが引っ越してきたんだなって思われるぞ。幽霊屋敷に、ひとりで成人したオメガが住んでる、助けなんて来ない、襲われ放題になるぞ──!』
こわい顔をされた。
もともとすごい顔が、ホラーなことになってた。
『……いや、うん、たすけの来る、警備が厳重な、いちおう高位貴族の邸の隅っこに置いてくれないかな……』とか言っても、このくそ親父が絶対に聞いてくれないのは分かってる。
自分の身は、自分で守るしかない!
やってやるぜ!
というわけで、掃除しない。
ぼーぼーの草と共生だよ。
「よろしくな、草! いっしょに住むことになったルゼだ」
あいさつしてみた。
肩のうえで、風の精霊のシフィが笑ってる。
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