【完結】オメガの俺に、推しの愛が届かない

  *  ゆるゆ

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……え……?

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 全速力で走った。

 エーテ王国で最強の魔導騎士の俺の足をなめるな──!

 ……いや、ルゼのほうが速かったけど……!

 ちょっと涙目になりながら、ルゼの香りがしたほうへ爆速で走った。


「ルゼ──!」

 叫んで、つかまえて、振り向かせたら──…………え…………?

 夜の髪が、陽の光にくすんだように揺れた。


 ──きみじゃ、ない。

 ……俺が追いつける時点で、ルゼじゃないとか、聞こえない──!


「…………え…………?」

 突然肩をつかまれて、振り向かせられた通りすがりの人も、もさもさの夜の髪とちいさな青い目をまるくして驚いてる。

 ……たぶん、この人はベータだ。オメガじゃない。

 お互いにきょとんとして、ぼうぜんと見つめあってから、気まずく俺は咳払いした。


「す、すまない。きみから最愛の人の香りがして──そ、そうだ、きみはルゼを知っているか? 親しいのだろうか」

 メラメラやきもちが燃えてる気がするけど、はげしくメラッメラな気がするけど、なんとかこらえて微笑んで聞いてみた。

 口元が引きつってて、にらみつけてるかもしれないけど、ゆるしてほしい。

 だってルゼと仲よしだなんて、うらやましすぎる──!

 肩をつかんで揺さぶる勢いで聞いた俺に、とまどうように相手の目がさまよう。


「……え、いや、知りませんけど」

 ………………知らないの?

『よかった! ルゼと仲よくなかった!』じゃ、ない──!


「で、でも、きみからルゼの香りが──」

 くんくんしてみた。

 やっぱりする。
 ルゼの匂いだ。

 爽やかで、涼やかなのに、ほんのりあまい。

 最愛の魂のつがいの香りを、アルファな俺が、かぎわけられないはずがない──!

 ふふん、俺の鼻、すごい。犬を超えるかも──!

 ううーん、この香りはどこから……?


「ちょっと身体をさわってもいい?」

「な、ななななにするんですか──!」

 うれしそうな紅い頬で叫ばれてもな。何にもしないよ。身体検査だ!

 というか、匂い検査だな。うん。
 くんくんさせてください。

「……ジーク……!」

 突然駆けだした俺を追いかけてきてくれたらしい、ぜえぜえしながらエテナがやってくる。

「……はや、すぎ……!」

「いや、遅い。俺のオメガは、つかまえられないから」

「……それって、ほんとにオメガなの……?」

 エテナの目が、不審になってる。


「た、たすけてください、突然この人が俺のこと──!」

 真っ赤な顔で、もじもじしてる。


「うれしそうだね?」

 エテナのつっこみに、もじもじが加速してる!


「まあまあ、ちょっとだけ」

 くんくんしてみた。

 ふんふん

 くんくん


「わかった! ここだ!」

 胸からルゼの匂いがする!


「あぁん♡ やだ♡ 責任とってください♡」

 うれしそうだね?


「いや、胸をかいだだけだから。これは?」

 胸にさしてあったのは白い布だ。愛らしい花の刺繍がついている。

「あ、ああ、これ。知らないんですか? いま王都で大流行の、幸運を呼ぶお守りなんですよ。
 こんなかっこいー人が俺を追いかけて走ってきてくれるなんて、ほんとに幸運を呼んでくれた! すごい!」

 きゃわきゃわしてる。


「どこで買ったのか、教えてくれる?」

「えー♡」

 もじもじしてる!


「金貨で頬を叩いたら教えてくれるか?」

 ぺちぺちしてみた。


「くぅう──!」

 泣いてる。

 まちがったらしい。





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