【完結】オメガの俺に、推しの愛が届かない

  *  ゆるゆ

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知らない間に

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 * * *


 幽霊屋敷を、自分の部屋だけ掃除して、何とか住めるようになったよ!

「がんばったな、シフィ! ありがとう──!」

「うわあん、ルゼ! 僕、ほこりの精霊になっちゃうかと思ったよ……!」

 泣いてるシフィを抱っこした。

「おわびと、ありがとうの、魔力吸い放題をどうぞ!」

「……いつもだから、あんまりありがたみがない……」

 シフィが切ない目になってた。





 成人しているオメガで、平民というより貧民な俺は、働かなくては生きていけない。

 でも飲食店とかで働いたりすると

「オメガがいる!」
「男が欲しいんだろ?」
「ぐへへへへ、ブチこんでやるぜぇえ!」

 きもちわるすぎる男たちが寄ってくる。

 お客さんを相手にする職業は無理だ。
 職人とかもやってみたけど、同じところに通って、朝から晩までずっとそこにいると

「げへへへへ!」
「オメガか、お前!」

 みたいな男たちが寄ってくる。
 さらにひどいと、職場の同僚や先輩とかが

「お前、オメガなんだろ?」
「男が欲しいんだろ?」
「ヤってやるよ!」

 さいあくな感じになっちゃったりする!


 なので、俺は自宅でできる仕事をはじめた。
 まあまあ手先が器用な今世の俺、えらい。前世の俺は、絶対むりだったけど、泣いちゃうけど、今世の俺、お裁縫ができるんだよ!

 すごくない?

 孤児院では手に職をってことで、色々教えてもらえて、いちばん適性のあったものに弟子入りしたりできるんだけど、俺が得意だったのは裁縫だった。

 でも職人とか、飲食店のほうが給料が良かったから、そっちに行ってみたんだけど、無理だったから仕方ない。

 自分でデザインして服をつくって、それが売れたりすると稼げると思う。でも孤児院出身の俺が任せてもらえるのは、誰かがつくった型紙の服を縫うことと、ハンカチを作ったり、刺繍をしたりするくらいだ。

 お給料は、あんまりよくないが、身体の無事がいちばん大事だから!

 というわけで、お針子をしています。


「師匠! 納品、持ってきたよー」

 にこにこ手をあげたら、孤児院のときから俺を教えてくれた師匠のおじちゃんが、笑顔で手をあげた。

「おお、ありがとな、ルゼ! 最近、ルゼの刺繍の売れゆきがすごくてなあ。無理させてすまん」

「いやいや、売れたらお金もらえるから、うれしいよ!
 でも皆と同じ刺繍だろ? なんで?」

 首をかしげたら、師匠も首をかしげた。

「なんか、いい匂いがするらしい」

「…………は……?」

 あんぐりする俺に、師匠が反対に首をかしげる。

「俺は、あんまり鼻がよくねえから、そんなに分からねえけど、確かに、ルゼが仕上げてくれた服も刺繍も、いい匂いがするんだよ。
 鼻のいいベータにも人気だし、たまーに下町にもいるアルファは、癒されるらしい」

 知らない間に、いやしになってる!

「持ってると気分がよくなるんだよ。そしたら、にこにこしちゃうだろ? にこにこしてると、いいことが向こうから来てくれるんだな。
 ってことで『幸運のお守り』なんて言い出した店があってさ、爆売れ!」


 なんだそれ!

 俺にも幸運を分けてくれ!


 ふくれる俺を、師匠が手招いた。
 しゃがれた声が、低くなる。

「なんか、すんごい、ルゼの刺繍を買い占めてる男がいるらしい……」

「へえ?」

 ありがたいね。
 ありがとう。

 今日はお肉が買えるかも!


「なんか、魂のつがいとか言って……」

「えぇ?」

 ……刺繍の匂いをかいで、つがいとかって、やばくない……?



「この匂いをかぎわけて追いかけるとか言ってるらしいぞ!
 危険だから、もう帰れ!」


「……えぇえ……!」

 幸運じゃなくて、ストーカーを呼んじゃったの、俺?


 ひどすぎない?





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