【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  ゆるゆ

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おまけのお話 がんばるキーザ!

がんばるキーザ!

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 放課後の生徒会室に射し込む、橙を帯びた光がきらめいた。
 かっこよく見えるように、僕は水の髪をかきあげる。

「僕、断れる人になったよ!」

 ジェミはちょっとこっちを見て、頷いた。


「そうか」

 続く言葉を待ったけれど、ジェミは手元の資料に目を落とす。


「………………え、それだけ?」

 首を傾げるジェミに、拳を握る。


「わー、キーザかっこいーとか、見直したとか、惚れなおしたとか、惚れちゃったとかは!?!??」

 前のめりで聞いたら、ジェミは凛々しい眉をしかめた。


「ないな」

「な、ないの!?」

 こっくり頷くジェミに、項垂れた。



 過去の暗い所業がてらてら輝くと、僕にはもう、どうすることもできない。

 だって、過去は変えられない。

 僕の貞操観念皆無な、『断る』という選択肢がなかったことは、変えられない。
 ゲームの強制力のせいで、なんて言ったって、大抵の人は『はぁ?』だ。

 それに僕が欲しいのは、同情じゃない。
 僕へと向かう、ジェミのほんとうの気持ちだ。

 ……でも、僕の過去がそれを阻むなら。
 僕にはもう、どうしようもできない。


 じゃ、なかった!

 未来を変えるのは、僕なんだよ!

 僕は、断れる人になった。
 ちょっとずつでも、僕は確実に変わってる。

 しょげるな、僕!


 自分を励ました僕は、改めて拳を握る。


「あ、あの、ジェミ、僕の過去は変えられないけど、僕、変わりたいんだ。
 断れる人になりたいし……ジェミのともだちになりたい」

 ほんとは、恋人がいいけど。
 まだ早いと思うから。

 ちょっぴりうるうるの目で告げた僕に、ジェミの藍の瞳が微かに見開かれる。
 いつもいかめしい唇が、かすかにほころんだ。


「俺はずっと、キーザは友だと思ってた」

「ほ、ほんと!?」

 跳びあがって喜んだ僕は、口まで出かかった

『ともだちじゃ、やだ。
 恋人にして!』

 を呑み込んだ。


 突然、下半身ゆるゆる男からそんなこと言われても、ジェミは迷惑だろうと思うから。

 ともだちとして、信用されるようになったら。

 手を繋げるようになったら。
 重なる瞳に、甘さが滲むようになったら。


『僕をジェミの恋人にしてください』

 いつか、きっと、告げるから。


 だから、今は、ともだちで。




「すごく、すごくうれしい。
 ありがとう、ジェミ」

 厳しい鍛錬で幾度も皮が剥け、ごつごつになったジェミの手を、両の手で
包んで笑う。

 僕の手に包まれたジェミは、ちょっと赤くなって、僕の手を握り返してくれた。







──────────────


はじめましての方、いつも見てくださる方、心からありがとうございます!


sumitono様のリクエストで、キーザとジェミのらぶらぶ……からまだ遠いので、もうちょっと更新します。

のんびり更新ですが、もしよかったら!



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