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おまけのお話 がんばるキーザ!
なかよくしてね
しおりを挟む『はじめまして。
なかよくしてね』
あのとき、叶えられなかった握手は、叶えられなくてよかったのかもしれない。
強制力で歪められた僕は、仲良くしてくれるジェミを差し置いて、可愛い美少年に現を抜かしてたと思うから。
そうしたら、人見知りだったジェミを、このうえなく傷つけてた。
ああしておけば、よかった。
もし、こうしていたら、今は違っていたのに。
後から、後から、毎日思う。
でも、どんなに願っても、過去は変えられなくて。
変えてゆけるのは、今と、未来だ。
それにね、今の僕は、思うんだ。
強制力で歪められていても。
リアルな世界で、誰かの圧力で歪められたと思っていても。
過去の僕は、一生懸命、最善を選んだ。
この道が正しいと信じて、この道が素敵だと信じて、選んできたんだ。
過去の自分が、真っ暗に思えて、くやしく、さみしくなる時もあるけど。
情けなくて、弱くて、卑怯で、無様で、何にもできない僕のことを、きらって、憎んで、消し去りたいと怨むんじゃなくて。
どんなに情けなくて、みっともなくて、可哀想で、さみしい僕のことも、ゆるして、愛してあげられるようになりたいな。
そうしたら僕は、過去の真っ暗な僕に苦しんで泣くことはなくなって。
きっと、ジェミの情けないところも、みっともないところも、弱いところも、ぜんぶ包みこんで愛せると思うから。
何もかもを愛せたら、僕とジェミの未来はきっと、薔薇色で。
あふれる虹のしあわせが降ってくると思うから。
過去の僕を、ゆるして、愛せるように。
未来の僕を、変えてゆけるように。
がんばるよ。
目の前にジェミという最高の願いがぶら下がっているから、きっと、簡単だ!
「はじめて逢った時から、ずっと、ずっと、大すきなんだ」
思わずこぼれた僕の言葉に、ジェミが真紅に染まる。
わあ! 言っちゃった!
は、早かったかな?
あわあわした僕は、熱い耳を隠すように、うつむいた。
さらさら、水の髪が流れる。
燃える頬で、ぎゅうぎゅう、ジェミの手を握った。
あの時より、ずっと、どきどきする気持ちで
あの時より、もっと、すがるような気持ちで
「僕と、なかよくしてね、ジェミ」
15年前と、同じ言葉を囁いた。
ジェミのごつごつになった手が、僕の手を握ってくれる。
真っ赤な耳で、ちいさく頷いてくれた。
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