【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  ゆるゆ

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おまけのお話 がんばるキーザ!

なかよくしてね

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『はじめまして。
 なかよくしてね』

 あのとき、叶えられなかった握手は、叶えられなくてよかったのかもしれない。

 強制力で歪められた僕は、仲良くしてくれるジェミを差し置いて、可愛い美少年に現を抜かしてたと思うから。

 そうしたら、人見知りだったジェミを、このうえなく傷つけてた。


 ああしておけば、よかった。
 もし、こうしていたら、今は違っていたのに。

 後から、後から、毎日思う。
 でも、どんなに願っても、過去は変えられなくて。

 変えてゆけるのは、今と、未来だ。


 それにね、今の僕は、思うんだ。

 強制力で歪められていても。
 リアルな世界で、誰かの圧力で歪められたと思っていても。

 過去の僕は、一生懸命、最善を選んだ。
 この道が正しいと信じて、この道が素敵だと信じて、選んできたんだ。


 過去の自分が、真っ暗に思えて、くやしく、さみしくなる時もあるけど。

 情けなくて、弱くて、卑怯で、無様で、何にもできない僕のことを、きらって、憎んで、消し去りたいと怨むんじゃなくて。

 どんなに情けなくて、みっともなくて、可哀想で、さみしい僕のことも、ゆるして、愛してあげられるようになりたいな。


 そうしたら僕は、過去の真っ暗な僕に苦しんで泣くことはなくなって。

 きっと、ジェミの情けないところも、みっともないところも、弱いところも、ぜんぶ包みこんで愛せると思うから。


 何もかもを愛せたら、僕とジェミの未来はきっと、薔薇色で。
 あふれる虹のしあわせが降ってくると思うから。


 過去の僕を、ゆるして、愛せるように。
 未来の僕を、変えてゆけるように。

 がんばるよ。

 目の前にジェミという最高の願いがぶら下がっているから、きっと、簡単だ!


「はじめて逢った時から、ずっと、ずっと、大すきなんだ」

 思わずこぼれた僕の言葉に、ジェミが真紅に染まる。


 わあ! 言っちゃった!
 は、早かったかな?

 あわあわした僕は、熱い耳を隠すように、うつむいた。

 さらさら、水の髪が流れる。

 燃える頬で、ぎゅうぎゅう、ジェミの手を握った。



 あの時より、ずっと、どきどきする気持ちで

 あの時より、もっと、すがるような気持ちで


「僕と、なかよくしてね、ジェミ」


 15年前と、同じ言葉を囁いた。




 ジェミのごつごつになった手が、僕の手を握ってくれる。

 真っ赤な耳で、ちいさく頷いてくれた。










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