27 / 76
Request いつものふたり
いい子
しおりを挟む「セィム!」
国でいちばんの輝かしいかんばせが、やわらかに紅く染まり、うれしそうに手を振ってくれるシァルが、夕陽にとけるようにきらめいた。
国務院まで迎えにきてくれるシァルに、セィムは毎日、息をのむ。
──絶対、夢だと思ってた。
今は、夢だと、絶対いやだ。
「もうちょっとで終わるから、いい子で待ってて」
ふわふわの月の髪をなでたセィムの指が、シァルの頬をすべる。
それだけで真っ赤になったシァルが、こくんとうなずいた。
「……いい子にしてたら、ごほうびは……?」
そうっとセィムを見あげるような上目遣いのシァルが、きょうあくに可愛い──!
くらくらしながら、セィムは微笑む。
「シァルのお願い、なんでもひとつ、聞いてあげる」
ぴょこんと、ちいさく跳ねたシァルが、赤い頬でうなずいた。
「いい子になる!」
かわいすぎるシァルの頭をなでなでした。
いつもシァルはいい子だから、ごほうびをあげたいなら、最初に言うに限る。
「……いや、うん、セィム、公衆の面前で救国の英傑と堂々といちゃいちゃできる鋼鉄の心の臓には感心するが、もうちょっと人目をはばかったほうが……」
同期で部長のロイが、もごもごしてる。
「伴侶ですので」
ふんとセィムは鼻を鳴らした。
堂々と、シァルをかわいがる権利と責任が、俺にはある──!
シァルには『油断すると鼻血を噴いちゃうくらい、とてつもなく可愛い』という自覚がなく、『皆の前で可愛がってもらえないのは、自分が可愛くないから』『きもちわるいから』というありえない解釈をしようとするので、公衆の面前で、積極的に可愛がらなくてはならないのです!
伴侶になったセィムの、うれしすぎる責任と権利に、顔はいつも、とろけてる。
そろそろ本気で溶解すると思う。眼鏡を掛けられなくなりそうで心配だ。いや、真剣に。
リ──ン ゴ──ン
国務院、終業の鐘が鳴る。
待合席で、カィザ選王国の民に拝まれながら、いい子で座っていたシァルが、ぴょこんと跳びあがる。
しゃっと光速で、退勤を魔道具で記録したセィムは、やさしくシァルの腰に腕をまわした。
「待たせたね。帰ろうか、シァル」
ここは伴侶っぽく、かっこよく!
がんばると、シァルがきゅんきゅん♡ してくれるらしい。
……ほんとかなあ……
いつもあんまり自信のないセィムなのだけれど、シァルがうっとり上気した頬で見つめてくれると、微塵に叩き潰されていたセィムの自信が、すこしずつ、すこしずつ、よみがえってゆく。
「はい、セィム」
きゅっと抱きついてくるシァルが可愛くてたまらないので、ふわふわの月の髪を、ちょっと背伸びして、なでなでする。
「いい子いい子」
ちゅ
まなじりに口づけたら
「ぅれしい」
ふうわり頬を朱くして笑うシァルが、とびきり可愛い。
「きゃ──あ──あ──!」
国務院で叫喚が沸き起こるのは、毎日だ。
こんなことでひるんでいては、シァルを可愛がれないので!
むんと胸を張ったセィムは、シァルの腰をやさしく抱いてうながして、国務院を出た。
外に出ると、腰を抱いていると歩きにくいので、手をつなぐ。
指をからめる、恋人つなぎだ。
「……セィム、だいすき」
ぎゅ、と指をからめてにぎってくれるシァルが、かわいすぎる……!
「だいすきだよ、シァル」
つながる指を、きゅ、と握って、国務院をシァルといっしょに出たら、すぐ近くに露店がたくさん広がる夕市でお買い物だ。
「今日の夜は、何を食べたい?」
聞いたセィムに、シァルは空の瞳を輝かせた。
「この間買った、鳥まん!」
「ああ、あれ。5000カイの」
味はちっともわからなかったが、価格と触感と食材は何となく覚えている。
たしか小麦の皮に、鳥のあんが包んであって、蒸してた?
皮は、もっちり、ふわっと、あんは、じゅわっと肉汁があふれてた、とおもう。
シァルが近すぎて、どきどきしすぎて、味がしなかった。よくおぼえてる。
今もどきどきするし、たまに味覚が吹っ飛ぶけれど、いっしょにご飯を楽しめるようになったことが、とてもうれしい。
「鳥まんを作るのか。なら、細かくひいた小麦の粉と、鳥と……たまねぎと、茸かな、あと野菜は何にしよう?」
「……うぅ、やさい……」
こんなにかっこいーシァルが、野菜が苦手だなんて、ちっちゃな子どもみたいで可愛すぎて、もだもだする。
「シァルは、いい子?」
ぴょこんと跳んだシァルが、こくりとうなずいた。
「た、たべ、る……!」
ちょっと涙目なシァルが、かわいすぎる──!
こんなに愛らしいシァルを前に、今日もセィムの鼻の血管は踏ん張っています。
えらい!
自分で自分をほめられるようになったよ、シァル!
────────────────
ずっと読んでくださって、ありがとうございます!
美香月さまのリクエストで、仕事(お迎え)後のお買い物デート、日常生活の様子です。
いちゃらぶあまあまな(笑)セィムとシァルのいつもの日を楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
今日のインスタは、ねこみみシァル動画ですー!(笑)@siro0088
インスタのアカウントをお持ちじゃない方のために、どなたでも見ることができるyoutubeも登録してみようと思うのですが(笑)そんなとこにまで進出するのかとびっくりですが(笑)まさかのyoutuber?(笑)でもせっかく作ったので(笑)気軽に見ていただけるようになったらいいなと思っています。
シァルとセィムのお話をずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!
1,162
あなたにおすすめの小説
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる