おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ

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おにいちゃん




「……ここ、が……帝王陛下の宮、ですか……?」

 キンキンギラギラ、張りぼてみたいな装飾で埋めつくされた部屋を想像していたのに、驚くほどそっけない建物だ。
 驚く俺に、ラザもヤヤもうなずいた。

「刺客──暗殺者が、わくからな」

 な、なるほど……!
 そうか、狙われやすい帝王陛下だからこそ、目立たない宮にお住まいなんだね……!

 しかく……そうか、四角じゃなくて、刺客か──!

 ……俺、さっき、めちゃくちゃ、あんぽんたんな回答しなかった?

『刺客か?』

『レイです』

 って、おいおいおい……!
 それは『生きもの』認定されちゃうね。
 言葉が通じない感じのね……! 

 は、はずかしい……!


「も、申しわけございません、ラザさま。その、わたくしは、物知らず、で……」

『あんぽんたんで、ごめんなさーいー』

 泣きたい目で見あげたら、ふうわり朱くなったラザが、俺の頭をかきまぜる。

「かわいい」

「……あ、ありがとう、ございま、す……?」

 そして、ふたたび、俺の頭は、もっしゃもっしゃに……!

「ラザさま、これから謁見では──」

 進言するヤヤに、ラザの瞳が輝いた。

「このまま行こう」

「……えぇ……!」


 ちょっと、いじわるなラザさまも、かっこよすぎて、こまる。

 頭がもっしゃもっしゃで、帝王陛下に謁見するのも、こまる。


 しかし、ラザさまに歯向かえそうな唯一の人物ヤヤが、にこにこして

「もっしゃもしゃも、愛らしくていらっしゃいますね。これはこれでよいのではないでしょうか」

 とか言いだしたから、おしまいだ!


『さっきは、ちょこっと、とかしてくれたのにぃい……!』

 泣きたい俺がヤヤを見あげたら、ぐりんと顔をラザの方に向けさせられた。


「そういう顔を、俺以外にするな」

 凍える声だ。


「? そういう顔……?
 涙目で見あげられるのが、ラザさまは苦手ですか? 以降、しないように気をつけます」

 そう、大切なのは『気をつけます』
 できないことも、あるっていう、かんぺきな回避の解答!


 ……だって、つい、涙目で見あげちゃうんだもん。

 いきなり、ちゅうしたり、『湯を一緒に浴びよう』とか言ったりするから──!


 ちょこっと、とがる唇に、さっとラザの頬に朱が走る。

「ちがう──! ……だ、だから、俺には、しても、いい」

 ふうわり朱いラザが、もごもごしてる。

「かわいい」

 唇からこぼれた言葉に、自分でびっくりした。

 ラザの目も、ヤヤの目も、まんまるだ。

 ──敬語、喪失──!
 帝王陛下の弟君に……! な、なななな、なにやってんの、俺──!

「も、ももも申しわけございません……!」

 胸に手をあて、膝を折る俺に、かるく手をあげたラザが、口元を手のひらで覆う。

「……いや、うん、あの、レイさま、愛らしい生きものに見えて、つよつよですね……」

 ヤヤさんが、しみじみしてる!

 そしてやはり、生きものな俺。

 耳まで真っ赤になったラザが、うずくまってる!




「どうぞ、こちらへ」

 うずくまるラザの背を、ぽんぽんしたヤヤが、白い扉を開けてくれる。

 装飾を削ぎ落とし、物の少ない白い部屋の彩りは、部屋の両脇に植えられた緑の樹々と花々だ。
 ほんとうに部屋の中なのか、天井を確認してしまった俺は、明かり取りの窓が天井に開いていることに、びっくりする。

 最奥の、玉座らしい白い椅子は、洗練された曲線をえがき、けれど質素だ。
 最小国レィゼの『節約のために仕方なく』ではない、あえて削ぎ落とした玉座だ。


 玉座で足を組むのは、ラザにそっくりな、炎の髪に陽の瞳の青年だった。






感想 10

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