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おにいちゃん
「……ここ、が……帝王陛下の宮、ですか……?」
キンキンギラギラ、張りぼてみたいな装飾で埋めつくされた部屋を想像していたのに、驚くほどそっけない建物だ。
驚く俺に、ラザもヤヤもうなずいた。
「刺客──暗殺者が、わくからな」
な、なるほど……!
そうか、狙われやすい帝王陛下だからこそ、目立たない宮にお住まいなんだね……!
しかく……そうか、四角じゃなくて、刺客か──!
……俺、さっき、めちゃくちゃ、あんぽんたんな回答しなかった?
『刺客か?』
『レイです』
って、おいおいおい……!
それは『生きもの』認定されちゃうね。
言葉が通じない感じのね……!
は、はずかしい……!
「も、申しわけございません、ラザさま。その、わたくしは、物知らず、で……」
『あんぽんたんで、ごめんなさーいー』
泣きたい目で見あげたら、ふうわり朱くなったラザが、俺の頭をかきまぜる。
「かわいい」
「……あ、ありがとう、ございま、す……?」
そして、ふたたび、俺の頭は、もっしゃもっしゃに……!
「ラザさま、これから謁見では──」
進言するヤヤに、ラザの瞳が輝いた。
「このまま行こう」
「……えぇ……!」
ちょっと、いじわるなラザさまも、かっこよすぎて、こまる。
頭がもっしゃもっしゃで、帝王陛下に謁見するのも、こまる。
しかし、ラザさまに歯向かえそうな唯一の人物ヤヤが、にこにこして
「もっしゃもしゃも、愛らしくていらっしゃいますね。これはこれでよいのではないでしょうか」
とか言いだしたから、おしまいだ!
『さっきは、ちょこっと、とかしてくれたのにぃい……!』
泣きたい俺がヤヤを見あげたら、ぐりんと顔をラザの方に向けさせられた。
「そういう顔を、俺以外にするな」
凍える声だ。
「? そういう顔……?
涙目で見あげられるのが、ラザさまは苦手ですか? 以降、しないように気をつけます」
そう、大切なのは『気をつけます』
できないことも、あるっていう、かんぺきな回避の解答!
……だって、つい、涙目で見あげちゃうんだもん。
いきなり、ちゅうしたり、『湯を一緒に浴びよう』とか言ったりするから──!
ちょこっと、とがる唇に、さっとラザの頬に朱が走る。
「ちがう──! ……だ、だから、俺には、しても、いい」
ふうわり朱いラザが、もごもごしてる。
「かわいい」
唇からこぼれた言葉に、自分でびっくりした。
ラザの目も、ヤヤの目も、まんまるだ。
──敬語、喪失──!
帝王陛下の弟君に……! な、なななな、なにやってんの、俺──!
「も、ももも申しわけございません……!」
胸に手をあて、膝を折る俺に、かるく手をあげたラザが、口元を手のひらで覆う。
「……いや、うん、あの、レイさま、愛らしい生きものに見えて、つよつよですね……」
ヤヤさんが、しみじみしてる!
そしてやはり、生きものな俺。
耳まで真っ赤になったラザが、うずくまってる!
「どうぞ、こちらへ」
うずくまるラザの背を、ぽんぽんしたヤヤが、白い扉を開けてくれる。
装飾を削ぎ落とし、物の少ない白い部屋の彩りは、部屋の両脇に植えられた緑の樹々と花々だ。
ほんとうに部屋の中なのか、天井を確認してしまった俺は、明かり取りの窓が天井に開いていることに、びっくりする。
最奥の、玉座らしい白い椅子は、洗練された曲線をえがき、けれど質素だ。
最小国レィゼの『節約のために仕方なく』ではない、あえて削ぎ落とした玉座だ。
玉座で足を組むのは、ラザにそっくりな、炎の髪に陽の瞳の青年だった。
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