おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
29 / 32

しっかり




 ヤヤさんが、ひきつっちゃうくらい、そんなにラザさま、こわいかな??
 俺には、やさしい気がするけれど……

 一緒にお風呂に入るのも、夜のおつとめも、しないでいいって言ってくれたよ。

 今は──!

 ……そう、今は、でした……

 あと2年……? 2年なの、俺……? 国……?

 いや、その前に『我慢がきかなくなる』とか、おそろしい言葉を言ってなかった……?

 ヤヤさんと一緒に、カタカタしちゃう!


「で、では、北の端の宮を、見てみましょうか。よさそうな宮があれば、どうぞ、おっしゃってください」

 気もちを切り替えるように微笑んだヤヤが、北の端の宮へと続く道を先に立って歩いてくれる。
 訳がわからなくなるほど、入り組んだ道を長々と歩くヤヤに、ちょっと疲れてきた俺は首をかしげた。

「……あ、あの、魔法の、ビカー! っていうのは、使わないんですか?」

「お使いになることができるのは、ラザさまだけです」

 言い切ったヤヤは、ちょっと眉をあげてから、にこりと笑う。

「失礼しました、陛下も、もちろん、お使いになれます」

 とってつけたよ!

 ……やっぱり、陛下、あやしいな~。

 やっぱり、身代わりなんじゃないかな~。

 ラザさまと、ヤヤさんに、にらまれて、胃が痛くなってそうだなー! 心配!


「思ったことは、口になさらないようにお願いします」

 ヤヤさんの目が、真剣だ。

 俺も国も飛んじゃう件ですね!

「了解です!」

 こぶしをにぎって、うなずいてみた。

 ヤヤさんの肩が、ぷるぷるしてる。

 あわてて、そっと、こぶしを仕舞った。


 こぶしの可愛い、おひめさまということで、お願いします……!

 ヤヤさんの肩が、ぷるぷるしてる。





 えぇえ……!
 こ、こんなに遠かったの……!?

 というくらい歩いて、よれよれしてきた俺。

 そう、春が夏になるくらい移動続きだったので、鍛錬が、あんまりできなかったのでした……
 いちおう剣の素振りとかは、してたんだけど、歩くとか走るとか、基礎体力をつけてなかった!

 宿の周りとか、走っておけばよかったね。
 ちょっと眠くて疲れてお尻が痛かったから、さぼっちゃった!

 よれよれする俺に、ヤヤさんが、やさしい目になってる。

 おお、ここは、ちょこっと、おひめさまっぽい……?
 おさぼり、大成功……?
 とか言ったら、ガチムチひめに、しかれらるね。ごめんなさい!

 ヤヤさんに引っ張られるように連れてきてもらって、ようやくたどりついた北の端の宮は、明るいところで見ても、ボッロボロでした!

 夜は、もう、めちゃくちゃ怖かったけど。
 昼は、そうでもないかなと思ったら、茂る森で日かげになってて、薄暗くて、ふしぎに冷たい風が吹きぬけたりして……!

「こ、こわい……!」

 ごめんなさい、朝でも、泣きそうです!


「よさそうな宮は、ございますか?」

 ヤヤさんが、にこにこしてる!

 ……え、もしかして、ヤヤさん、仕事のできる、誠実な、やさしい人、兼、いじわるさんなの……?

 きゃ──!

 そうっと俺は、唇を開いた。


「……あると思いますか……?」

「思いませんね」

 にっこり笑顔のヤヤさんが、こわい!





感想 16

あなたにおすすめの小説

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜

天気
BL
完結に向けて頑張ります 5月中旬頃完結予定です その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます

契約結婚だけど大好きです!

泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。 そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。 片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。 しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。 イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。 ...... 「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」  彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。 「すみません。僕はこれから用事があるので」  本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。  この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。 ※小説家になろうにも掲載しております ※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
 社交界での立ち回りが苦手で、夜会でも失敗ばかりの僕は、一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないんだと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の宰相様と婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、正式に婚約が発表される日を楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都からは遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていたのに、その後も貴族たちの争いに巻き込まれるし、何度も宰相様にも会うことになってしまう。何なんだ……僕はここが気に入っているし、のんびり暮らしたいだけなんです! 僕に構ってないで諦めてください! *残酷な描写があり、攻め(宰相)が受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! Instagram @yuruyu0 Youtube @BL小説動画 もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 皆の動画をつくりました! Instagram @yuruyu0 Youtube @BL小説動画 もしよかったら、プロフのwebサイトからどうぞです!