悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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闘えない

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 そうか、この世界には、いちご大福がないんだね。

 今度つくってあげたいなあ!

 わくわく手をにぎる僕の頭を、おじいちゃん魔導士が、ぽふぽふしてくれる。

 やさしい。


「魔素を集める修練ばかりでは、ちと退屈でしょうからのう。
 今日は治癒魔法について、お勉強しましょうか」

「わーい!
 ありがとうございます、先生!」

 うれしく跳んだ僕は、止まった。


「……おじいちゃんせんせーまで、僕をあまやかしていませんか……?」

 だいじなことに気づいたよ!


「いやいや、お勉強というのは、ひとつのことばかりするより、ちょっと目先を変えたり、新しい知識を得ると、はかどったりするものなのですぞ」

 おひげをしごきながら言われると、すんごく大切なことを言われている気がする!

 でもちょっと

「僕をあまやかしていませんか!」

 だいふくを、キリっとさせて突っこんでみました。

 おじいちゃんが、へにゃりと笑う。

「真っ赤になるまで、修練なさったのでしょう。
 ようがんばりましたのう」

 しわのお手々で、頭をなでなでしてくれました。


「おじいちゃん、だめ! 僕には、きびしく!」

 ちょっと涙目で、訴えてみました。

「……ぐぅ……」

 おじいちゃんにも、なにか刺さったようです……?


「おわかりになりましたか、魔導士さま。
 ゆりさまに厳しくあたることができる人は、あんのクソ王太子殿下しかいないことに」

 カイが、ドヤ顔だよ!
 かっこいー!

 そして今日も丁寧と、あんのと、クソと殿下が同居するカイ。

「なるほどのう」

 それをさらっと受けいれるおじいちゃん。

 え、もしかしてセゥス王太子殿下って、ほんとにそうなの……!?

 ……うぅーん?

 前の僕の記憶では、いつもやさしかったし、僕がいけないことを言ったりしたりすると、ちゃんと注意してくれた、いい人だったよ??


 首をひねる僕の頭を、おじいちゃん先生が、ぽふぽふしてくれる。

 ちょうどね、お手々が置きやすいところに、僕の頭があるみたいだよ。

 だいふくな僕は、ちっちゃいのです!

 ちっちゃい、よわよわ、つつくと、はじけるんだよ……!

 ……めちゃくちゃ悪役令息っぽいよね……


「あんまり魔素を集める修練ばかりでも、効率がよくありませんのでな。
 今日は魔法のお勉強をいたしましょう」

 やさしく微笑んでくれる、おじいちゃんまで、僕にあまくなってきた……!

 もしかして、これが悪役令息チートなの……!?

 皆で僕を、とろとろにあまやかしに──!?


 ……………………。

 ……それ、しあわせなのでは…………?

 あれ?

 僕、悪役令息のままでいいのでは……?


 ──ち、ちがうちがうちがう!

 断罪と極刑がキレっキレのダンスしながらやってくるから!



「聞いておられますかのー」

 おじいちゃんの白い眉がさがって、僕は、あわてて背を正した。

「ははははい! ごめんなさい!」

 キリっとしたお顔に戻してみたよ。

 僕の頭をなでなでしてくれた、おじいちゃんが、絵本を開きながら講義を再開してくれる。

「この世界には、炎、風、水、地、光、闇の6属性の魔法があることは、お伝えしましたのう。
 治癒魔法というのは、水と光の複合魔法ではないかと言われておりましてな、治癒魔法が使える人には、他の6属性の魔法は使えぬのです」

「……え! そ、そうなんですか!」

 ショック!

『ふぁいあーぼーる!』やってみたかった!

 でも確かに怪我を治してしまう治癒魔法がチートだから、さらにチートにならないように調整されているのかもしれないね。

 そっかあ、僕『うぉーたーふぉーる!』も『さんだーすとーむ!』も『うぃんどかったー!』もできないんだ。

 しょんぼりする僕の頭を、おじいちゃん魔導士が、なでなでしてくれる。

「……あまやかし……?」

 つっこんでみたよ。

「おお! あぶないあぶない」

 ただひとり僕にきびしい、おじいちゃん魔導士まで、あまあまになっちゃうなんて、BL小説の強制力は僕をよっぽど悪役令息にしたいみたいだよ。


 ふんだ!

 反抗するんだから!

 きゅ、とちっちゃな両手をにぎったら、後ろで見守ってくれているカイの耳が紅くなってる。かわいい。


「治癒魔法の大切なところは……まあ、すべての魔法に言えることですがの、想像することですのう。どんな魔法を使いたいのか、正確に、具体的に思いえがくと、魔素が応えてくれる。精霊さまが応えてくださることもありますのう。そうすると強大な魔法を使えるわけです」

 魔素の修練と、イメージが大切ってことだね。理解!

「あの、平民の男の子が、すごい治癒魔法を使うって聞いたんですけど……」

 気になっていたので、聞いてみました。

「あの方のは、他の治癒魔法士とは格が違いますの。手足の欠損をよみがえらせることができるのは、彼しか聞いたことがありませぬ。まあ、あの方と闘うのは無理ですじゃ」

 さすが主人公!
 すんごいチートがついてるみたいだよ。


「よって、王太子殿下の伴侶(予定)でなくなられたことも、仕方のないことで、気落ちすることはないのですぞ」

 ぽんぽん頭をなでなでしてくれるおじいちゃんが、やさしいです。











────────────────


 ずっと読んでくださって、ありがとうございます!

 表紙のユィリが、どーやっても、ちっちゃいです……!(笑)
 がんばったけど、無理でした!(笑)

 というわけで、これからもちっちゃいユィリをよろしくお願いしますー!(笑)

 お話にあわせて表紙が変わる仕様なので(笑)お話といっしょに楽しんでくださったら、とてもうれしいです。





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