悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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あまえた?

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 10倍のがんばり……!

 ちょ、ちょぴっと無理かもしれません……!

 衝撃でにじんでしまった涙を、こしこしこすった僕をかばうように、飛んできてくれたカイが腕を広げた。

「ゆりさまが、お泣きになられるなんて……!
 魔導士さま、あまりに厳しいおっしゃりよう、あんまりです……!」

 カイまで涙目だよ!

「あれほど、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも激甘でお願いしますと、申しあげたではないですかァアァ──!」

 くれぐれも、増えてる!

 全力で走ってきたロドお兄ちゃんの、おでこの血管が切れそうだよ!

「ゆりちゃん! つらいときは泣いてもいいんだ! なんてかわいそうに!」

 たくましい胸を泣くのに貸してくれようとするサザお兄ちゃんが、ロドお兄ちゃんに押しのけられてる。

「うん、その暑苦しい胸板をしまってくれ。見たくない」

 むきむきだよ。割れてるよ。すごいよ。
 ちなみに、おけけはないよ。つるつるだよ。さすがオンラインBL小説の世界だよ!

「な、なななななに……! 騎士団では、だ、大人気なのに……!」

 ちょっと泣いちゃいそうなサザお兄ちゃん、かっこよい胸板が大人気だそうです。


「本日の講義はこれまでになさってください。
 ゆりさまには、ご心痛を回復する時間がいるのです!」

 カイが、おじいちゃん魔導士を追い返そうとしてる!

 おじいちゃんが、白目をむきそうになってるよ!


「ちょこっと泣いちゃって、ごめんなさい。
 でもでも、僕、がんばります!」

 きゅ、と両手をにぎった僕は、ちょこっと首をかしげる。

「え、と、えと、2倍くらい……?」


 あまったれ悪役令息かな……?

 きゃ──?

 で、でも、がんばる、よ……! たぶん!





「ふにににに!」

 大福な顔を、さらに大福にして、あこがれの魔法が使えるように、僕はがんばるのです!

 魔素~♪

 魔素、魔素~♪

 おいで~~~♪♪♪


「ユィリおぼっちゃま、真っ赤ですよ! 休憩を!」

 飛んできてくれたカイが、泣きそうだよ!

 僕、いちご大福みたいになってる?
 おいしそう?

「魔素を集めてるんだよ」

 祈ってる?
 歌ってる?

 あつめてる!


 大気に満ちる魔素を感じるっていうのが、むつかしいな~。

 大気中の酸素を感じて! とか無理じゃない? そんな感じなんだよー。

 ……魔素って、どんなのかもよくわからないけど、いめーじ!


「ふにににに!」

「ゆりちゃん、しんじゃうから……!」

 ロドお兄ちゃんも、サザお兄ちゃんも、両親まで泣きだしたので、ちょこっと休憩です。


「ふにに……!」

「ゆりちゃぁあぁん……!」

 待って、がんばろうとすると、家族(カイ含む)が全力で止めに来るよ──!

 こ、これが僕を悪役令息にするための強制力なの!?


 12分がんばって、1時間休憩みたいになってきたよ。

 1時間がんばって、3時間休むより、休み時間が増えてる気がする……!


 で、でも、10分がんばって休憩、から12分がんばって休憩になったよ!

 いちご大福になるまで、がんばったよ!



「おお、ユィリおぼっちゃま、がんばられましたな。
 ちょこっと、ほんのちょこっとですが、上達いたしましたぞ!」

 おじいちゃん魔導士がほめてくれました。

 うれしい。
 やさしい。

 だいふくな、ほっぺも、ぽわぽわしちゃうよ。

 しかし、これで甘えていては、悪役令息に戻ってしまうのです!


「だめです、先生、きびしめで!」

「お、おお、そうでしたな、ロドア家の皆さんに、あてられてしもうてのう」

 悪役令息を生んだお家の影響力が、大変強い件について!


「魔導士さま、ゆりさまは、とても繊細で、とてもがんばりやさんな方で、厳しいご指導を受けると、ご自分を真っ赤になるほど追いこんでしまわれるのです。
 1週間もの昏睡を抜けたばかりの、病みあがりのゆりさまには、どうか、おやさしいご指導をたまわりたく、伏してお願いもうしあげます……!」

 めちゃくちゃかっこいーカイが、スライディングしちゃった……!

 あんぐりしたおじいちゃんの目が、遠くなってる。


「そ、そんなことしなくていいんだよ、カイ……!」

 あわあわカイを抱き起こした僕に、カイが涙目だ。


「しかし、ゆりさまは真っ赤になるまで修練を……!」

 僕はふるふる首をふった。

「いちごだいふくだよ。おいしいよ。だいじょうぶ」


 ?????

 おじいちゃんとカイの周りに ? が飛んでる。



 





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