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あまえた?
しおりを挟む10倍のがんばり……!
ちょ、ちょぴっと無理かもしれません……!
衝撃でにじんでしまった涙を、こしこしこすった僕をかばうように、飛んできてくれたカイが腕を広げた。
「ゆりさまが、お泣きになられるなんて……!
魔導士さま、あまりに厳しいおっしゃりよう、あんまりです……!」
カイまで涙目だよ!
「あれほど、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも、くれぐれも激甘でお願いしますと、申しあげたではないですかァアァ──!」
くれぐれも、増えてる!
全力で走ってきたロドお兄ちゃんの、おでこの血管が切れそうだよ!
「ゆりちゃん! つらいときは泣いてもいいんだ! なんてかわいそうに!」
たくましい胸を泣くのに貸してくれようとするサザお兄ちゃんが、ロドお兄ちゃんに押しのけられてる。
「うん、その暑苦しい胸板をしまってくれ。見たくない」
むきむきだよ。割れてるよ。すごいよ。
ちなみに、おけけはないよ。つるつるだよ。さすがオンラインBL小説の世界だよ!
「な、なななななに……! 騎士団では、だ、大人気なのに……!」
ちょっと泣いちゃいそうなサザお兄ちゃん、かっこよい胸板が大人気だそうです。
「本日の講義はこれまでになさってください。
ゆりさまには、ご心痛を回復する時間がいるのです!」
カイが、おじいちゃん魔導士を追い返そうとしてる!
おじいちゃんが、白目をむきそうになってるよ!
「ちょこっと泣いちゃって、ごめんなさい。
でもでも、僕、がんばります!」
きゅ、と両手をにぎった僕は、ちょこっと首をかしげる。
「え、と、えと、2倍くらい……?」
あまったれ悪役令息かな……?
きゃ──?
で、でも、がんばる、よ……! たぶん!
「ふにににに!」
大福な顔を、さらに大福にして、あこがれの魔法が使えるように、僕はがんばるのです!
魔素~♪
魔素、魔素~♪
おいで~~~♪♪♪
「ユィリおぼっちゃま、真っ赤ですよ! 休憩を!」
飛んできてくれたカイが、泣きそうだよ!
僕、いちご大福みたいになってる?
おいしそう?
「魔素を集めてるんだよ」
祈ってる?
歌ってる?
あつめてる!
大気に満ちる魔素を感じるっていうのが、むつかしいな~。
大気中の酸素を感じて! とか無理じゃない? そんな感じなんだよー。
……魔素って、どんなのかもよくわからないけど、いめーじ!
「ふにににに!」
「ゆりちゃん、しんじゃうから……!」
ロドお兄ちゃんも、サザお兄ちゃんも、両親まで泣きだしたので、ちょこっと休憩です。
「ふにに……!」
「ゆりちゃぁあぁん……!」
待って、がんばろうとすると、家族(カイ含む)が全力で止めに来るよ──!
こ、これが僕を悪役令息にするための強制力なの!?
12分がんばって、1時間休憩みたいになってきたよ。
1時間がんばって、3時間休むより、休み時間が増えてる気がする……!
で、でも、10分がんばって休憩、から12分がんばって休憩になったよ!
いちご大福になるまで、がんばったよ!
「おお、ユィリおぼっちゃま、がんばられましたな。
ちょこっと、ほんのちょこっとですが、上達いたしましたぞ!」
おじいちゃん魔導士がほめてくれました。
うれしい。
やさしい。
だいふくな、ほっぺも、ぽわぽわしちゃうよ。
しかし、これで甘えていては、悪役令息に戻ってしまうのです!
「だめです、先生、きびしめで!」
「お、おお、そうでしたな、ロドア家の皆さんに、あてられてしもうてのう」
悪役令息を生んだお家の影響力が、大変強い件について!
「魔導士さま、ゆりさまは、とても繊細で、とてもがんばりやさんな方で、厳しいご指導を受けると、ご自分を真っ赤になるほど追いこんでしまわれるのです。
1週間もの昏睡を抜けたばかりの、病みあがりのゆりさまには、どうか、おやさしいご指導をたまわりたく、伏してお願いもうしあげます……!」
めちゃくちゃかっこいーカイが、スライディングしちゃった……!
あんぐりしたおじいちゃんの目が、遠くなってる。
「そ、そんなことしなくていいんだよ、カイ……!」
あわあわカイを抱き起こした僕に、カイが涙目だ。
「しかし、ゆりさまは真っ赤になるまで修練を……!」
僕はふるふる首をふった。
「いちごだいふくだよ。おいしいよ。だいじょうぶ」
?????
おじいちゃんとカイの周りに ? が飛んでる。
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