悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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がんばるよ

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 じっと僕は筋肉さんを観察してみた。

 つやつやしてる──!

 もりもりしてる──!

 すごい!

 じゃなかった!


 ていねいに筋肉を……身体を見回してみたけれど、眠り王子には、セゥスさまやトトラみたいに、真っ暗なもやが見えたりしない。

 ただ、やすらかに眠っているように見える。

 呼吸も心音も脈も問題ないみたいだ。

 だからこの世界の医士も、どこがわるいのか、わからなかったのだろう。


 元第一王子の寝台のそばに座った僕は、そっとたくましい手をにぎる。

 目を閉じた僕は、僕の体の中にある魔力と、世界に満ちる魔素を混ぜて、ちいさなちいさな緑のひかりをつくってゆく。

 眠る王子の魔力を邪魔しないくらい、僕の魔力はちいさいから。

 きっと、そうっと、入りこめる。


 つないだ手から、そっと、そっと、魔力を流した。

 痛くないように。

 苦しくないように。

 のーすちゃんが、してくれたみたいに。


 僕のちいさな緑のひかりが、そうっと王子の指に入った。


 ぴくりと、無反応だった王子がふるえる。

「お兄ちゃん!?」

 声をあげたトトラを止めてくれたのは、カイだった。

「ユィリおぼっちゃまが大変集中なさっています。
 大変大変大変めずらしいことです。
 どうか、ゆりさまのお邪魔をなさらないでください」


 ………………。

 めずらしいに、大変が3回もついてたんだけど!

 気になって集中が途切れるんだけど──!

 助けてくれてるのか、邪魔してくれてるのか謎なカイ──!


 ちょっとしょんぼりしつつ、僕はふたたび意識を集中した。

 ちいさな、ちいさな緑のひかりを、王子の指先から、そうっと、そうっと、痛くないように気をつけながら、王子の身体を巡らせてゆく。

 王子の魔力を邪魔しないように。

 そっと、そっと、寄り添うように。


 目を閉じた僕の視界が、王子の身体の魔脈になる。

 きらきらする陽のひかり、あぁ、のーすちゃんと同じ、セゥスさまと同じ、光の魔力だ。

 ……13年そばにいた僕がいちばんよく知ってる、いちばん僕になじみの深い、光の魔力だ。


 ──いや、ここで、『炎とか地とか闇の魔力の方が、なじみ深いだろ』というつっこみは、聞こえないのです──!

 ほら、気もちね。
『炎や地や闇を知りたい!』っていう気もちと、『光の魔力を知りたい、そばにいたい』っていう気もちと比べると、わかってくれるよね……!

 ──うぅ、なんか自分で自分をえぐってる気がする……

 きゃ──!



「ゆーり、だいじょうぶか?
 病みあがりなんだ、無理するな」

 のーすちゃんの声に意識を取り戻した僕は、あわあわ魔力探索を再開する。


 外傷がないなら、身体の中の病気か、魔脈に問題があると思うんだよね。

 病気なら、真っ暗なもやが見えると思うんだけど、見えないから。

 魔脈に問題があるのかなって──


「あぅうぅう……」

 よわよわ悪役令息な僕の魔力が切れました……!


 え、本気で魔力がちょっぴりなんですけど……!

 魔力探索さえできないなんて……!

 しょんぼりする僕のお背なを、トトラが、ぽんぽんしてくれました。


「魔力が少なすぎてびっくりしたけど、がんばってくれてありがとう!
 お兄ちゃんも、きっと喜んでるよ!」

 トトラはやっぱり、真実を告げて、ちょっと僕をおこにしちゃう天才みたいです?



「僕ちょっと魔力が少ないみたいで、また回復した明日やってみてもいいかな?」

 ちょこっとおこになりながら聞いてみました。

「もちろんだよ、ありがとう!」

 トトラが両手で僕の手をにぎってくれました。

 わるぎは、ちっともないみたいです?



「魔力なら、わたくしが補充しましょう」

 カイが、とろけるように笑ってくれる。


「じゃあ、俺も」

 のーすちゃんが、やさしく肩を抱いてくれました。



 ただ単に魔力補充のためとは重々わかってるけど、それでも両手に花とか、おかしくない……??

 僕、ちっちゃいだいふくな悪役令息だよ?


 主人公は、向こうの可愛いアーシェくんです!














────────────────


 ずっと読んでくださって、ほんとうに、ありがとうございます!

 ちょっと肩が痛くなったので、無理はひかえめにと(笑)ずうっとストック0なユィリが1日1回更新になったのですが、みなさま、きんにくひめ、おすきですか??(笑)

 びっくりなことに、一瞬だと思うのですが24hポイント1位、だいふくユィリが!(笑)
 返り咲いたのは初めて?(笑)かもしれなくて、ユィリと皆といっしょに、めちゃくちゃうれしいです、ありがとうございます!

 お気に入り、いいね、エール、ご感想のおひとつおひとつが、応援してくださるお気もちが、とても、とてもうれしいです。

 心から、ありがとうございます!





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