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まもるきんにく
しおりを挟む血の気のひく僕に、トトラが胸をたたいた。
「だいじょうぶだよ、お兄ちゃんの、筋肉があれば──!」
「え、いや、きんにくはちょっと……」
むりじゃない?
ぽかんとする僕に、のーすちゃんが、首をふる。
「いや、いけるんじゃないか? ユィリの魔力は、ちっちゃいだろう。
高圧で高速だったとしても、おそらくラディが筋肉に蓄えた魔力に押し負ける」
「うぅん?」
首をかしげる僕に、セゥスが微笑んだ。
「ユィリが思いきりがんばっても、きっと、ラディは無事だよ」
頭をなでなでしてくれるセゥスが、やさしい。
「お兄ちゃんをたすけて、ユィリくん!」
トトラに両手をにぎられました。
「……さっき、ぷって笑ってた……」
じっとりしちゃう!
「ごめんごめんごめんごめんごめん! 謝るから、たすけて!」
必死なトトラに、僕は目を伏せた。
「で、でもあの、僕の見立てが間違ってて、全然意味のないことをしちゃうのかも……」
まっすぐな陽の瞳が、僕の目を見つめる。
「今まで診てくれた医士みんな『わからない』って言った。無理だって。原因不明、どうしていいかさえ、わからない。
ユィリくんだけだよ。かったいのがあるって言ってくれたの」
僕の手をにぎる、トトラの指が、ふるえてる。
「何かしようとしてくれるのは、ユィリくんだけだ」
「そ、それは、変なことしちゃったら、よけいに危険になっちゃうからだよ!
眠ってるだけなら、いつか起きるかもって、脈とか心音とか異常がないみたいだから、様子を見ましょうって、それはひどいことじゃないよ!」
あわあわする僕に、トトラはうなずく。
「最初はそれでよかった。でももうひと月だ。
いくらお兄ちゃんが、きんにくひめでも、もう限界だ」
「きんにくひめって言った!」
トトラは深くうなずいた。
「ユィリくん、おねがい。
お兄ちゃんを、たすけて」
涙のにじむ瞳で、僕の手を、両の手で、にぎってくれた。
「……ぜんぜん、何にもできなかったら、ごめんね」
ささやきは、ふるえてる。
「だいじょうぶ。皆、なんにもできなかったよ」
トトラの微笑みが、くしゃりとゆがむ。
「……僕、魔力の制御が、苦手なんだけど……でも、ラディさまと、トトラくんのために、僕、がんばってみる」
にぎりしめる、僕のちっちゃな手も、ふるえてる。
心配で、こわい。
僕が、よけいに症状を酷くしちゃうんじゃないかって。
うまくいかないんじゃないかって。
──でも、もし、僕に、何かできるなら。
悪役令息じゃなくなりたいとか、セゥスさまにふさわしい人になりたいとか、そういう自分の欲のためじゃなくて。
目覚められないラディのために。
ふるえるトトラの涙のために。
僕の力を、すべて、振りしぼろうと思うんだ。
「カイ、セゥスさま、僕が魔力枯渇になりそうになったら、補充して」
振りかえる僕に、カイとセゥスがうなずいて、のーすちゃんの眉がさがる。
「俺は!」
「のーすちゃんは、トトラくんより光魔法が使えるんだよね。ラディさまの、きんにくの補強……じゃなかった、ええと、魔脈の補強をお願い。
僕の魔力が、ラディさまの魔脈を突き破らないように」
「……やったことねえ」
眉をさげるノゥスに、うなずく。
「ラディさまに魔力を補給してあげて」
「わかっ──……」
うなずきかけたノゥスが停止する。
「……ちゅう、するのか……」
せつない目になってる──!
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