悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
102 / 214

まもるきんにく

しおりを挟む



 血の気のひく僕に、トトラが胸をたたいた。

「だいじょうぶだよ、お兄ちゃんの、筋肉があれば──!」

「え、いや、きんにくはちょっと……」

 むりじゃない?

 ぽかんとする僕に、のーすちゃんが、首をふる。

「いや、いけるんじゃないか? ユィリの魔力は、ちっちゃいだろう。
 高圧で高速だったとしても、おそらくラディが筋肉に蓄えた魔力に押し負ける」

「うぅん?」

 首をかしげる僕に、セゥスが微笑んだ。

「ユィリが思いきりがんばっても、きっと、ラディは無事だよ」

 頭をなでなでしてくれるセゥスが、やさしい。


「お兄ちゃんをたすけて、ユィリくん!」

 トトラに両手をにぎられました。


「……さっき、ぷって笑ってた……」

 じっとりしちゃう!


「ごめんごめんごめんごめんごめん! 謝るから、たすけて!」

 必死なトトラに、僕は目を伏せた。

「で、でもあの、僕の見立てが間違ってて、全然意味のないことをしちゃうのかも……」

 まっすぐな陽の瞳が、僕の目を見つめる。

「今まで診てくれた医士みんな『わからない』って言った。無理だって。原因不明、どうしていいかさえ、わからない。
 ユィリくんだけだよ。かったいのがあるって言ってくれたの」

 僕の手をにぎる、トトラの指が、ふるえてる。

「何かしようとしてくれるのは、ユィリくんだけだ」

「そ、それは、変なことしちゃったら、よけいに危険になっちゃうからだよ!
 眠ってるだけなら、いつか起きるかもって、脈とか心音とか異常がないみたいだから、様子を見ましょうって、それはひどいことじゃないよ!」

 あわあわする僕に、トトラはうなずく。

「最初はそれでよかった。でももうひと月だ。
 いくらお兄ちゃんが、きんにくひめでも、もう限界だ」

「きんにくひめって言った!」

 トトラは深くうなずいた。


「ユィリくん、おねがい。
 お兄ちゃんを、たすけて」

 涙のにじむ瞳で、僕の手を、両の手で、にぎってくれた。



「……ぜんぜん、何にもできなかったら、ごめんね」

 ささやきは、ふるえてる。


「だいじょうぶ。皆、なんにもできなかったよ」

 トトラの微笑みが、くしゃりとゆがむ。


「……僕、魔力の制御が、苦手なんだけど……でも、ラディさまと、トトラくんのために、僕、がんばってみる」

 にぎりしめる、僕のちっちゃな手も、ふるえてる。



 心配で、こわい。

 僕が、よけいに症状を酷くしちゃうんじゃないかって。

 うまくいかないんじゃないかって。


 ──でも、もし、僕に、何かできるなら。

 悪役令息じゃなくなりたいとか、セゥスさまにふさわしい人になりたいとか、そういう自分の欲のためじゃなくて。



 目覚められないラディのために。

 ふるえるトトラの涙のために。

 僕の力を、すべて、振りしぼろうと思うんだ。



「カイ、セゥスさま、僕が魔力枯渇になりそうになったら、補充して」

 振りかえる僕に、カイとセゥスがうなずいて、のーすちゃんの眉がさがる。

「俺は!」

「のーすちゃんは、トトラくんより光魔法が使えるんだよね。ラディさまの、きんにくの補強……じゃなかった、ええと、魔脈の補強をお願い。
 僕の魔力が、ラディさまの魔脈を突き破らないように」

「……やったことねえ」

 眉をさげるノゥスに、うなずく。


「ラディさまに魔力を補給してあげて」

「わかっ──……」

 うなずきかけたノゥスが停止する。


「……ちゅう、するのか……」

 せつない目になってる──!






しおりを挟む
感想 463

あなたにおすすめの小説

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

【本編完結】攻略対象その3の騎士団団長令息はヒロインが思うほど脳筋じゃない!

哀川ナオ
BL
第二王子のご学友として学園での護衛を任されてしまった騎士団団長令息侯爵家次男アルバート・ミケルセンは苦労が多い。 突撃してくるピンク頭の女子生徒。 来るもの拒まずで全ての女性を博愛する軽薄王子。 二人の世界に入り込んで授業をサボりまくる双子。 何を考えているのか分からないけれど暗躍してるっぽい王弟。 俺を癒してくれるのはロベルタだけだ! ……えっと、癒してくれるんだよな?

処理中です...