悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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拍手しちゃった

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 僕と皆を守るように前に出てくれたセゥスに、第一王配殿下セァナ・フォクトは唇をゆがめた。

「まったく帰ってこなくなったと思ったら、ずいぶんな口を利くようになったじゃないか、セゥス。
 そんな子に、しつけた覚えはないのだけれど」

 セゥスとよく似ているのに、セゥスと真逆な冷たい緑の瞳がセゥスを見おろした。

 一瞬、ふるえたセゥスは、こぶしをにぎる。


「私は……僕はもう、父上の人形じゃない」

 まっすぐセゥスは瞳をあげる。


「近衛衛士を連れて、第二王配殿下を先ぶれもなく訪なうことは攻撃とみなされます。
 我らには排除する権利がある」

 セゥスの声が凍てついた。

「お帰りください、第一王配殿下。
 公になればあなたの名誉が失墜するだけでない、罪に問われる」

 ふんとセァナは鼻を鳴らした。

「お前が帰って来ないから、迎えに来ただけだよ。攻撃の意図はない。口はちょっと滑ったがね」

 緑の瞳が、セゥスの後ろのノクさまを射る。
 誰より速くノクを背にかばうように動いたのは、セゥスだった。

「……最近のお前の行動には、いらだたされてばかりだよ。
 口だけで治癒魔法の使えない、もっちもっちの伴侶(予定)契約を破棄させようとしたら、散々抵抗して手がつけられなかった」

 ……抵抗、してくれたんだ。

 セゥスの手をにぎりたくなった僕は、あわててこらえる。
 うれしくて、こぼれそうな涙も、いっしょに我慢だ。


「仕方なく周りの貴族まで懐柔して圧力をかけ、陛下に指示されてようやく破棄したかと思ったら、抜け殻に。
 しばらくおとなしくしてたかと思ったら、ありえぬことをほざいて出奔」

 セァナの盛大なため息が、硬い空気を揺らした。

「ようやく帰って来たかと思ったら、家には寄りつかず、あいさつもなく、もっちもっちの家にいるんだからな。
 下位貴族のくせに、なんだあの家は。警備が厳重すぎるだろう!」

 おお、セゥスが、さらわれそうになってた?
 海くんとカイが防いでくれてた?
 すごい!

「ありがとう、海くん、カイ!」

 ぱちぱち拍手してしまった僕に、セァナ以外の皆が生あたたかい目になった。
 第一王配殿下は、激おこだ。


「お前のせいだぞ、もっちもっち!
 あるのかさえ疑わしい治癒魔法でセゥスの伴侶(予定)におさまり、卑しい根性でセゥスを幻惑し、せっかく契約を破棄させたのに、またお前のもとに戻るなんて──」

 セゥスが抜いた剣が、白い光の軌跡をえがいて、セァナを指した。


「それ以上、ユィリを侮辱するなら、あなたはもう僕の父じゃない。
 ──敵です」


 愕然と見開かれたセァナの瞳が揺れた。

 あわあわ僕は剣とセァナの間に入る。

「だ、だめだよ、セゥス! 剣はだめ!」

 セァナを背にかばう僕に息をのんだセゥスが、僕を傷つけないよう一瞬で剣を引く。

 振りかえると、見開かれたセァナの緑の瞳が僕を見た。
 ふんとノクさまが鼻を鳴らす。

「第一王配殿下ともあろうお方が、情報が遅すぎるのではありませんか?
 セゥスさまのお腹を治し、ラゼン王国第11王子トトラ殿下のお腹を治し、ラゼン王国の眠れるきんにくひめ……ラディ殿下を起こし、今クゥスを治してくれたのは、ユィリちゃんです──!」

 胸を張って第一王配に叫んでくれるノクさまが、やさしすぎる!

 でも!

「た、たいへんお気もちはうれしいのですが、あ、あの、くーちゃんは治してません……!」

 真実を告げないとね!






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