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拍手しちゃった
しおりを挟む僕と皆を守るように前に出てくれたセゥスに、第一王配殿下セァナ・フォクトは唇をゆがめた。
「まったく帰ってこなくなったと思ったら、ずいぶんな口を利くようになったじゃないか、セゥス。
そんな子に、しつけた覚えはないのだけれど」
セゥスとよく似ているのに、セゥスと真逆な冷たい緑の瞳がセゥスを見おろした。
一瞬、ふるえたセゥスは、こぶしをにぎる。
「私は……僕はもう、父上の人形じゃない」
まっすぐセゥスは瞳をあげる。
「近衛衛士を連れて、第二王配殿下を先ぶれもなく訪なうことは攻撃とみなされます。
我らには排除する権利がある」
セゥスの声が凍てついた。
「お帰りください、第一王配殿下。
公になればあなたの名誉が失墜するだけでない、罪に問われる」
ふんとセァナは鼻を鳴らした。
「お前が帰って来ないから、迎えに来ただけだよ。攻撃の意図はない。口はちょっと滑ったがね」
緑の瞳が、セゥスの後ろのノクさまを射る。
誰より速くノクを背にかばうように動いたのは、セゥスだった。
「……最近のお前の行動には、いらだたされてばかりだよ。
口だけで治癒魔法の使えない、もっちもっちの伴侶(予定)契約を破棄させようとしたら、散々抵抗して手がつけられなかった」
……抵抗、してくれたんだ。
セゥスの手をにぎりたくなった僕は、あわててこらえる。
うれしくて、こぼれそうな涙も、いっしょに我慢だ。
「仕方なく周りの貴族まで懐柔して圧力をかけ、陛下に指示されてようやく破棄したかと思ったら、抜け殻に。
しばらくおとなしくしてたかと思ったら、ありえぬことをほざいて出奔」
セァナの盛大なため息が、硬い空気を揺らした。
「ようやく帰って来たかと思ったら、家には寄りつかず、あいさつもなく、もっちもっちの家にいるんだからな。
下位貴族のくせに、なんだあの家は。警備が厳重すぎるだろう!」
おお、セゥスが、さらわれそうになってた?
海くんとカイが防いでくれてた?
すごい!
「ありがとう、海くん、カイ!」
ぱちぱち拍手してしまった僕に、セァナ以外の皆が生あたたかい目になった。
第一王配殿下は、激おこだ。
「お前のせいだぞ、もっちもっち!
あるのかさえ疑わしい治癒魔法でセゥスの伴侶(予定)におさまり、卑しい根性でセゥスを幻惑し、せっかく契約を破棄させたのに、またお前のもとに戻るなんて──」
セゥスが抜いた剣が、白い光の軌跡をえがいて、セァナを指した。
「それ以上、ユィリを侮辱するなら、あなたはもう僕の父じゃない。
──敵です」
愕然と見開かれたセァナの瞳が揺れた。
あわあわ僕は剣とセァナの間に入る。
「だ、だめだよ、セゥス! 剣はだめ!」
セァナを背にかばう僕に息をのんだセゥスが、僕を傷つけないよう一瞬で剣を引く。
振りかえると、見開かれたセァナの緑の瞳が僕を見た。
ふんとノクさまが鼻を鳴らす。
「第一王配殿下ともあろうお方が、情報が遅すぎるのではありませんか?
セゥスさまのお腹を治し、ラゼン王国第11王子トトラ殿下のお腹を治し、ラゼン王国の眠れるきんにくひめ……ラディ殿下を起こし、今クゥスを治してくれたのは、ユィリちゃんです──!」
胸を張って第一王配に叫んでくれるノクさまが、やさしすぎる!
でも!
「た、たいへんお気もちはうれしいのですが、あ、あの、くーちゃんは治してません……!」
真実を告げないとね!
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