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がんばりました
しおりを挟むくやしそうに、かなしそうに、ネヤは唇を開く。
「セゼァを助けてくれることには、礼を言いたいと思うよ。でも僕のセァナは、きみたちのために傷ついて──!」
セァナは首をふる。
「ノゥスとクゥスも、ノク殿も、傷つけたのは、僕です。……陛下のことも、傷つけた」
「あいつが元凶なんじゃないか──!」
ぷりぷりするネヤに、皆がうなずきかけて、止まる。
セァナは首をふった。
「自分の行動を選んだのは、自分だ。
僕は、ノゥスに、クゥスに、ノク殿に、心から、謝罪する」
胸に手をあて、膝を折るセァナに、ノゥスは首をふる。
「もう謝ってもらいました。その気もちを、うれしく思います」
微笑むノゥスを、膝を折るセァナを、衝撃を受けたように見つめたネヤが、ふるえる。
「……ぼ、僕は……僕、は……」
ぎゅっと唇を噛んだネヤが、うつむいた。
にぎりしめる拳も、ふるえてる。
「……ひどいことを言ったのは、ごめんなさい」
ちいさな、ちいさな、ふるえる声に、ノゥスがささやく。
「親父とクゥスにも、お願いできますか」
ぎゅうっと唇をかんだネヤは、うなずいた。
「わ、わかった」
でも、やっぱり、くやしそうな涙目のネヤに、それでも謝ろうとしてくれるネヤに、ノゥスが微笑む。
「なら、心おきなく、セゼァさまに俺の魔力を差しあげましょう」
見開かれたセゼァの瞳が、揺れる。
「……ありが、とう……」
ふるえるセゼァの肩に、ノゥスが微かに目をみはる。
「……セゼァさまは、鉄壁の超人なのかと思っていました。
ゆーりのおかげで、俺が誰かをたすける力となれることを、うれしく思います」
積年の、うらみも、くるしみも、かなしみも、溶かしたように、ノゥスが微笑む。
「……ほんとうに、すまなかった……!」
セゼァの瞳から、涙が落ちた。
「よく、がんばったね、のーすちゃん」
のーすちゃんの頭をなでなでした僕に、のーすちゃんの目がまるくなる。
くすぐったそうに、照れくさそうに、朱い頬で、のーすちゃんが笑う。
「……うん。……ゆーりの前だからさ、いいとこ見せないと」
僕の手のひらに頭を寄せるのーすちゃんを、なでなでした僕は、うつむくセゼァおばあちゃんの頭もなでなでした。
「……っ!」
弾かれたように顔をあげるセゼァの白髪の混じる髪を、やさしくなでる。
「よく、がんばりました。えらかったです」
愕然と目を見開いたセゼァが、耳まで紅に染まってゆく。
「あとは僕が、がんばりますからね」
どんと僕は胸を叩いた。
「セゼァおばあちゃんのためだけじゃない。ネヤおじいちゃんのために、セァナさまのために、セゥスのために。セゼァおばあちゃんを慕う皆のために、1000%で、がんばります」
拳をにぎった。
皆が見守れるように、白い天蓋が開かれる。
寝台に横になってくれたセゼァの手を、僕は両の手でにぎる。
まずは僕の魔力を流して、セゼァおばあちゃんの苦しいところにたどりつかないと。
「痛かったり、苦しかったりしたら、すぐ言ってください」
「あ、あぁ」
心配そうに、左に右にさまよったセゼァの瞳が、僕を映す。
「……その……ありがとぅ、もっちもっち」
ごつごつのセゼァおばあちゃんの手を、やさしくなでた僕は、微笑んだ。
「はやいです、セゼァおばあちゃん。元気になってから、言ってください」
僕は、胸を張る。
「ぜったい、元気になりますから」
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