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ぽん
あたたかな闇に、包まれる。
びゅーびゅー落ちていると思ったリトは、耳もしっぽも、びゃーびゃーしていないことに気づいて、首を傾げた。
ひゅ~~る~~~る~~~~る~~る~~~る~~~~る~~~~~~ぽん
着地した!
落ちるのが止まったぽいのに、激突の衝撃もない。
骨も折れてない。
打撲もしてない。
どこも痛くない。
「僕、生きて、ゆ?」
いやこれ、もしかしたら死後の世界かも!
ふるりと耳としっぽを震わせたリトに、低い声が降ってくる。
『あぁうぅアァア──!』
痛みと、嘆き、苦しみの声だ。
ぴょこんと跳ねあがったリトは、まだ引き摺る足で、駆けだした。
下も、上も、左も、右も、真っ暗だ。
地も、天も、何にもない。
なのに、リトの足は、ちゃんと大地を蹴るように、前に進む。
くるしい、かなしい声のほうへ、駆けてゆく。
「だ、だいじょぶ、でしか!」
大丈夫じゃないから泣いてるのに、声をかける時に、他に言葉が思いつかない!
「くるしぃ、のに、ごめなしぁ」
わたわた駆け寄ったリトは、真っ暗な闇に溶ける巨体を見あげた。
おおきい
リトがちっちゃいのもあると思うが、見あげると首が痛いほどおおきい。
真っ暗な身体には、闇色の鱗がきらめいていた。
長くのたうつ尾と、折りたたまれても巨大な翼が見える。
リトは、息をのむ。
「闇龍しゃま、でしか?」
閉じられていた闇の瞼が、開かれる。
縦長の瞳孔が、リトを見た。
「──っ!」
吹きつける強大な魔力に吹き飛びそうになったリトを、億劫そうに伸びた長い鉤爪が、ちょこんと摘んでくれた。
『ねえ、きみ、歯医者さん、知らない?』
「え?」
きょとんとするリトに、闇龍は巨体をよじらせた。
『人間がね、僕に、大人しくしててくださいって、お供え物持ってきてくれるんだよ。甘い果物とか、美味しいご飯とか、お菓子とか。うれしくてね、うまうましてたら、歯が痛いの!』
「あちゃー、虫歯でし!」
ものすんごく痛いよね!
眠れないよね!
今世のリトは獣人で歯が丈夫だし、歯磨きを欠かさないので大丈夫だが(ジゼの従僕が歯磨きしてないなんて、ありえない!!!)前世はかっぷらーめんにコバエが浮いてるような生活だったので、虫歯星人でした……
だってジゼに夢中でゲームして、お腹が減り過ぎたらカップラーメン作って、3分待ってる間に、ゲームが物凄くイイシーンになって
「はぅう──♡ ジゼしゃま──♡」
とかしてる間に、カップラーメンがのびて、知らない間にコバエが入ってるんだよ!
「……あ、歯磨き忘れた。──は! ジゼしゃまのイベントはじまた!」
みたいな生活だった。
前世と今世と言葉遣いが一緒とか、聞こえない。
ジゼしゃまの前では、人はこうなるのです!
虫歯星人も仕方ないことだと、納得してくださいお願いします。
歯医者さんで治してもらうときも、イィイイイ──! ってなるんだよ! 切ない!
涙目になったリトに、闇の瞳が瞬いた。
『きみ、僕の言葉、わかる、の?』
「あい! 僕、獣人でし」
リトの自慢の耳としっぽが、ぽふぽふ揺れる。
鳥さんや、獣さんの言葉もわかるんだよ!
昆虫さんは解らない。残念だ。
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