もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています

  *  ゆるゆ

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ぽん




 あたたかな闇に、包まれる。

 びゅーびゅー落ちていると思ったリトは、耳もしっぽも、びゃーびゃーしていないことに気づいて、首を傾げた。

 ひゅ~~る~~~る~~~~る~~る~~~る~~~~る~~~~~~ぽん

 着地した!

 落ちるのが止まったぽいのに、激突の衝撃もない。

 骨も折れてない。
 打撲もしてない。
 どこも痛くない。

「僕、生きて、ゆ?」

 いやこれ、もしかしたら死後の世界かも!

 ふるりと耳としっぽを震わせたリトに、低い声が降ってくる。

『あぁうぅアァア──!』

 痛みと、嘆き、苦しみの声だ。

 ぴょこんと跳ねあがったリトは、まだ引き摺る足で、駆けだした。

 下も、上も、左も、右も、真っ暗だ。
 地も、天も、何にもない。

 なのに、リトの足は、ちゃんと大地を蹴るように、前に進む。
 くるしい、かなしい声のほうへ、駆けてゆく。

「だ、だいじょぶ、でしか!」

 大丈夫じゃないから泣いてるのに、声をかける時に、他に言葉が思いつかない!

「くるしぃ、のに、ごめなしぁ」

 わたわた駆け寄ったリトは、真っ暗な闇に溶ける巨体を見あげた。

 おおきい

 リトがちっちゃいのもあると思うが、見あげると首が痛いほどおおきい。
 真っ暗な身体には、闇色の鱗がきらめいていた。
 長くのたうつ尾と、折りたたまれても巨大な翼が見える。

 リトは、息をのむ。

「闇龍しゃま、でしか?」

 閉じられていた闇の瞼が、開かれる。
 縦長の瞳孔が、リトを見た。

「──っ!」

 吹きつける強大な魔力に吹き飛びそうになったリトを、億劫そうに伸びた長い鉤爪が、ちょこんと摘んでくれた。

『ねえ、きみ、歯医者さん、知らない?』

「え?」

 きょとんとするリトに、闇龍は巨体をよじらせた。

『人間がね、僕に、大人しくしててくださいって、お供え物持ってきてくれるんだよ。甘い果物とか、美味しいご飯とか、お菓子とか。うれしくてね、うまうましてたら、歯が痛いの!』

「あちゃー、虫歯でし!」

 ものすんごく痛いよね!
 眠れないよね!

 今世のリトは獣人で歯が丈夫だし、歯磨きを欠かさないので大丈夫だが(ジゼの従僕が歯磨きしてないなんて、ありえない!!!)前世はかっぷらーめんにコバエが浮いてるような生活だったので、虫歯星人でした……

 だってジゼに夢中でゲームして、お腹が減り過ぎたらカップラーメン作って、3分待ってる間に、ゲームが物凄くイイシーンになって

「はぅう──♡ ジゼしゃま──♡」

 とかしてる間に、カップラーメンがのびて、知らない間にコバエが入ってるんだよ!

「……あ、歯磨き忘れた。──は! ジゼしゃまのイベントはじまた!」

 みたいな生活だった。
 前世と今世と言葉遣いが一緒とか、聞こえない。

 ジゼしゃまの前では、人はこうなるのです!

 虫歯星人も仕方ないことだと、納得してくださいお願いします。

 歯医者さんで治してもらうときも、イィイイイ──! ってなるんだよ! 切ない!

 涙目になったリトに、闇の瞳が瞬いた。

『きみ、僕の言葉、わかる、の?』

「あい! 僕、獣人でし」

 リトの自慢の耳としっぽが、ぽふぽふ揺れる。

 鳥さんや、獣さんの言葉もわかるんだよ!
 昆虫さんは解らない。残念だ。





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