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舞踏会編
前世の記憶
しおりを挟む決意のリトのぽふぽふしっぽとともに、治水ダムの視察が終わりました。
皆の顔が赤くて、お風邪じゃないのか、ちょっと心配です。
「宿にご案内するにはすこし早いお時間です。国境の街ゆえ、あまり見るところもないのですが、どこかご覧になりたいところはございますか?」
微笑んで聞いてくれるジゼが、完璧です!
ぱちぱち拍手するリトに、ジゼがほんのり朱くなって
「リトたん、身内に拍手するのは、身内しかいないところで……!」
透夜たんが、いさめてくれました。
さすが転生者、12歳と思えない突っこみです。
「ありあと、ござまし」
丁寧に透夜に頭をさげたリトは、ノィユとヴィル、ロダにも頭をさげる。
「失礼、しましあ」
「はぅあ……!」
真っ赤になったノィユがもだもだして、ヴィルとロダも赤くなってる。
心配でし。
「あ、あの、もしよかったら、市場を見たいです! どんな野菜やお肉や食べ物が売られてるのかなって」
ちっちゃな手を挙げるノィユに、ジゼがしゃっとルァル殿下に確認をとってくれて、街の夕市を案内することになりました。
「きゃ──! すごい! お野菜、いっぱい!」
「お肉もある!」
「わあ、串焼き! 何のお肉ですか!?」
「変わった香りー! 香辛料? なにこれ!」
はしゃぐノィユの熱量がすごい……!
「ノィユ、おちついて」
ひょいとノィユを抱きあげるヴィルが、大人です。
「ヴィル、すごいよ!」
「うん」
「あっち! あの屋台で何か売ってる!」
「うん」
ノィユの熱量は変わらず、ヴィル抱っこが加わっただけでした……
「とてもよい伴侶だな」
微笑むジゼの小指を、きゅ、とにぎってしまう。
「……ジゼしゃま……」
ふりかえってくれたジゼが、耳まで真紅だ。
「リトが、いちばんだから」
敵国の使者の前で、抱っこできないから。
ささやいて、ぎゅっと手をにぎってくれた。
夜が降る。
「ネメド王国との国境の街で、充分な設備のある宿をご用意できず、誠に申しわけないのですが、どうか本日だけはお許しいただけないでしょうか」
ジゼが案内した宿に、ネメド王国の皆も、よい子の隠密団の皆も、ぽかんと口を開けた。
「めちゃくちゃ立派です──! きゃ──!」
ノィユが踊ってくれました!
ロロァとよい子の隠密団の皆も、輪になって踊ってる!
かわいい! 混ざりたい!
しっぽ、ぽふぽふのリトに、ジゼが赤くなってる。
「まざる?」
やさしい瞳で笑ってくれる。
「い、いぃでしあ?」
「行っておいで」
「あい!」
リトも一緒になって、おどりました!
皆がめちゃくちゃ笑顔で、真っ赤なほっぺで歓迎してくれました。うれしい。
お風呂あがりのジゼさまは、つやつやだ。
うっとりとろけたリトは、丁寧にジゼの月の髪をタオルオフしてゆく。
「ジゼしゃま、きらきら、でし」
熱い頬で笑ったら、きょとんとしたジゼがリトの腰を抱きよせた。
「リトのほうが、ずっときらきらだ」
ふうわり紅いまなじりで、笑ってくれる。
ジゼが笑ってくれるたび、胸が熱くて、痛くて、くるしくて、指先まであまいしびれが駆けてゆく。
「ジゼしゃま」
ほんのり乾いた月の髪を、抱きしめる。
「……僕、前世の、記憶、あるの、でし」
押しだした声は、ふるえてた。
「ぜんせ?」
「この世界、生まれゆ、前の、記憶、でし。ちがう世界で、生きてた、記憶」
リトは、そっと息を吸う。
「ジゼしゃまは、前世の、BLゲームに、出てきた、攻略対象、で、アリアスしゃまと、結ばれる、人でしあ」
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