【完結】奪われて、愛でられて、愛してしまいました

  *  ゆるゆ

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ごはんにする? おふろにする?

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「ご飯にする? お風呂にする? あ、ちがう、医士だ! 足を火傷したの? 見てもいい?」

 くるくる変わる元気な表情のヒノを見ているだけで、楽しい。

 こくりとうなずいたレーシァは、足をあげる。


「うわ、水ぶくれができてる! 腫れてるし、痛そう。これは歩けないよな。かわいそうに。
 外を裸足で歩かされたの?」

 レーシァは首を振る。

「一歩だけ。歩こうとしたら、熱くて。
 ……あの、僕、太陽が苦手で、すぐ火傷みたいになるんだ」

 つむじからつま先までレーシァを見つめたヒノが、なるほど、と呟いた。


「そっか、色がないっていうのは可愛いだけじゃなくて、大変なこともあるんだな。
 すぐ医士を呼んでくる。この部屋から出たらだめだから、鍵を掛けることになってるんだ。閉じこめてるみたいで気分がわるいかもしれないけど……」

「平気」

「そっか、すぐ戻ってくるからな」

 小さな手を振ったヒノが駆けてゆく。

 ヒノが広やかな部屋を出たあとで、鍵のかかる金属の固い音がした。

 歩けないレーシァは、寝台のうえから、たまわった部屋を見回した。


 扉を入ってすぐのところに、円卓と椅子が置かれた食卓にも応接室にもなりそうな部屋があって、その奥にはちいさな泉をたたえた中庭がある。

 まぶしい陽射しを受けて咲く花は、レーシァの見たことのないあざやかな色と香りを振りまいた。

 中庭を囲うように部屋があり、最奥が寝室、レーシァのいる場所だ。右にはやわらかそうな長椅子と絨毯の部屋が、左には不浄や湯殿があるようだ。

 豪華すぎる牢獄に、ぽかんとしてしまう。

『化け物』蔑まれていた日々が戻ってくるのかと思ったら
『精霊の御子』かしずかれていた日々より恵まれた境遇になってしまったのかもしれない。


 出歩けないのはさみしいけれど、それも精霊の御子の日々とあまり変わらなかった。

 ヨアの王城に足を踏み入れたあと、出たことはなかったから。

 帝王陛下が『精霊の御子』に何の力もないと知れば、興味を失うのはすぐだろう。


 ……いや、もう既に知っているだろう。

 何の力もないレーシァを、かばってくれたのだから。



 あのままヨアの国にいれば、遠からずレーシァは殺された。

 生け贄として捧げられただろう。

 グァダナ帝国を止めるために。


 救ってくれたのは、ゼドだ。

 わかっているのに、メィスの伴侶になれなかったことを、さみしく思った。


 ……お怪我は、大事ないだろうか。

 ヨアの国は、王は、無くなってしまのうだろうか。



『化け物』虐げられていた日々より、ずっとやさしい、ずっと健やかな、ずっと恵まれた日々を贈ってくれたヨアの民の無事を、祈る。

 精霊の御子ではないけれど。

 何の力もないけれど。

 できるのは、祈ることだけだから。
 





 ヒノが医士を連れて戻ってきてくれたのは、すぐだった。

「お待たせしました、レーシァさま!」

『レーシァ』呼ばれるたび、くすぐったくて、うれしくて、ふわふわ頬が熱くなる。


「お手数をおかけし……ます」

 また謝りそうになったのを、あわてて止めた。


「これはこれは、白亜のひめがいらっしゃったとはのう」

 目じりにしわを刻んで、おばあちゃんな医士が笑ってくれる。


『ひめじゃないです。男です』

 絶対に言ったらだめなのだろうレーシァは、申しわけなくなりながら、そっと衣の前をかきあわせた。

 ちいさいけど、いちおうあるので、気づかれませんように……!







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