【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ

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おねがい

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 僕は顔をあげた。

 月の瞳でリィフェルが微笑んでくれる。

「果物をとりにゆこう。
 たべる、をしてみよう」

 食べたら僕は、汗と血と排泄と死の匂いがするようになるだろう。

 リィフェルが僕をきらわないようにしてくれるのは、きっと父親の覚悟があるからだ。

 汗と血と排泄と死の匂いのする人間なんて、精霊は大きらいだ。


 僕はリィフェルの手をにぎった。
 ちいさな指で、懸命ににぎった。

 首を振る。


「たべゆ、ぃや」

「でも食べないと、月の水ばかりではトェルが壊れてしまうかも……」

 口にするのもいやだというように唇を引き結ぶリィフェルの手をにぎる指に、力をこめる。

「みにゅ、くだしゃ」

「……トェル……」


 おとうさんに、きらわれるくらいなら、しねばいい。

 ──……あぁ、ちがう。

 こわれてしまうことより、しんでしまうことより、おとうさんに、きらわれてしまうことのほうが、こわい。


「……おねがぃ、ぉとーた」

 すがりつく僕を、リィフェルの腕が抱き寄せてくれる。


 あたたかな腕を、清冽なのにあまやかな香りを、やわらかな微笑みを、おとうさんを失ってしまうくらいなら、しんでいい。


 あふれる涙で見あげる僕に、おとうさんは困ったように眉をさげ、アライアは吐息した。

「……ちっちぇえのに、いっぱしなんだな」

 伸びた手が、真っ暗な髪をなでてくれる。

「帰るか、リィフェル」

「し、しかし、このままではトェルが──」

「精霊界にも果物はあるだろ。ノォナに頼めばちょこっと分けてくれるんじゃねえか? あれを食って、様子を見よう」

「でも母上は──」

 伸びたアライアの手が、リィフェルの頭をぽんぽんする。

「下界の果物を食わせて、トェルが排泄して、汗と血と死の匂いがするようになって、それにリィフェルがほんのちょっとでも反応したら。トェルの心が壊れるかもな」

 風に揺れる緑の草の向こうで、棒切れを振りかぶった人間が土を掘り起こしていた。
 ちいさな苗を掲げる人間が見える。
 ほがらかな笑い声が、遠く近く渡ってゆく。

「ほんとうは、トェルはここで暮らすはずだった。
 人間として汗をかき、排泄し、歌い、笑い、殺して食べ、その罪を負うように老いさらばえて死んでゆく。人間として生きる時をトェルは奪われ、殺された。
 救ったのは、リィフェルだ」

 アライアの手が、おとうさんの、僕の頭を掻きまぜる。

「リィフェルは、人間として死んだトェルを生かした。人間の身体には負担かもしれん。長生きできないかもしれん。
 でもなリィフェル、ほんとうならトェルはもう、死んでる」

「しかし──!」

「逆にさ、下界の果物は、月の水で育ったトェルの身体には毒かもしれねえぞ」

 アライアの言葉に、リィフェルが息をのむ。

「誰にも、月のきみにさえ確かなことなんて解らねえんだ。
 トェルが、いやだって言うなら、トェルが生きたいように生かしてやってもいいんじゃないか」

 わしゃわしゃ頭をなでてくれるアライアを見あげた僕は、アライアの指をつかまえる。

「あーりゃ、あーと」

「おうよ」

 ぐしゃぐしゃ僕の髪を掻きまぜたアライアが、照れくさそうなまなじりで笑ってくれた。

「……トェル」

 心配そうに目をのぞきこんでくれるリィフェルの指もつかまえる。

「みにゅ、おねが、おとーた」


「……だが私は……トェルに生きてほしい」


 まるで 哀願するような、切ない 響きの声だった。


 おとうさんが、僕が生きることを願ってくれる。

 泣いてしまいそうだから


「がんば、ゆ!」

 手を挙げて、笑った。












────────────────


 ずっと読んでくださって 、ありがとうございます!

 ほんとにふぁんたじーで(笑)異世界転生でも悪役令息でもないので(笑)読んでくださる方はいらっしゃらないかもしれないと思っていたので、 びっくりして、 とてもとてもうれしいです。

 ほんとうに、ありがとうございます!


  御礼の気持ちを、めいっぱいこめて、 トェルとリィフェルの動画を作ってみました(笑) 

 インスタ @siro0088 
 Youtube @BL小説動画 です!

 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。


  お気に入り、 いいね、 エール、 ご感想、 おひとつおひとつに、 応援してくださるお気持ちに、ずっと読んでくださる、あなたさまに、感謝の気持ちでいっぱいです。

  心から、 ありがとうございます!





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