きみの騎士

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わかったよ

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 リイを見つめた騎士が、破顔する。

「きみは、騎士になるのか」

「至光騎士戦で優勝する!」

 拳を掲げるリイに、老爺も青年も鼻白んだ。


「愚かな」

「世迷い言を」

 二人を鋭い目で制した騎士は、リイの目を覗き込んで頷いた。


「きみなら、きっとなれる」

 思わぬ言葉に、弾けるように笑ったリイは胸を叩く。


「ルフィスの騎士になるんだ!」

 誇り高く告げたリイに、ほんのりルフィスが赤くなって、老爺が吐き捨てる。


「穢らわしい平民が」

「ご温情で拾った命をドブに捨てることになるぞ」

 眉を顰める青年に、騎士は笑った。


「俺は、きみの命を助けたんだ。
 俺が止めに入らなければ、きみは首を掻き切られて死んでいた。
 解らなかったのか」

 告げられた青年が目を丸くして、ルフィスが息をのむ。
 老爺は闇の衣に包まれた頭を振った。


「戯れ言を」

 吐息した騎士が、リイを振り返る。


「平民が騎士になるということは、こういうことだ。
 身体だけじゃない、心が鋼じゃないと、やっていけない。
 貴族しかいない世界に行くんだ。
 その覚悟があるか」

 リイは目を瞬いた。
 繋がるルフィスの手を、ぎゅ、と握る。


「ルフィスの世界に行くんだ。
 俺が、ルフィスを守る!」

 ルフィスの震える指が、リイの手を握り返してくれる。



 ルフィスを、守りたい。

 ルフィスと一緒に生きたい。

 願う指は、こんなにも小さい。



 どんなにルフィスの傍にいたくても、ルフィスを守りたくても、リイはまだ子どもだ。

 騎士団と魔法使いの目を掻い潜って隣国にルフィスを逃がすことはできるかもしれないけれど、その後もずっとルフィスを守って、ルフィスを食べさせてゆけるかと問われると、自信はなかった。

 平民の自分の目を真っ直ぐ見てくれるおじちゃんなら、信じてもいいかもしれない。

 リイは太い眉の騎士を見あげる。


「俺が行くまで、おじちゃんに頼むよ。
 ルフィスを守ってください」

 頭をさげた。


「リイ……!」

 ちいさなルフィスを、抱きしめる。


「絶対、絶対、傍にいく。
 きっと、ルフィスを守るから。
 待ってて、くれる……?」

 ささやきに、涙のルフィスは頷いた。


「ずっと、ずっと、待ってる。
 リイが来てくれるのを。
 リイだけを。
 待ってる」



 ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれる腕が、あったかい。

 唇に、ルフィスの涙がふれる。

 しょっぱいのに、とろけるように甘い気がする。



 胸が、ぎゅうぎゅう苦しくて。

 息が、できなくて。

 ぎゅうぎゅうルフィスを抱きしめたくて。

 離れたくなくて。

 ずっと、ずっと、傍にいたくて。



 涙が、あふれる。




 ああ、これが、愛してる。






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