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10年前
しおりを挟む「王太子殿下の勅命書を持って、ルフィスを助けてくれた騎士が、俺が傍に行けるまでルフィスを守ると約束してくれました。
それを信じて今まで鍛錬に励み、光騎士となったのです」
かすかに息をのんだレイティアルトは、こつりとこめかみを叩いた。
「…………10年前……」
こつり、こつり。
レイティアルトがこめかみを叩く。
「リイ、俺は記憶力がとてもいい。
一度見たものは覚えるし、忘れない。
だが10年前に、ルフィスという者を助けた記憶は、俺にはない」
「………………え?
し、しかし、王太子殿下の勅命書を……」
うろたえるリイに、レイティアルトは首を振った。
「俺ではない。
属国の王太子か、他国の王太子ではないか」
レイティアルトの言葉に、ザインも頷いた。
「闇騎士という者は、レイサリア光国には存在しない」
茫然と、ザインと、レイティアルトを見あげる。
「…………ルフィスを、ご存知、ない…………?」
レイティアルトは、頷いた。
希望が、潰れた。
今にも溢れ落ちそうな涙を見かねたのか、ノゼが口を開く。
「王太子殿下に直に質問するという越権行為をお許しくださっただけでも、大変なことなのですよ。
レイサリア光国には属国が数多ございます。
そちらの王太子殿下ではあられますまいか。
貴族には隠し子がたくさんおりますからね。
根気よく探すとよろしかろう」
零れそうな涙を拭ったリイは、頷いた。
「……はい。
越権行為をお許しくださいましたこと、心より感謝いたします」
深く頭をさげたリイに、レイティアルトは手を挙げる。
「しかし、そなたの涙目は心を打つな」
楽し気に眉をあげるレイティアルトに、ノゼは仰け反りザインは笑った。
「お戯れを」
ザインの言葉に、ノゼがぶんぶん首を振る。
「いやいやいや!
レイティアルト殿下が興味を持たれるのは、素晴らしいことです!
この際男でも構いません!
そこのリイ! 涙目をよく磨き、より一層容姿に磨きを掛けるように!」
「…………は?」
涙目を磨くって、何??
茫然とするリイの後ろでレイティアルトが吹き出して笑って、ザインはぐしゃぐしゃリイの頭を掻き混ぜた。
「リイは我らが光騎士の期待の新人でございます。
レイティアルト殿下の毒牙に掛けるのは、光騎士を引退してからにお願い致します」
「光騎士より、レイティアルト殿下の愛人の方がよほど重要です!
王太子殿下でありながら、レイティアルト殿下は色恋に全くご興味がなくていらっしゃる。
これではこの先のレイサリア光国は……」
「レミリアがいるだろう」
妹ひめの名に、白熱していたノゼは頭を振った。
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