きみの騎士

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きみの傍

クグとメデュ

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 お茶とお菓子を持って魔道具研究室に行こうとしたら、クグに腰にタックルされた。

「リイ、ほんとにほんとにほんとにごめん!!
 まさかレイティアルトさまにガセネタ掴まされるなんて、機密院の名折れだ!」

 号泣するクグをぽふぽふして、丁度持っていたお菓子をあげる。

「最高機密を教えてくれたこと、感謝してる。
 ありがとう、クグ」

 微笑んだら、お菓子を握り締めたクグが更に号泣して、いつも開かずの間になっている魔道具研究室の扉が、バァン! 音をたてて開いた。

「どさくさで抱きつくな──!!」

 目を吊りあげて怒ったメデュが、リイの腰に抱きつくメデュをブン投げた。

「…………あれ、メデュ、もしかして強い?」

 首を傾げたら、いつも微笑んでくれるメデュの眉は吊りあがったまま、大変おこだ。
 一応魔道具研究室には入れてくれたけど、無言。圧が怖い。

「あ、あの、お菓子持って来たよ、メデュ!
 メデュのすきな、さくさくのパイだよ! 粉砂糖たっぷり!」

 お菓子の白い箱を振ってみたのに、メデュの頬は膨れたままだ。

「…………ひとりで、行くなと言った」

 拗ねたみたいに目を伏せるメデュに、リイは頭をさげる。

「……ごめんなさい。
 ずっと辛い目に遭ってきたメデュが俺のせいで処刑されるなんて、絶対だめだと思ったんだ。
 メデュの気持ちが、うれしくて。
 それだけで俺には、充分だった」

 メデュの桔梗の瞳が瞬いた。

「…………うれし、かった?」

「めちゃくちゃ!
 レイサリアで俺はメデュのことだけは、裏切ってない。
 そう思ったら、すごく俺の支えになってくれたよ。
 メデュにだけは、ほんとうを話せたから。
 ありがとう、メデュ」

 丁寧に頭をさげたら、ふわふわメデュの頬が紅くなる。

「…………う、うん」

 こくりと頷いたメデュは、白い箱に手を伸ばす。

「お菓子」

「いっぱい食べてね!」

 こくりと頷いたメデュは、両手でお菓子を持って、さくさくのパイを噛み締める。
 人形みたいに整ったかんばせが『ぱあ』と音をたてるように輝くだなんて、めちゃくちゃ可愛い。

 にこにこしながらお茶を淹れたリイは、微笑んだ。

「ルフィスに逢えたよ。
 やっとルフィスの騎士になれる。
 メデュがパソコンを完成させてくれたら、完璧だよ!」

 見開かれた桔梗の瞳が、止まる。

「…………え…………?」

 照れながらリイは微笑んだ。

「えへへ。
 あんなに落ち込んで悩んでたのが全部解決した!
 ルフィス、敵国の王子じゃなかった!」

 ぱちぱち拍手して笑うリイに、桔梗の瞳が遠くなる。

「…………そ、うか…………」

 ぽたりとメデュの手から、パイが落ちた。

「メデュ? どうかした?
 もしかしてパソコン、行き詰まってる?」

 しあわせいっぱいのリイを見つめたメデュの瞳が遠くなる。


「…………すべてのやる気が、今、消失した」

「えぇえ!?」

「パソコン、無理」

「えぇええええ────! そ、そこを何とか!
 お菓子いっぱい持ってくるから!」

 涙目のリイにちょっと紅くなったメデュは、拗ねたように唇を尖らせた。

「無理。
 やる気、なくなた。
 …………でも、リイが来てくれたら……ちょっと、出る、かも……?」

「わ、解った、厳選したお茶とお菓子を持って逢いにくるから、元気出してね!」

 拳を握るリイを見つめたメデュは、こくりと頷く。

「呪いの魔道具は、つくらないであげる」

「…………え、何の呪い?」

「内緒」

 ちいさく笑ったメデュの唇の端に粉砂糖がくっついていて、とても可愛かった。

 しかし完成しそうだったパソコンは、遠のいたみたいだよ──!






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