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ひろわれました
世界を白に染める、雪が降る。
ほろのない荷台をくっつけただけの馬車に乗せられた、ちいさな僕は、吹きつける冷たい風に、ぼろぼろの服をかき寄せた。
マァカ王国を、馬車でどれだけ走っただろう、見知らぬ辺境の街はずれの森の近くで、馬が止まる。
「ぽて、お前とは今日でお別れだ」
大きな手が伸びてきて、僕のえり首をつかんだ。
ブゥン──!
「……っ!」
雪のうえに投げ捨てられた僕は、父を見あげる。
「俺の子なのかも分からんお前を、せっかく3歳になるまで育ててやったのに」
冷たい冬の夜に、ため息が白く揺れた。
「まさか、たたき売りにしても、だーれも買ってくれねえなんてな。サイアクだ。お前を喰わせてやる金はねえ」
視界をふさぐ、雪が降る。
「殺すのは後味が悪いからな。今までいろいろ教えてやっただろ。
ひとりで生きろ。じゃあな」
手をあげた父が舌を鳴らす。進めの合図を受けた馬が駆けだした。
「おとうしゃん……!」
呼び声は、降りしきる雪に消えてゆく。
「お前の親父じゃねえよ」
背を向けたままのつぶやきが、最後の言葉だった。
「おとうしゃん……!」
真っ白な吹雪の向こうに消えてゆく馬車を追いかようと起きあがった足が、やわらかな雪に沈む。
ちいさな身体が、雪のなかに倒れた。
「……っ」
つべたい。
さむい。
こんなに、きれいなのに。
こんなに、かろやかに舞い降りるのに。
──僕の命を奪うのは、きっと、雪だ。
はいあがろうと、もがくのに、ちいさな手は雪をかくばかりだ。
ぼろぼろの服を覆うように、雪が降る。
泣くと殴られたし、うるさいと蹴られたし、楽しい思い出は、あんまりない。
それでも僕に寝床を与えてくれたのは、血がつながっていないのかもしれない、あの人だった。
「……お、とう、しゃん……」
たったひとりの、家族だった。
ちいさな手が、雪にうもれる。
きれいな雪に、ふわふわの雪に、吐息さえ、凍えてく。
唇からこぼれる息が、白くなくなってゆく。
……あぁ、ぼくのいのちが、終わって、ゆく……
「ど、どうしたの……?」
聞いたことがないほど、やさしい声がした。
低く、あまく、耳を揺らす声だ。
「こ、こんなところで、寝てたら、はかなくなっちゃうよ」
やさしく揺り起こしてくれる指が、僕の頬にふれる。
「つめたい……! こんなところで遊んだらだめだよ。お家は?」
僕の髪から、雪が落ちる。
ぼんやり目を明けた。
見あげたら、星が降るような夜の瞳だ。
さらさらの夜の髪に、白い雪が舞い降りる。
「……おとうしゃんに、すてられたの……」
声は、ふるえた。
息をのむ音が聞こえた。
「……僕と、いっしょだ」
ちいさな声が、頬にふれる。
「……おいで」
あたたかな腕が、抱きあげてくれる。
森の奥でひそやかに息づくような、やさしい香りに、くるまれる。
「僕はムニャ。きみは?」
ふしぎな名前の16歳くらいの少年を見あげる。
「ぽて」
夜空に星がきらめくような瞳が、輝いた。
雪に染まる夜の髪が、白い息に揺れる。
「いっしょに、生きよう」
つめたい僕を、抱いてくれた。
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はじめましての方も、他のお話を見てくださった方も、読んでくださって、ありがとうございます!
せつないのは最初だけの、ほのぼの、のんびり辺境しあわせ暮らしなお話になる予定です(笑)
ふたりの動画をつくりました!
インスタ@yuruyu0 絵もあがります
YouTube@BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
変わった名前がいいなあと思ったら、ぽてとムニャになりました(笑)
もしよかったら、ぽてと、むーちゃんのお話を楽しんでくださったら、とてもとてもうれしいです!
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