7 / 87
おかいもの
「むーちゃん、ありがとぅ」
ちいさなムニャの頭を、僕はちいさな指で、なでなでする。
むーちゃんの気もちは、とっても、うれしい。
でも僕は、むーちゃんをたすけられる、立派な大人になりたいのです……!
そのためには、まず第一歩!
朝ごはんの食材を、買いにゆくのです!
「おかいもの、ぃてみよー!」
ちっちゃな手をあげて、ちいさな家の大きな扉を開ける。
ギィイイイ
きしむ音とともに、ほこりが舞って、外へと踏みだした僕は、第一歩目で──
ズボォ──!
「はにゃ!」
雪に、うもれた。
ちいさく笑ったムニャが、雪のなかから僕を引っこ抜いてくれる。
「ぽて、へいき?」
ぷるぷる頭をふって、雪を払った僕は、こくんとうなずく。
「ぼく、つぉいこ、だから。なかなぃよ!」
笑ったら、僕の栗色の髪に、まぜまぜになった雪を、ムニャの長い指がやさしく払ってくれた。
「ぽては、すごいね」
「……っ!」
ムニャが笑ってくれるたび
ムニャがほめてくれるたび
僕の胸は、ぽわぽわあったかくなって、ほっぺが熱くなって、とくとく鼓動が駆けてゆくのです。
ちいさなあかぎれの手を、ムニャのなよやかな指とつなぐ。
「もう、ぼく、へぃきだよ。あゆく!」
むんと、雪の原に降り立った僕は
ズボォ──!
「ほにゃ!」
雪に、うもれた。
肩を揺らして笑ったムニャが、引っこ抜いてくれる。
「僕が、ぽてを抱っこしてゆくからね」
ひょいと僕を抱きあげてくれたムニャが、雪深い庭を掻きわけるように進んでくれる。
「むーちゃん、すごぃ!」
ぺちぺち拍手したら、赤い頬で笑ってくれた。
「……ほ、ほめて、もらえると、どきどきするね」
くすぐったそうに、うれしそうに、赤い耳でムニャが目をふせる。
さらさらの夜の髪が、ほんのり朱く染まるまなじりを彩った。
「ぼくも! おそろぃ、なの」
きゅう
抱きついたら、頭をなでてくれる。
ふわふわ、胸があったかくて。
ほわほわ、ほっぺが、ぬくぬくで。
とくとく駆ける鼓動が、教えてくれる。
きっと、これが、しあわせ。
ちょこっと歩くと
ズボォ──!
「ふにゃ!」
すぐに雪にうもれてしまう僕を抱きあげたムニャが、雪深くひと気のない道を街へと歩いてくれる。
「わあ!」
ムニャが滑って、ころびそうなときには
「ふに!」
すべりこんだ僕が、支えるのです!
「あ、ありがとう、ぽて。雪道は、あぶないね……!」
ふたりで、どきどきして、ふたりで、手をつないで、笑った。
やさしくて頼りになるムニャといっしょに、食材を買いにゆくのです!
街はずれの森の近くにあるのだろうムニャの家から、街の中央にあるのだろう鐘の塔が、ちいさく見えた。
塔を目指して歩くと、僕が住んでいた大きな街よりは小ぶりな、けれどたくさんの家やお店が立ち並ぶ街が見えてくる。
街の中央には鐘の塔があって、朝の鐘を鳴らしてくれる。
リーンゴーン リーンゴーン
僕が聞きなれた響きと違う、古びた低い鐘の音が、街の朝を揺らしてく。
街に入ると雪かきしてくれていて、ムニャの足も、僕の足も、ほっとしたようにゆるんだ。
「ぼく、あゆくよ!」
胸を叩いたら、微笑んだムニャが僕を下ろしてくれた。
鐘の塔を囲むように円形の広場がつくられていて、朝一番の、朝市が開かれている。
たくさんの露店が寒空に、色とりどりの天幕を広げていた。
「見てって!」
「とれたての野菜だよ!」
元気な呼び声が耳を打つ。
「とれたてだって。買ってみようか」
にこにこするムニャが、つやつやの緑のお野菜に手をのばすのを、ちっちゃな指で止める。
「だめ!」
「……え?」
きょとんとするムニャの奥で、お店のおじさんが『おいおい、せっかく買ってくれようとした客を、止めやがったな、3歳児!』みたいな、こわーいお顔になってる!
きゃ──!
あわあわ僕は、ムニャの衣のすそを引っぱった。
「むーちゃん、こっち」
ムニャの耳を抱き寄せて、ささやく。
「ぴかぴかの、おかね、こんなとこで、だしたら、こわいのが、きて、とられちゃう!」
ムニャの顔が青くなる。
「こっち!」
ちいさな指で、ムニャの手を引っぱった。
あなたにおすすめの小説
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜
天気
BL
完結に向けて頑張ります
5月中旬頃完結予定です
その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
別れたはずの元彼に口説かれています
水無月にいち
BL
高三の佐倉天は一歳下の松橋和馬に一目惚れをして告白をする。お世話をするという条件の元、付き合えることになった。
なにかと世話を焼いていたが、和馬と距離が縮まらないことに焦っている。
キスを強請った以降和馬とギクシャクしてしまい、別れを告げる。
だが別れたのに和馬は何度も会いに来てーー?
「やっぱりアレがだめだった?」
アレってなに?
別れてから始まる二人の物語。
追放されたオメガの食堂~嵐の夜に保護した銀狼の獣人王と幼いもふもふ孤児たちに手料理を振る舞ったら、溺愛されました~
水凪しおん
BL
名門貴族の生まれでありながら、オメガであることを理由に家族から見捨てられた青年・リオン。
彼は国境の森の奥深くで、身を隠すようにして小さな食堂を営んでいた。
ある嵐の夜。
激しい雨風に打たれながら食堂の扉を叩いたのは、大柄で威圧的な銀狼の獣人・ガレルと、彼に抱えられた幼い2人のもふもふ獣人の孤児たちだった。
警戒心も露わな子供たちと、不器用ながらも彼らを守ろうとするガレル。
リオンは彼らを食堂へ招き入れ、得意の温かい手料理を振る舞う。
「……うまい食事だった」
リオンの作る素朴で心温まる料理と、彼自身から漂う穏やかな匂いに、ガレルや子供たちは次第に心を開いていく。
誰からも必要とされないと思っていたリオンだったが、ガレルからの真っ直ぐな愛情と、子供たちからの無邪気な懐きによって、少しずつ自身の価値と居場所を見出していく。
美味しいご飯が紡ぐ、孤独だった青年と不器用な獣人王の、甘く温かいスローライフ・ラブストーリー。
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。