126 / 132
舞踏会編だよ!
本領発揮!
しおりを挟む「ジゼさま、帝宮まで敵国ネメド王国の使者殿を護衛する衛士の配備が完了しました」
白馬で駆けてきた、衛士の装束をまとう小柄な人に、透夜は目をむいた。
『BLゲームで攻略対象の帝太子ルァル殿下だ──! ちっちゃい──! 尊い──!』
一瞬、拝んでから、何も気づかなかったように微笑んだ。
常葉と柳だけが不審な目に、ヴィルは不思議そうな目になってる。
他の皆には見えなかったらしい。よき。
なるほど、衛士の装いで、衛士としてノィユとやヴィルやロダと話して、敵国のほんとうの意図をつかもうという計画だな。さすがルァル殿下。
BLゲームでも頭脳担当だった。
感心したけど、何にも気づかなかったふりで警護しようとしたら、リトたんに、くいくい、衣のすそを引っ張られた。
なんだこの、かわいい子──!
仰け反りながら聞いてみた。
「どしたの、リトたん」
「透夜たん、何か、知てる?」
リトたんの、ふわふわの耳に唇を寄せて、ささやいた。
「BLゲームマスターだから。俺、ルァル殿下推しだったから」
「なるほろ」
こくこくうなずくリトたんは、話が早い。
「え、もしかして、きらきらしてる護衛の人、攻略対象なの?」
ノィユも首を突っ込んできたよ!
しかし、ルァル帝太子殿下が衛士の装いでやってきたということは、おそらくノィユの素の態度、本性や考えを知りたいのだと思われる。
ここでばらしちゃうのは、よくないのかな?
よい子の隠密団の皆にお金をくれる、依頼主だしね。
「なぃしょ、でし!」
腰に手をあてて、しっぽをぶんぶんするリトが、かわいすぎて、つらい。
ノィユも胸を押さえてうずくまってる。
ルァル殿下が陣頭指揮を執るほど、帝都の警備は厳重だ。
敵国ネメド王国と交流ができると、今までネメド王国から輸入できなかったがために希少で高価になっている資源や産品が値崩れする。扱っている貴族や商家は既得権益や資産を失うことになる。
敵対しているほうが都合がいい輩は、どこにでもいる。軍需産業とかな。
そういうのが暗殺者を雇い、敵国の使者を殺した場合、おそらくネメド王国とドディア帝国は親善から開戦に舵を切る可能性さえ出てくる。
殺すなら、辺境ではなく、絶対に帝都だ。
残虐で数多の耳目を集められるほど、戦争の機運が高まるからだ。
そんなことが決して起こらないよう、よい子の隠密団は、戦の防波堤となるのです!
重大な警護を任されていたことに、ようやく気づいたよ。おそい。
いやほら、ヴィルがいると、だいじょうぶだろって、気が緩むよね。
言い訳だ! ごめん!
顔を引き締めた透夜に、ジゼが告げる。
「何かありそうになったら、問答無用で殺していい」
12歳とは思えぬジゼの冷徹に息をのむ。おそらく、それがルァル殿下の指示なのだろう。
透夜は微笑んだ。
「殺すのは下策です。黒幕を吐かせられない。証拠にもなれない。
よい子の隠密団が殺すしかないほど強いのは、ヴィル・ヴァデルザさまだけです。
が、油断はしません。生け捕りを」
目を見開いたジゼが笑う。
「では、お願いする」
「御意」
胸に手をあてた透夜は、よい子の隠密団の皆を振りかえる。
「ヴィルさまに比べたら弱すぎて放置でいいやと思ってたけど、ヴィルさまが規格外に強すぎるのを忘れてた。作戦変更。変な気配の全把握、少しでも不審な挙動が見えたら即、昏倒させて。
連行は帝都の衛士に任せよう。いいですよね、ジゼさま」
「勿論だ」
「では俺と常葉と柳が騎馬でノィユさまの馬車の警護、あとの皆は紅蓮が率いてくれ。散会!」
『了解!』とか言う癖が全くない、よい子の隠密団の皆が、一瞬で掻き消える。
ジゼもリトも、ノィユも、ルァル殿下も、ぽかんとしてた。
ロダおじいちゃんが
「さすがですな」
汗をぬぐってる。ヴィルはちょっと透夜を見た。
『もっと速いよな?』目が言ってる!
『お前も、もっと速いだろう!』目で言い返してみた。
「な、なんか、目と目で会話してるぅ!
ヴィル、浮気はだめなんだから──!」
ちっちゃなノィユが、でっかいヴィルのおひざに抱きついて、ヴィルの顔がとろけてる。かわいい。
そしてノィユのロロァさま化が進んでいる件について。
「と、とーやも、浮気は、め! だから!」
今日もわがきみは、最高にかわいいです。
437
あなたにおすすめの小説
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
出来損ないと虐げられ追放されたオメガですが、辺境で運命の番である最強竜騎士様にその身も心も溺愛され、聖女以上の力を開花させ幸せになります
水凪しおん
BL
虐げられ、全てを奪われた公爵家のオメガ・リアム。無実の罪で辺境に追放された彼を待っていたのは、絶望ではなく、王国最強と謳われるα「氷血の竜騎士」カイルとの運命の出会いだった。「お前は、俺の番だ」――無愛想な最強騎士の不器用で深い愛情に、凍てついた心は溶かされていく。一方、リアムを追放した王都は、偽りの聖女によって滅びの危機に瀕していた。真の浄化の力を巡る、勘違いと溺愛の異世界オメガバースBL。絶望の淵から始まる、世界で一番幸せな恋の物語。
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる