【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ

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舞踏会編だよ!

本領発揮!

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「ジゼさま、帝宮まで敵国ネメド王国の使者殿を護衛する衛士の配備が完了しました」

 白馬で駆けてきた、衛士の装束をまとう小柄な人に、透夜は目をむいた。


『BLゲームで攻略対象の帝太子ルァル殿下だ──! ちっちゃい──! 尊い──!』

 一瞬、拝んでから、何も気づかなかったように微笑んだ。

 常葉と柳だけが不審な目に、ヴィルは不思議そうな目になってる。
 他の皆には見えなかったらしい。よき。


 なるほど、衛士の装いで、衛士としてノィユとやヴィルやロダと話して、敵国のほんとうの意図をつかもうという計画だな。さすがルァル殿下。
 BLゲームでも頭脳担当だった。

 感心したけど、何にも気づかなかったふりで警護しようとしたら、リトたんに、くいくい、衣のすそを引っ張られた。

 なんだこの、かわいい子──!

 仰け反りながら聞いてみた。


「どしたの、リトたん」

「透夜たん、何か、知てる?」

 リトたんの、ふわふわの耳に唇を寄せて、ささやいた。


「BLゲームマスターだから。俺、ルァル殿下推しだったから」

「なるほろ」

 こくこくうなずくリトたんは、話が早い。


「え、もしかして、きらきらしてる護衛の人、攻略対象なの?」

 ノィユも首を突っ込んできたよ!


 しかし、ルァル帝太子殿下が衛士の装いでやってきたということは、おそらくノィユの素の態度、本性や考えを知りたいのだと思われる。

 ここでばらしちゃうのは、よくないのかな?

 よい子の隠密団の皆にお金をくれる、依頼主だしね。


「なぃしょ、でし!」

 腰に手をあてて、しっぽをぶんぶんするリトが、かわいすぎて、つらい。

 ノィユも胸を押さえてうずくまってる。





 ルァル殿下が陣頭指揮を執るほど、帝都の警備は厳重だ。

 敵国ネメド王国と交流ができると、今までネメド王国から輸入できなかったがために希少で高価になっている資源や産品が値崩れする。扱っている貴族や商家は既得権益や資産を失うことになる。

 敵対しているほうが都合がいい輩は、どこにでもいる。軍需産業とかな。

 そういうのが暗殺者を雇い、敵国の使者を殺した場合、おそらくネメド王国とドディア帝国は親善から開戦に舵を切る可能性さえ出てくる。

 殺すなら、辺境ではなく、絶対に帝都だ。
 残虐で数多の耳目を集められるほど、戦争の機運が高まるからだ。


 そんなことが決して起こらないよう、よい子の隠密団は、戦の防波堤となるのです!

 重大な警護を任されていたことに、ようやく気づいたよ。おそい。


 いやほら、ヴィルがいると、だいじょうぶだろって、気が緩むよね。
 言い訳だ! ごめん!


 顔を引き締めた透夜に、ジゼが告げる。

「何かありそうになったら、問答無用で殺していい」

 12歳とは思えぬジゼの冷徹に息をのむ。おそらく、それがルァル殿下の指示なのだろう。

 透夜は微笑んだ。


「殺すのは下策です。黒幕を吐かせられない。証拠にもなれない。
 よい子の隠密団が殺すしかないほど強いのは、ヴィル・ヴァデルザさまだけです。
 が、油断はしません。生け捕りを」

 目を見開いたジゼが笑う。

「では、お願いする」

「御意」

 胸に手をあてた透夜は、よい子の隠密団の皆を振りかえる。

「ヴィルさまに比べたら弱すぎて放置でいいやと思ってたけど、ヴィルさまが規格外に強すぎるのを忘れてた。作戦変更。変な気配の全把握、少しでも不審な挙動が見えたら即、昏倒させて。
 連行は帝都の衛士に任せよう。いいですよね、ジゼさま」

「勿論だ」

「では俺と常葉と柳が騎馬でノィユさまの馬車の警護、あとの皆は紅蓮が率いてくれ。散会!」

『了解!』とか言う癖が全くない、よい子の隠密団の皆が、一瞬で掻き消える。

 ジゼもリトも、ノィユも、ルァル殿下も、ぽかんとしてた。

 ロダおじいちゃんが

「さすがですな」

 汗をぬぐってる。ヴィルはちょっと透夜を見た。


『もっと速いよな?』目が言ってる!

『お前も、もっと速いだろう!』目で言い返してみた。


「な、なんか、目と目で会話してるぅ!
 ヴィル、浮気はだめなんだから──!」


 ちっちゃなノィユが、でっかいヴィルのおひざに抱きついて、ヴィルの顔がとろけてる。かわいい。


 そしてノィユのロロァさま化が進んでいる件について。


「と、とーやも、浮気は、め! だから!」


 今日もわがきみは、最高にかわいいです。







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