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よろこび
伴侶となったゲォルグとエィラが向かうのは、魔導院だ。
帝王陛下の勅令で、ゲォルグとエィラは伴侶契約を交わしてすぐ子どもをつくることになった。
魔力が安定した直後、18歳から20歳までが一番、子どもをつくりやすいという。
魔法で子どもができるから、腹で子を育てる期間もなく、母だけが身を裂くこともない。その代わり、両親ともに、時には命を削るほどの魔力消費が必要になる。
ゲォルグの強大な魔力をつつみこんで母となれるほど、エィラの魔力はすさまじいのだという。
倒れるだろうゲォルグに付き添うために、従僕のセバとソゾ、コゴはゲォルグとエィラ、ゲォルグの両親であるイルヤとジーグ、メナとともに魔導院を訪れた。
エィラにも両親と従僕たちが付き添っている。
「ゲオちゃん、がんばって」
涙の滲む瞳で、ゲォルグの手を両手で握るイルヤに、氷だったゲォルグのかんばせがほどけるように、ほころんだ。
「がんばる」
「……ゲオ……その……」
エィラとエィラの両親に遠慮するように、言いかけた言葉を唇の奥に押しこめるジーグに、ゲォルグは微笑んだ。
「次期ジェディス家当主としての役割を果たせるよう、尽力します。母上と父上がされたように」
胸に手をあてるゲォルグに、ジーグは目を伏せた。
「……俺たちは、恵まれすぎていた。……ゲオが次期ジェディス家当主としての役割を果たしてくれることを、ジェディス家当主として、喜ばしくおもう」
『母としては……』
ジーグの唇の奥で、言葉が消えてゆく。
「エィラ、がんばってね!」
「エィラなら、きっとできるよ!」
可愛らしいエィラの両親であることが納得できる、愛らしい男性と凛々しい男性がエィラを励ましていた。
喜びにあふれているのだろうエィラ一家に比べ、ジェディス家はどこか悲壮だ。
あからさますぎる自分のゲォルグへの執着に、皆が気を遣ってくださっているからなら、申しわけない。
「あ、あの……! がんばってください、ゲォルグさま! お子が無事おうまれになりますよう、心からお祈りしております!」
叫んでいた。
氷のようだったゲォルグが、瞬いた。
「……エィラとの子を……セバは……愛して……くれる、のか……?」
消えてしまいそうな、ちいさな声だった。
きょとんとしたセバは、笑う。
「当たり前です! わがきみのお子であられるのですから!」
久しぶりにセバは、心から、笑った。
ゲォルグの子をうんでくれるのが、唯一エィラであるなら、エィラには感謝しかない。
わがきみの子にも、お仕えできる。
セバにとっては、よろこびだ。
心からのセバの笑みに、ゲォルグは目を瞠った。
腕が、セバへとのばされて、エィラの姿に止まる。
「……ありが、とう……」
ちいさな、ちいさな声に、微笑んだ。
「ゲォルグさまのお子さまにお逢いできるのを、楽しみにしています。
どうか、ご無事で」
祈るように、こうべを垂れた。
ふたたびセバへとのばされた指が、止まる。
「……いってくる」
ゲォルグはエィラとともに、背を向けた。
見送ったセバは、胸に渦巻く熱い痛みと、沁みるようなしあわせに、目を閉じる。
あなたが与えてくれるなら
この身を裂く痛みさえも、よろこびなのです。
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