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おやすみなさい
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器に盛られた紫の薔薇に、拍手した。
持って来たイケメンの少年が紅くなって、うれしそうに笑ってくれる。
「紫かぶを甘酢漬けにしたものでございます」
薄く切られた蕪の花びらが、口にいれると甘酸っぱい酢の風味と軽やかな食感で、しゃくりと音をたてる。
「美味しい!」
「でしょ!?
僕が薔薇の形にしたんだよ」
赤い頬で菫が胸を張って、眉をしかめた麦は菫の肩を叩いた。
「おひめさまに褒めて戴いて『でしょ?』はねえだろ」
「む、麦に言われた!」
「な、どういう意味だよ!」
「はいはい、おひめさまの御前ですよ」
絢が笑うと、菫も麦もおとなしくなる。
「ご、ごめんなさい、おひめさま。
僕、うれしくて」
「私もうれしい。
美味しいご飯を、ありがとう」
菫の瞳を見つめて笑う。
真っ赤になった菫が、とろけるように笑ってくれた。
お皿、ひとつひとつが趣向を凝らしたもので、お皿を持ってきてくれるイケメンの皆さんはひとりひとりが違った趣のイケメンだった。
料理を楽しんでいるのか、イケメンを楽しんでいるのか解らない!
ひとつ、お膳を戴くたびに、ひとつ、明かりが増えてゆく。
部屋のなかに、雪の欄干に、錦鯉が跳ねる池に。
ひとつ、明かりが燈されるたび、闇が炎にやさしく溶けた。
真っ白な雪のうえで、蝋燭の火がちらちら揺れる。
冬の夜は澄み渡り、天には驚くほど数多の星が輝いた。
やさしい火が揺れる雪景色のなかで戴くお膳は、ちょっと顔が寒いけど涙が出るくらい美味しかった。
いつも自分の拙い料理、あまり向上する気のない料理ばかりを食べているので、尚更美味しい。
ひとつひとつのお皿はとてもちいさいのに、たくさんのイケメンの皆さんが運んでくれて、全部戴いたら、お腹ははちきれそうなほど膨らんだ。
「おなか、いっぱいです……!
めちゃくちゃ美味しかった!」
持ってきてくれた皆さんに頭をさげる。
「おひめさまが喜んでくださることが、我らのよろこびです。
アレルギー反応が起きないよう、寝室に寝台を運んでおきました。
寝具も枕もアレルギー対応のものですが、万一苦しくなった時はいつでもお呼びくださいね」
絢が内線の使い方を教えてくれる。
畳+布団だったり、そばがらの枕や羽毛布団だと喘息の発作が起きたりするので、気遣いはとてもありがたい。
口コミに、食事も寝具もアレルギー対応してくれる、安心して泊まれる宿だって書かなくちゃ!
「何から何まで、ほんとうにありがとうございます」
「おひめさまのためですから」
胸に手をあてて微笑んでくれる絢は、王子さまみたいだ。
「今日はお疲れでしょう、どうぞごゆっくりお休みくださいね」
微笑んだ絢の唇が、ふわりと額にふれる。
「よい夢を」
ふわふわの感触と、とろける微笑みに、発火した。
「……きゃあ!」
反応の遅い私に、麦が笑う。
「しっかり休めよ」
ちゅ、とやわらかな麦の唇が、おでこに触れた。
「…………え?」
…………は??
「おやすみなさい、おひめさま」
ちゅ、と菫のふわふわの唇が、おでこに触れる。
「えぇえええ――!」
耳まで燃えてぱたぱたする私に、イケメンの皆さんが声をたてて笑った。
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読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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