最愛の番になる話

屑籠

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 次の日、また目が覚めると啓生はいなかった。
 けど、起き上がれないぐらい体がだるい。
 なにこれ? と動き始めると、体が熱を持ったように熱くなる。
 はぁ、と吐き出した息すら暑くて、喉がからからと乾いていく。
 何とか起き上がって、俺はそっと寝室の扉を開いた。
 すると、大きく目を見開いた風都が俺を見た。

「お、はよ……」
「咲也様……っ、咲也様、お部屋の中へお戻りになられますよう」
「ど、して……っ」
「発情期です。啓生様も今日は早くおかえりになりますので、今しばらくお待ちください」
「でも、でも啓生さん居ない」
「あぁ、泣かないでください。私が啓生様に叱られてしまいます。啓生様は少しだけご用事を終わらせたらすぐに帰っていらっしゃいます。さぁ、ベッドにお戻りください」

 そういう風都は俺に触ってこないし、寝室にも入ってはこない。

「かざと、さん」
「はい、何でしょう」
「おみず」

 少し驚いた顔をした風都は畏まりました、と言ってすぐにペットボトルの水を渡してくれた。
 ちらっと風都を見るけど、さぁ、お戻りくださいと寝室の扉の前からどけてくれる気配は無い。
 そのまま、俺は扉を閉めてベッドに逆戻りした。
 ぼすん、と音を立ててベッドに座ると、風都に貰ったペットボトルの蓋を開けてあおる。
 けれど、どれだけ飲んでも喉の渇きが消えて行かない。
 諦めて、蓋を閉めてからぽいっとその辺に放り投げる。
 そのまま寝転がると、啓生の枕を抱きしめ、すこしだけほっとした。
 
 そのまま待っていると、啓生が帰ってきた。
 ぼんやりと見つめているけど、啓生は風呂に入ってきた後みたいだった。

「咲ちゃん、ただいま~。抑制剤は飲んだ?」
「ん……? おかえり、啓生さん」
「んー、ぼんやりしてるね。でも、まだまだだね」
 
 啓生が、何を言っているのか首を傾げてしまう。
 そんな啓生が近づいてきて、触れた瞬間、びくっと体がはねた。

「あ、ごめんね。んー、でもやっぱりそろそろだなぁ」
「はぁ……っ、そろ、そろ? なに、が?」
「本格的な、発情期がだね」
 
 かわいい、と啓生はそのまままた触れて来た。
 触れられた場所が熱を持つように熱くなる。
 むしろ、自分がすごく冷たいのではないかと錯覚するほどに。
 
「けーせーさん?」
「かわいい……理性飛んじゃいそうだなぁ。まだ、ほんの序盤なのに発情期って凄い」
「う、ん?」

 んー、どうしよう? と啓生は俺の頭を撫でてくるけど、その指が戸惑っているのを感じる。
 不安気に啓生を見ると、啓生は首を横に振った。

「ふふっ、心配しないで。咲ちゃんがまだ辛くないなら、僕が我慢すれば良いだけだもの」
「がまん? 何で?」
「何でって、そりゃこれから一週間、咲ちゃんとずぅっと一緒に居て、セックスして過ごすからだよ」
「……あけすけ」
「隠してもしょうがないでしょ?」

 それはそうか、とうなずく。けど、と撫でていた啓生の手を取った。

「べつに、がまん、しなくても」
「でも、辛くない? 多分、始めちゃったら止まれないし」
「いいよ、けいせいさんは、いいよ」
「咲ちゃん……」

 驚いた顔をしていた啓生は、途端ににっこりと笑いだした。
 あぁ、大好きだって言いながら啓生は俺を抱きしめて来た。

「咲ちゃん大好き、そして、ごめんね」
「は? ……んっ、ふ、ゃぁ……」
「もう、止まれないや」

 啓生の手が性急に動いてきた。キスをしてきて、その隙に。
 服をはぎ取られるように脱がされ、胸に手をかけられた。
 ふふっと笑っているのはいつもの啓生のようなのに、その性急さについて行けない。
 啓生はそれでもアルファなんだって気が付かされるようだ。
 でも、啓生が求めてくれるのはうれしくて、啓生が自分を傷つけることは無いって知っていて。

「んぁっ! ふ、ぅう……やだ、それ」

 ぎゅっと掴まれた乳首から、ぴりぴりと走る感覚が嫌で逃げを打つ。
 けど、啓生はそれすら笑っていた。

「痛かったかな? ごめんね。でも咲ちゃん、気持ちよさそうだよ?」

 そう言って、近づいてきた啓生の顔。
 何をするのか、と見ていたら、ちろちろと見え隠れする舌が、乳首を舐めた。
 その途端、びくり、と体が意思に反して跳ねる。

「ひぅっ」
「かわいい。僕の番は、本当にかわいい」
「やめて、いわな、いで……ぁあっ!」
 
 軽く触れるだけでも体が反応してしまうのに、意地悪く吸い付いてきたり、ひどい。
 俺の反応を楽しんでいるかのようで、余計に腹立たしい。
 ギッと睨むように啓生を見れば、啓生はいつものように、楽しそうに笑っている。
 
「ひどっ、けいせい、さんっ!」
「ごめんね。でも止められないや」
 
 さわさわと触れたり、かと思えばむぎゅっと掴まれたり、揉まれたり、その度にぞわぞわする刺激が体を走った。

「も、いぃから、ねぇ!」
「欲しくなっちゃった? 咲ちゃんの欲しがりさん」

 伸びて来た手は、しどしどに濡れた俺のモノを掴んだ。
 その途端に、俺は吐き出してしまう。
 目を見開いて、啓生の腕をつかんでしまった。
 ぎゅっと掴んだその手は、見た目とは違いがっしりとしていて筋肉質だった。
 
「んぁ、あぁあああっ!!」
「あっは、かわいい、ほんとうに、かわいくてどうにかなっちゃいそう」
 
 そう笑いながら、性急に後ろに手を這わせてくる啓生は、きっともう余裕が無いのだろう。
 キスをして、中の指に気を取られていたら、突然、右肩に痛みが走る。

「だめだよ、咲也。僕の事、ちゃんと見ないと」
「いっ、あぁ……っ、かま、ないでぇ……、みる、みるからぁ!」
「んっふふ、ずっと僕だけ見ていてね」

 ぐちゅぐちゅとローション何て垂らしていないはずなのに、音がする。
 戸惑うように啓生を見ると、啓生はあぁ、と笑う。
 どうして、啓生がそんな顔をするのか、分からない。

「知らなかったっけ? オメガはね、こうして自浄作用で濡れるんだよ」
「しらなっ、やだ、さわっちゃ」
「かわいっ、んふふ、そのお願いは聞いてあげられないかな。僕が我慢できないし」
 
 その指が、中で少し曲がった。俺は、驚いて中をぎゅっと締め付ける。
 その途端、俺は目を見開いた。

「はっ、アッ、アッ、な、なに?」
「僕が知ってる、咲也のイイところ。まぁ、いわゆる前立腺ってやつだねぇ」
「だめ、そこ、ダメ、ひっ、あぁうぁっ!」

 遠慮なしに、啓生はそこをこすりながら、中を広げていく。
 体を震わせて、逃げようとしても逃げられない。
 その熱が逃がしてくれない。啓生からの噛み痕だけが増えていく。
 これが、発情期。オメガ特有の。
 啓生だけが、この熱を冷ましてくれる。それを俺は知っている?

「あー、ごめん。ちょっと、もう無理かも」

 増えた指はすべて抜き取られた。
 呆然と見上げると、啓生と目が合う。目が合うなんて思ってなくて、俺は目を見開いた。
 その瞬間に啓生のモノが中に入ってきた。

「あ? ふぁっ、アッ」

 ゆっくりと入ってきているのに、上からぽたぽたと啓生の汗が落ちてくる。
 どれだけ我慢しているんだろう?
 そんなに俺は弱くないのに、大事にされていると思う。

「アァっ、けいせいさ、ん……っ」
「はぁー、むりむりむり。こんな時に僕の名前呼んでくれるとか、あぁー、壊しちゃそう」
「え……? ンァア!!」

 どちゅん、と奥まで啓生のモノが入ってくる。
 はっ、はっ、と体を反らせて、目を見開く。
 それから少しして、すぐに啓生は動き出した。
 その動きに声が止まらない。抑えようと思っても、それができない。
 首を振って快楽から逃げようとしても、押さえつけられ、逃げることも出来ない。
 俺が逃げるようなそぶりをすると、啓生は自分を見ろと言わんばかりに体のあちこちを噛んでくる。
 アルファだからか、犬歯の痕が鋭く残っていた。
 
「んくっ、あ、やば」
「え……? んあっ!? ひ、ぃあ……、な、に?」

 中の圧迫感が、突然増して、どういう状況なのか、分からなくなる。
 啓生を見ると、やっちゃった、と言うようにうなだれていた。
 
「ん、おなか、くるし……っ」
「ご、ごめんねぇ……ノットが出来ちゃった……」
「ノット?」
「んー、と、簡単に言うならちんこの根元に出来るこぶ?」
「……ぬいて」
「抜けないんだよ、ごめんね」
 
 ひどい、と逃げようとしても体が動かない。
 どくどくと中で出ている精液のせいで、お腹が張ってきている。
 すごく、啓生は我慢しているようで動かないように震えている。

「はぁー、アルファの本能って厄介だ、ね」
「……?」
「僕、今すごく動きたい。けど、咲ちゃんを壊したくないんだよぉ」
「も、いらない……いらないの」
 
 啓生の体を弱弱しくたたいても、何のダメージも入っていないみたいだ。

「あぁー、かわいい、かわいい、かわいい、うごかないでぇ、咲ちゃん。動きたくなっちゃうからぁ」

 とろけるような視線は変わらないのに、いつもの理性的な部分が徐々に欠落してきているように感じる。
 自分が発情期だから、当てられたのか分からないけど自分の思考も発情期で再び溶けていくのが分かって、考えることができたのはそこまでだった。
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