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クラーク氏とトーヤさんと別れ、俺たちはさらに会場内をゆきと春に連れられながら歩く。
意外とゆきも春も顔が広く、話しかけられるわけではないが、知り合いはたくさんいた。
「あーあ、来ちゃったよ……どうする?」
ゆきが気に入らない、と言うように顔を思いっきりしかめる。
春も、思いのほか表情が硬い。
気になり、そちらへと目を向ければ、アルファの集団が。
その中心には、小柄なオメガと思わしき青年がいる。
よくよく観察していれば、オメガの青年に、周りのアルファは惚れているようで、なんやかんやと世話を焼きたがっている様子で、彼はそれを甘受している。
周りの首輪付きのオメガの視線を考えれば、彼らは人気のアルファなのだろう。一人のオメガがまぁ彼らを虜にしていれば、それはそれで面白くはない輩が多くいることだろうな。
そんなことを考えていれば、ふと、花のような香りが、漂ってきた。
どこからだろうか?と辺りを見回すけれども、発信源はわからない。ただ、方向的に先ほどの集団の方から香ってきているのは気のせいではないだろう。
「いい匂いだな……」
「匂い……?」
春が、隣から訝しげな眼を俺に向けてくる。
とは言っても、なんとも言いにくい匂いだがいい匂いだ。
花の香。
「ゆき、フェロモン指数は?」
「え?あぁ……それほど、高くはないけど?」
時計のように見えるそれの画面を見て、ゆきは言う。
理解の及ばない会話に、少なからずため息が漏れる。
「あ、りっくん疲れた?疲れたなら休もうか?」
「いや、まぁ大丈夫だ」
「そう?なら、いいんだけど……」
いつもハッキリとしていたゆきの声が途中で消える。
ゆきの視線の先を見れば、紺野が先ほどの集団へと注意を促しているところだった。
騒ぎを聞いてやってきた紺野の腕に掴まり、ほっとした顔で彼を見上げる、たぶんオメガの男の子。
彼には、紺野もこのパーティで気を許しているらしい。
俺を助けるお人好しらしい紺野の気まぐれなんだろうか?でも、また、と会話を聞いているとわかる。
紺野が乞われ、場を治めるのは初めてのことではない。なら、何度も彼に?
と考えていれば、彼と紺野が収まった騒ぎにホッと顔を見合わせ笑う。その顔を見て、ゆきが俺の腕を強くつかんだ。
「あの子なんて、居なくなっちゃえばいいのに……」
その眼には、憎しみすら浮かんでいてハッとして反対側の春を見てから、ゆきの腕を掴んで場を離れた。
テラスまで来て、ゆきと向き合う。
「ゆき、ダメだ。あの子に何かをするのは、絶対に」
「りっくん……」
あの時の目で気が付く。いや、気が付かない方が可笑しい。
ゆきは、紺野が好きなのだろう。
だから、紺野と笑いあっていたあの子が憎いのだろう。
「あの子をどうにかした所で、紺野の気持ちは手に入らないことはお前も分かっているだろう?落ち着けよ」
ぼろぼろと泣き出すゆきを抱き締め、背中をあやす。
ふう、と息を吐き、今日は帰り辛いだろうからと俺の部屋に泊まるように言う。
ゆき達が住むあの部屋には、気が向けば紺野は来てしまう。ならば、俺の部屋のほうがゆきも安心して眠れるだろう。
少し無理を言って、笹川さんに連絡をとると、ゆきはぼろぼろだし、一緒に帰ることにした。
春も一緒に帰ることになったが、春は、少し考えた後、自分たちの部屋に戻るといった。
「じゃあ、よろしくな春」
「うん、笹川さんがいるから大丈夫だとは思うけど、りっくんたちも気を付けてね」
春は窓から顔を出していた俺の頭を撫でると振り返りもせずにマンションの中へ入っていった。
呆然としてそれを見送り、笹川さんに言われて、ハッとして頭をひっこめたのだった。
意外とゆきも春も顔が広く、話しかけられるわけではないが、知り合いはたくさんいた。
「あーあ、来ちゃったよ……どうする?」
ゆきが気に入らない、と言うように顔を思いっきりしかめる。
春も、思いのほか表情が硬い。
気になり、そちらへと目を向ければ、アルファの集団が。
その中心には、小柄なオメガと思わしき青年がいる。
よくよく観察していれば、オメガの青年に、周りのアルファは惚れているようで、なんやかんやと世話を焼きたがっている様子で、彼はそれを甘受している。
周りの首輪付きのオメガの視線を考えれば、彼らは人気のアルファなのだろう。一人のオメガがまぁ彼らを虜にしていれば、それはそれで面白くはない輩が多くいることだろうな。
そんなことを考えていれば、ふと、花のような香りが、漂ってきた。
どこからだろうか?と辺りを見回すけれども、発信源はわからない。ただ、方向的に先ほどの集団の方から香ってきているのは気のせいではないだろう。
「いい匂いだな……」
「匂い……?」
春が、隣から訝しげな眼を俺に向けてくる。
とは言っても、なんとも言いにくい匂いだがいい匂いだ。
花の香。
「ゆき、フェロモン指数は?」
「え?あぁ……それほど、高くはないけど?」
時計のように見えるそれの画面を見て、ゆきは言う。
理解の及ばない会話に、少なからずため息が漏れる。
「あ、りっくん疲れた?疲れたなら休もうか?」
「いや、まぁ大丈夫だ」
「そう?なら、いいんだけど……」
いつもハッキリとしていたゆきの声が途中で消える。
ゆきの視線の先を見れば、紺野が先ほどの集団へと注意を促しているところだった。
騒ぎを聞いてやってきた紺野の腕に掴まり、ほっとした顔で彼を見上げる、たぶんオメガの男の子。
彼には、紺野もこのパーティで気を許しているらしい。
俺を助けるお人好しらしい紺野の気まぐれなんだろうか?でも、また、と会話を聞いているとわかる。
紺野が乞われ、場を治めるのは初めてのことではない。なら、何度も彼に?
と考えていれば、彼と紺野が収まった騒ぎにホッと顔を見合わせ笑う。その顔を見て、ゆきが俺の腕を強くつかんだ。
「あの子なんて、居なくなっちゃえばいいのに……」
その眼には、憎しみすら浮かんでいてハッとして反対側の春を見てから、ゆきの腕を掴んで場を離れた。
テラスまで来て、ゆきと向き合う。
「ゆき、ダメだ。あの子に何かをするのは、絶対に」
「りっくん……」
あの時の目で気が付く。いや、気が付かない方が可笑しい。
ゆきは、紺野が好きなのだろう。
だから、紺野と笑いあっていたあの子が憎いのだろう。
「あの子をどうにかした所で、紺野の気持ちは手に入らないことはお前も分かっているだろう?落ち着けよ」
ぼろぼろと泣き出すゆきを抱き締め、背中をあやす。
ふう、と息を吐き、今日は帰り辛いだろうからと俺の部屋に泊まるように言う。
ゆき達が住むあの部屋には、気が向けば紺野は来てしまう。ならば、俺の部屋のほうがゆきも安心して眠れるだろう。
少し無理を言って、笹川さんに連絡をとると、ゆきはぼろぼろだし、一緒に帰ることにした。
春も一緒に帰ることになったが、春は、少し考えた後、自分たちの部屋に戻るといった。
「じゃあ、よろしくな春」
「うん、笹川さんがいるから大丈夫だとは思うけど、りっくんたちも気を付けてね」
春は窓から顔を出していた俺の頭を撫でると振り返りもせずにマンションの中へ入っていった。
呆然としてそれを見送り、笹川さんに言われて、ハッとして頭をひっこめたのだった。
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