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64. 灰かぶり姫の苦悩
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私は、逃げた。
とにかく、逃げた。
それでも執拗に、影は私を追いかけた。
ようやく自宅にたどり着いた途端、私は膝から崩れ落ちた。
魔法は、解けてしまった。
あの2人の家からここにたどり着くまで、生きた心地がしなかった。周囲からも変な奴だと思われただろう。でも、そんなこと気にならなかった。周囲の視線に構っている余裕など、私にはちっとも残っていなかった。
『俺は、中谷のことが好きだ。でも、皓人のことも、好きなんだ』
菊地さんの言葉を、必死に頭から追い出す。
『おれも、玄也のことが好き。でも、茉里ちゃんのことも好き。2人に、恋愛感情がある』
皓人さんの言葉を、必死に頭から振り払う。
『おれはさ、茉里ちゃんもおれたちと一緒なんじゃないかなって思ってるんだ』
「違う」
どんなに振り払おうとしても、皓人さんの言葉は執拗に私を追い回す。
『茉里ちゃんも、同時に複数の人を好きになる人なんじゃないかなって』
「違う」
『だってさ、茉里ちゃんは今、玄也のことが好きだけど、おれのことも好きでしょ?』
「違う!」
1人きりの玄関で、思わず大きな声を出してしまって我に返る。
視界の隅を、1つの箱がちらつく。……あの靴の入った箱が。
『じゃあなんでおれがあげた靴、まだ大事に持ってるの?』
皓人さんの言葉がよみがえったのと同時に、その箱を手に取り、投げ捨ててやろうと思った。けれども、なぜだかそれができない。
自分の情けなさに腹が立って、私は結局ただその場で涙を流した。
ある程度、気力が尽きたころになって私はようやくスニーカーの紐をほどいた。自分には大きすぎるスニーカーを履いて歩くのはなかなかに大変で、何度も転びそうになった。けれども不思議なもので、咄嗟に選んだこの黒いスニーカーは、紐さえしっかりと結んでいれば脱げてしまうことはなかった。
シンデレラも、ヒールじゃなくてスニーカーで舞踏会に行っていればよかったのに。どうせ、靴なんてドレスに隠れるんだし。
そんな場違いな考えが浮かぶ。
まあ、スニーカーを履いていたとしても、階段にピッチを塗られていたんじゃ、どちみち逃げられない、か。
『茉里ちゃんは本当に、おれたちの出会いが偶然だと思ってる?』
皓人さんの言葉を思い出して、背中がぞくっとした。
彩可が皓人さんについて話していたことは、あながち間違いではなかったのかもしれない。
ずるずると足を引きずりながら、部屋を進む。
私はいったいいつから、彼らの仕掛けた罠にはまってしまっていたのだろうか。
ペタン、と床に座り込みながら、呆然と考える。
皓人さんの言葉が本当だとすると、あの出会いよりも前から彼は私のことを知っていたということになる。おそらく、菊地さん経由なのだろう。
あの日は、私のパンプスのヒールが壊れてしまって、菊地さんに助けてもらった。その夜、仁科さんに誘われた合コンへ参加した。お店の前で偶然、転びかけたところを皓人さんに助けてもらった。それが、私と皓人さんの出会いだった。
でも、皓人さんはそれが偶然ではないと言った。
いったい、どこからが仕組まれていたんだろう?
皓人さんがあの場にいたのは、きっと偶然じゃないんだろう。でも、私が転びかけたのは偶然のはずだ。じゃあ、ヒールが壊れたのは?
あれは、偶然? それとも、仕組まれたこと?
……あの時の菊地さんの優しさも、仕組まれたものだったのだろうか?
菊地さんのことを考えると、胸がチリリと痛んだ。
皓人さんの言葉も衝撃的だったけれども、信頼していた菊地さんの裏切りは、心の大きな傷だった。入社した直後から、ずっと彼の優しさに救われてきた。なのに、それをどこまで信じたらよいのか。どこまでが本当でどこからが嘘なのか、もう分からない。
この家にはいたるところに菊地さんの痕跡があって、彼の存在を感じずにはいられない。会社でも、顔を合わせることになる。公私混同は良くないとわかっているけれども、こんな感情でどんな顔をして働けばよいのだろう?
唯一の救いは、明日は終日客先に出向く予定なので、顔を合わせる心配はなさそうなことだ。
はあ、と大きなため息を漏らす。
菊地さんと皓人さんが、恋人同士。
いったい、いつから?
高校生の頃から?
ただ2人が付き合っている、というだけの話なら受け入れられたと思う。けれども、2人と交際していた、ましてやそのうちの片方と現在進行形で交際している状況で2人の関係を受け入れるのは、難しい。
感情がごちゃごちゃしすぎていて、何をどう考えて捉えたらよいのか、さっぱり分からない。
頭の中にある断片的なイメージが、まるでパズルのようにはまっていく。
不意に、皓人さんのことを調べたときに見た、「mum.」のサイトを思い出した。どうしても気になって、衝動的に鞄からスマートフォンを取り出し、もう一度あのサイトを開く。
何度も見た、片手に花を持ち、もう片方の手の人差し指を唇の前にかざす彼の姿。この花は、菊の花だ。
その時、何故か直感が働いた。検索ボックスに「菊」と入力し、検索する。検索結果に表示された、菊の英語名に自然と目が留まった。「chrysanthemum」。省略形は、「mum」だ。
つまり、「mum.」は菊地さんに捧げるブランド、ということか。
ずっと目の前にあったはずの答えに、涙を通り越して笑いが漏れてしまった。なんだ、ずっと2人は一緒だったのか、と。あの2人は、私には想像もつかないほどの強い絆で結ばれているのか、と。
部屋に置いてある菊地さんのスーツやワイシャツのタグを見ても、すべてに「mum.」と刻まれている。部屋着などの類はそうではなかったが、デートなどできるジャケットやパンツにも「mum.」の文字が散見された。
気づかなかった。
2人のつながりになんて、ちっとも気付かなかった。
私は大バカ者だ。
皓人さんとの関係に悩んでいるとき、いつも抜群のタイミングで菊地さんは声をかけてくれた。それもすべて、皓人さんとつながっていたから。全部、全部、ぜーんぶ、はめられていたんだ。全部、罠だったんだ。
なぜだか、笑いと涙が同時に出た。
感情がグチャグチャで、ごちゃごちゃで。何をどう感じたらいいのかも、もうよく分からない。
こんな時にそばにいて話を聞いて欲しかった相手は、菊地さんだったんだけどな。すぐさま浮かぶ彼の顔と体温に、今度は自虐的な笑いがこぼれてしまった。
菊地さんは、一体どんな気持ちで私の隣にいたんだろう?
2人の間でほんろうされる私を見て、何を考えていたのだろうか?
いったい、何が楽しかったのだろうか?
共に過ごした日々を思い返しながら、たびたび彼がかけてきたブレーキを思い出す。そのまま関係が突き進みそうになる度に、菊地さんがかけてきたブレーキ。菊地さんも何か、葛藤していたのだろうか。
私に、真実を話すつもりはあったのだろうか。
昨日の、妙に不安げな菊地さんの表情が脳裏をよぎった。
本当は今日か、それかもう少し先のタイミングで、真実を明かすつもりだったんじゃないだろうか。そんな考えが浮かんでくる。
いきなり、2人の口づけを目撃させるのではなく。こんな強引な形で真実を押し付けるのではなく、段階を追って、時間をかけて話してくれるつもりだったんじゃないのか。
『こんな形で伝えるつもりじゃなかったんだ』
謝罪の言葉と共に、苦しそうな表情で菊地さんは言っていた。菊地さんはずっと動揺していて、皓人さんが私の靴を隠したと知った時にも、驚いていた。私があの部屋から逃げ出した時、きっと皓人さんが追ってこないようにしてくれたのも、菊地さんだ。
その優しさは、私の知る菊地さんの姿だ。
けれども、やはり裏切られたという事実が大きすぎて、これ以上彼のことを信じる気にはなれなかった。
とにかく、文字通り、胸が痛くて苦しい。
きっとこんな時、皓人さんなら突拍子もないことをして驚かせてくれるのだろう。驚いている間に、苦しいことや辛いことを忘れさせてくれる。予想がつかなくて振り回されるけれども、少なくとも嫌な気持ちは忘れさせてくれる。嫌なことを離させるでもなく、ただそばにいて、忘れさせてくれる。
それが、皓人さんだった。
『もう、選ばなくていいんだよ。おれたちのどっちかを、選ばなくていい』
あの言葉は、どういう意味だったのだろうか。
私が優柔不断すぎて、選ぶことができない人間だから、2人は私をターゲットに定めたのだろうか。
選ばなくていい。
これが食べ物か何かだったら、嬉しい言葉だったのかもしれない。けれども、この状況でそんなこと、可能なのだろうか。
『おれたちは、同時に複数の人に対して好意を抱くんだ』
そんな都合のいい話、あるわけがない。
そんな言葉を信じても、きっと騙されて、いいように利用されるだけだ。
『人の心にはさ、1人分のスペースしかないんだから』
いつだったかの、彩可の言葉が頭に浮かんだ。
そう、人の心には1人分のスペースしかない。
でも、菊地さんは私と皓人さんの2人を好きだと言った。
皓人さんも、私と菊地さんの2人を好きだと言った。
2人の心には、2人分のスペースがあるということなのだろうか?
『おれたちは、同時に複数の人に対して好意を抱くんだ』
そんなこと、ありえない。
ただ、遊ばれているだけだ。
2人は、私のことをもてあそんで楽しんでいるだけ。
頭の中ではそう分かっている。けれども、2人の言葉を否定することは、それぞれと共に過ごした日々を否定することになって。その現実を直視したくない自分が、心のどこかに存在していた。
とにかく、逃げた。
それでも執拗に、影は私を追いかけた。
ようやく自宅にたどり着いた途端、私は膝から崩れ落ちた。
魔法は、解けてしまった。
あの2人の家からここにたどり着くまで、生きた心地がしなかった。周囲からも変な奴だと思われただろう。でも、そんなこと気にならなかった。周囲の視線に構っている余裕など、私にはちっとも残っていなかった。
『俺は、中谷のことが好きだ。でも、皓人のことも、好きなんだ』
菊地さんの言葉を、必死に頭から追い出す。
『おれも、玄也のことが好き。でも、茉里ちゃんのことも好き。2人に、恋愛感情がある』
皓人さんの言葉を、必死に頭から振り払う。
『おれはさ、茉里ちゃんもおれたちと一緒なんじゃないかなって思ってるんだ』
「違う」
どんなに振り払おうとしても、皓人さんの言葉は執拗に私を追い回す。
『茉里ちゃんも、同時に複数の人を好きになる人なんじゃないかなって』
「違う」
『だってさ、茉里ちゃんは今、玄也のことが好きだけど、おれのことも好きでしょ?』
「違う!」
1人きりの玄関で、思わず大きな声を出してしまって我に返る。
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『じゃあなんでおれがあげた靴、まだ大事に持ってるの?』
皓人さんの言葉がよみがえったのと同時に、その箱を手に取り、投げ捨ててやろうと思った。けれども、なぜだかそれができない。
自分の情けなさに腹が立って、私は結局ただその場で涙を流した。
ある程度、気力が尽きたころになって私はようやくスニーカーの紐をほどいた。自分には大きすぎるスニーカーを履いて歩くのはなかなかに大変で、何度も転びそうになった。けれども不思議なもので、咄嗟に選んだこの黒いスニーカーは、紐さえしっかりと結んでいれば脱げてしまうことはなかった。
シンデレラも、ヒールじゃなくてスニーカーで舞踏会に行っていればよかったのに。どうせ、靴なんてドレスに隠れるんだし。
そんな場違いな考えが浮かぶ。
まあ、スニーカーを履いていたとしても、階段にピッチを塗られていたんじゃ、どちみち逃げられない、か。
『茉里ちゃんは本当に、おれたちの出会いが偶然だと思ってる?』
皓人さんの言葉を思い出して、背中がぞくっとした。
彩可が皓人さんについて話していたことは、あながち間違いではなかったのかもしれない。
ずるずると足を引きずりながら、部屋を進む。
私はいったいいつから、彼らの仕掛けた罠にはまってしまっていたのだろうか。
ペタン、と床に座り込みながら、呆然と考える。
皓人さんの言葉が本当だとすると、あの出会いよりも前から彼は私のことを知っていたということになる。おそらく、菊地さん経由なのだろう。
あの日は、私のパンプスのヒールが壊れてしまって、菊地さんに助けてもらった。その夜、仁科さんに誘われた合コンへ参加した。お店の前で偶然、転びかけたところを皓人さんに助けてもらった。それが、私と皓人さんの出会いだった。
でも、皓人さんはそれが偶然ではないと言った。
いったい、どこからが仕組まれていたんだろう?
皓人さんがあの場にいたのは、きっと偶然じゃないんだろう。でも、私が転びかけたのは偶然のはずだ。じゃあ、ヒールが壊れたのは?
あれは、偶然? それとも、仕組まれたこと?
……あの時の菊地さんの優しさも、仕組まれたものだったのだろうか?
菊地さんのことを考えると、胸がチリリと痛んだ。
皓人さんの言葉も衝撃的だったけれども、信頼していた菊地さんの裏切りは、心の大きな傷だった。入社した直後から、ずっと彼の優しさに救われてきた。なのに、それをどこまで信じたらよいのか。どこまでが本当でどこからが嘘なのか、もう分からない。
この家にはいたるところに菊地さんの痕跡があって、彼の存在を感じずにはいられない。会社でも、顔を合わせることになる。公私混同は良くないとわかっているけれども、こんな感情でどんな顔をして働けばよいのだろう?
唯一の救いは、明日は終日客先に出向く予定なので、顔を合わせる心配はなさそうなことだ。
はあ、と大きなため息を漏らす。
菊地さんと皓人さんが、恋人同士。
いったい、いつから?
高校生の頃から?
ただ2人が付き合っている、というだけの話なら受け入れられたと思う。けれども、2人と交際していた、ましてやそのうちの片方と現在進行形で交際している状況で2人の関係を受け入れるのは、難しい。
感情がごちゃごちゃしすぎていて、何をどう考えて捉えたらよいのか、さっぱり分からない。
頭の中にある断片的なイメージが、まるでパズルのようにはまっていく。
不意に、皓人さんのことを調べたときに見た、「mum.」のサイトを思い出した。どうしても気になって、衝動的に鞄からスマートフォンを取り出し、もう一度あのサイトを開く。
何度も見た、片手に花を持ち、もう片方の手の人差し指を唇の前にかざす彼の姿。この花は、菊の花だ。
その時、何故か直感が働いた。検索ボックスに「菊」と入力し、検索する。検索結果に表示された、菊の英語名に自然と目が留まった。「chrysanthemum」。省略形は、「mum」だ。
つまり、「mum.」は菊地さんに捧げるブランド、ということか。
ずっと目の前にあったはずの答えに、涙を通り越して笑いが漏れてしまった。なんだ、ずっと2人は一緒だったのか、と。あの2人は、私には想像もつかないほどの強い絆で結ばれているのか、と。
部屋に置いてある菊地さんのスーツやワイシャツのタグを見ても、すべてに「mum.」と刻まれている。部屋着などの類はそうではなかったが、デートなどできるジャケットやパンツにも「mum.」の文字が散見された。
気づかなかった。
2人のつながりになんて、ちっとも気付かなかった。
私は大バカ者だ。
皓人さんとの関係に悩んでいるとき、いつも抜群のタイミングで菊地さんは声をかけてくれた。それもすべて、皓人さんとつながっていたから。全部、全部、ぜーんぶ、はめられていたんだ。全部、罠だったんだ。
なぜだか、笑いと涙が同時に出た。
感情がグチャグチャで、ごちゃごちゃで。何をどう感じたらいいのかも、もうよく分からない。
こんな時にそばにいて話を聞いて欲しかった相手は、菊地さんだったんだけどな。すぐさま浮かぶ彼の顔と体温に、今度は自虐的な笑いがこぼれてしまった。
菊地さんは、一体どんな気持ちで私の隣にいたんだろう?
2人の間でほんろうされる私を見て、何を考えていたのだろうか?
いったい、何が楽しかったのだろうか?
共に過ごした日々を思い返しながら、たびたび彼がかけてきたブレーキを思い出す。そのまま関係が突き進みそうになる度に、菊地さんがかけてきたブレーキ。菊地さんも何か、葛藤していたのだろうか。
私に、真実を話すつもりはあったのだろうか。
昨日の、妙に不安げな菊地さんの表情が脳裏をよぎった。
本当は今日か、それかもう少し先のタイミングで、真実を明かすつもりだったんじゃないだろうか。そんな考えが浮かんでくる。
いきなり、2人の口づけを目撃させるのではなく。こんな強引な形で真実を押し付けるのではなく、段階を追って、時間をかけて話してくれるつもりだったんじゃないのか。
『こんな形で伝えるつもりじゃなかったんだ』
謝罪の言葉と共に、苦しそうな表情で菊地さんは言っていた。菊地さんはずっと動揺していて、皓人さんが私の靴を隠したと知った時にも、驚いていた。私があの部屋から逃げ出した時、きっと皓人さんが追ってこないようにしてくれたのも、菊地さんだ。
その優しさは、私の知る菊地さんの姿だ。
けれども、やはり裏切られたという事実が大きすぎて、これ以上彼のことを信じる気にはなれなかった。
とにかく、文字通り、胸が痛くて苦しい。
きっとこんな時、皓人さんなら突拍子もないことをして驚かせてくれるのだろう。驚いている間に、苦しいことや辛いことを忘れさせてくれる。予想がつかなくて振り回されるけれども、少なくとも嫌な気持ちは忘れさせてくれる。嫌なことを離させるでもなく、ただそばにいて、忘れさせてくれる。
それが、皓人さんだった。
『もう、選ばなくていいんだよ。おれたちのどっちかを、選ばなくていい』
あの言葉は、どういう意味だったのだろうか。
私が優柔不断すぎて、選ぶことができない人間だから、2人は私をターゲットに定めたのだろうか。
選ばなくていい。
これが食べ物か何かだったら、嬉しい言葉だったのかもしれない。けれども、この状況でそんなこと、可能なのだろうか。
『おれたちは、同時に複数の人に対して好意を抱くんだ』
そんな都合のいい話、あるわけがない。
そんな言葉を信じても、きっと騙されて、いいように利用されるだけだ。
『人の心にはさ、1人分のスペースしかないんだから』
いつだったかの、彩可の言葉が頭に浮かんだ。
そう、人の心には1人分のスペースしかない。
でも、菊地さんは私と皓人さんの2人を好きだと言った。
皓人さんも、私と菊地さんの2人を好きだと言った。
2人の心には、2人分のスペースがあるということなのだろうか?
『おれたちは、同時に複数の人に対して好意を抱くんだ』
そんなこと、ありえない。
ただ、遊ばれているだけだ。
2人は、私のことをもてあそんで楽しんでいるだけ。
頭の中ではそう分かっている。けれども、2人の言葉を否定することは、それぞれと共に過ごした日々を否定することになって。その現実を直視したくない自分が、心のどこかに存在していた。
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