魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.3 出会いと別れのセブンロード

9話 怒りの根源

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 目が覚める。
 ぼんやりと薄れていた意識が、白く染まっていた視界とともに回帰する。

 眠っていた訳では無いはずなのに、まるでずっと眠っていたかのような感覚。
 すぐそこに現実はあったはずなのに、長い夢でも見ていたかのような感覚。

 だがあれは、夢ではなかったと信じている。信じることが出来る。
 なぜなら僕の胸の奥に、今まで無かったはずの新たな力が芽生えているのが分かるから。
 あの神々しい何かに授けられた力が、確かにそこに存在するのを感じているから。

「――僕は、ここに戻ってきた」

「……あぁ? なんだ、まだ意識があったのかな?」

 僕の呟きに応えるかのように、その男は言った。

 意識はなかった。
『俺』がどうかは知らないが、『僕』は確実にここにはいなかった。

「だから、戻ってきたんですよ。僕は。あなたに、断罪の刃を下すために……!」

 僕は振り返る。
 目を瞑ったまま、あの忌まわしき男を見ぬように。

 使えもしない剣を抜き、確かにそこにいるであろう男にその切先を向ける。

「ねぇ、その状態で戦うつもりなの? なーんにも見えないと思うんだけど?」

「確かに見えません。でも、視えてますから」

 腹が立つ。虫唾が走る。
 男のおどけた言動に、脳裏に焼き付いたあの胡散臭い笑みに、怒りが募って仕方がない。

 だから僕は、その憤怒を剣に込める。
 その怒りを爆発させないように。最後の引き金となる男自身の姿を認識しないように。

 僕は握りしめた剣を振りかざし、男の左腕に切りかかる。

「あのさぁ、そんなに短絡的な攻撃じゃあ当たらないよ? 手が込んでても当たらないけど……!?」

 逸れてしまうはずの剣先が、男の着ている衣服を掠めた。
 服が裂けるような音が、微かに鳴り響く。

「なんで、なんでだよ? なんでぇ! 俺に攻撃が当た、当たるんだよ!」

「さあ、なんででしょうね?」

 振り下ろし、自らの足元に向いている剣を、次に男の胸を狙い振り上げる。
 またもや命中。次は衣服が裂けるだけでなく、確かに肉が切れた感触があった。
 血と思わしき液体が、僕の顔に飛び散る。

「い、っああぁあ!」

「人を切るってことは、こんなにも残酷で痛ましい事なんですね。まぁ、そんなことはこれからも感じることはないでしょうが」

 口元に付着した血を服の袖で拭い、右手に握った長剣を腰の鞘に納める。
 するとそれはすぐに形を失い、触れることの出来ないまやかしとなり、魔法のように消えてしまった。

「なんて言って、実際魔法なんですけどね」

「な、にぃをぉ……!」

 真正面、僕が魔法で切りつけたであろう男が、胸元を押さえながら呻き声をあげている。

 そんなに深く切りつけた覚えは無かったのだが、もしや夥しい量の出血をしており、既に死にかけの虫の息なのでは?
 これはすぐさま確認しなければ――

「……なんて思うところまでもが想定済みですか。本当に、腹立たしい」

「――――」

 男の有様をこの目で確認することもなく、僕は振り返り瞼を開く。
 リアルな風景が開いた目に映り込む。

 それと、同時に。

 一瞬にして、僕を巨大な影が覆い尽くした。
 頭上を見上げると、そこには先程見たばかりの巨岩があり、それは凄まじい速度で僕へと迫っていた。

「調子に、乗るんじゃねえぞガキがぁ!」

「うわー、こりゃめんどくさいことに」

 怒りに満ちた男の声を聞き、僕が言葉を発し切る直前に。

 巻き上がる土煙と同時に、全てを揺るがすかのような轟音が辺りに響き渡る。
 ただの少年がその中心に巻き込まれていれば、その命は一瞬にして砕け散っていたことだろう。

「――お前は尽く、俺の企みをぉ!」

「残念、生きてました」

 僕はズボンに付いた土を叩き落とし、背後に聞こえる声に応える。
 吹き飛ばされた木の葉が流れるように舞い落ちるのを見ながら、僕はもう一度剣を抜く。

 そして目を瞑り、剣を振りながら振り返る。

「さぁ、もう一度。次にこの手から剣が離れた時、命があるのはどちらでしょうね?」

 怒りに震える男の叫びを聞きながら、僕はしっかりと剣を握りしめた。


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 ……え? これだけ待たせたくせにこの短さかよって?
 今まで何してたんだよって?

 聞かないでください。それはもう思い出したくない事ですから――



 嘘です。冗談です。すみませんでした。
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