魔法で生きる、この世界

㌧カツ

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Episode.1 これが始まりの物語

14話 スライムの森①

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「すみません、地図一枚買いたいんですが」
 カウンターに近づき、僕は受付の人に話しかけた。

「地図一枚ですね。それでは銀貨一枚になります」
 銀貨一枚で地図一枚ね。高いのか安いのか、全く分からないな。
 ポーチから銀貨一枚を取り出し、僕はそれをカウンターの上に置いた。

「はい。銀貨一枚頂きました」
 そう言うと、彼女はカウンターの奥の棚から一枚地図を取り出し、こちらへ持ってきた。
「これがこの辺りの地図になります」
「あ、ありがとうございます」
 僕は差し出された地図を受け取り、礼を言ってからそこを離れた。

「ふぅ……ガルデさん、ありがとうございました」
「いいんだよ。これぐらいしなきゃ、ギルドマスターは名乗れない」
 ギルドマスターことガルデさんは、そう言って大きく笑った。
「それじゃ、僕はもう帰りますね」
「あぁ、次は冒険者になるためにここに来てくれよ!」

 冒険者か……物理系が全くもってダメダメな僕に、そんなことできるかな。
 いやできる。僕にはそんなところを補えるほどの力を持つ、魔法があるじゃないか。

 いつかなってみてもいいかもなぁ。

「あ、そうだ。まだ地図見てなかったな。」
 僕は買ったばかりの地図を広げ、それを眺め始めた。
「僕が入ってきたのは、ここの門だよな」
 実際の場所と地図を照らし合わせながら、僕は来た方向を考える。
 森からそこの門まで真っ直ぐに歩いてきたんだから、僕が抜けてきた森は……

 あったぞ、これだ。
「えっと……スライムの森?」
 なるほど。道理でスライムがあんなに多かったわけだ。
「っていうか、またあの森を抜けなきゃいけないのか……」
 もう魔力不足でヘトヘトになるのは嫌だ。
 でもまぁ、マナポーションを一本買って持っておけば、多分なんとかなるだろう。

「じゃ、マナポーションだけ買ってさっさと帰りますか」
 できるなら森に入らずに帰りたいのだが、僕には空も飛べないし瞬間移動だって出来ない。
 走ればすぐに抜けられるかもしれないが、派手にずっこければ一発KOなこの状態で全力疾走する勇気は僕にはない。

「出来るだけスライムに出会わないように願うしかないな」
 あのスライムに襲われて死ぬなんて事は無いと思うが、一発喰らっただけでも大ダメージなんだし気をつけた方がいいだろう。

 なんて考えてるうちに、もう森の前だ。
「よし。がんばるか」
 可能な限り低い魔力消費で、ここを抜ける。
 正直歩くのがだるい程にならなければなんでもいいのだが、念の為だ。

 僕は気を引き締め、森へゆっくりと入っていった。



 残り魔力 42
 残りマナポーション 1本(魔力30回復)
 森を抜けるまで あと30メートル


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 今回はちょっと短めです。すみません。
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